先日このブログにもアップした「暗殺者の森」の続きがどうしても読みたくなって、イベリアシリーズの完結編の「さらばスペインの日々」を読みました。
ドイツが降伏し、やがて日本も降伏。
交戦国ではなかったスペインでもその影響は受けるのだが、おなじみの陸軍参謀本部付情報将校でスペインとペルー国籍を持つ北都昭平にМI6第5課員のヴァジニア・クレイトンはどうなるのか。
さらには聯盟通信ベルリン支局長の尾形正義は無事帰国できるのか。ドイツ・アブヴェア元長官のカナリスは本当に処刑されたのか?
完結編にふさわしく今までの登場人物のその後を回収しています。
話の中心はヴァジニアがイギリスに帰国してソ連と通じていたのではないかと疑っているМI6第9課長のキム・フィルビーとの対決。でもヴァジニアはフィルビーの疑いについては状況証拠しか掴んでおらず追い詰めることが出来ない。このあたりのヴァジニアの行動はいかにも脇が甘い。戦時下の権謀術策の交叉するスペイン、ドイツで活躍した腕利きの情報員とは到底思えない。
ヴァジニアを助けるべくイギリスにわたる北都の行動も無鉄砲と言うかあま~い。二人とも命がいくつあっても足りないでしょう。
その間にいろいろな人の援助を受けて、敵か味方も分からない登場人物が入ってきたりして、話が二転三転しつつ進んでいくですが、読むのを止めることが出来ない一気の展開はさすがです。
結局北都とヴァジニアはスペインへの逃避行は失敗し、北都はアメリカОSSによって拘束され日本人戦犯としてスペインから日本へ強制送還される。ヴァジニアはイギリスで日本人諜報員との親密な関係を疑われ逮捕され取り調べを受けることになる。
強制送還される北都はスペイン在留邦人やヨーロッパの他の国の在留邦人とともに地中海からスエズ運河を抜けてマニラまで乗船。ひどい待遇のボロ船の航海の様子が詳細に書いてありますが、敗戦国の悲哀がよく分かります。
ところでこの本は完結篇らしく登場人物のそれぞれに話のおちをつけていますが、最後に作者自身のエピローグで、この足かけ16年の歳月をかけたイベリアシリーズの7作トータル4千ページに及ぶ創作の種明かしをしています。
きっかけはアメリカの公文書館が解禁した「マジック・サマリー」これは日本の外務省と在外公館の間に交わされた、暗号による外交通信を傍受、解読、集積した最高度の機密文書。そこには遠いヨーロッパにあっても様々な形で戦っていた日本人の姿があった。
当時スペインはドイツと英米の情報員が呉越同舟の状況で情報戦にしのぎを削っていたのだが、そこに日本の情報員が一枚加わればヨーロッパの戦争を違った視点で見ることが出来るのでは?試みは大成功でこの長編シリーズをハラハラドキドキ読むことが出来ました。
最後はお決まりの大団円ですけど、それでないと終われません。
このシリーズでは第二次世界大戦の勃発前夜から終戦までほぼ史実に沿っているのですが、主人公の北都昭平、ヴァジニア・クレイトンは諜報員の世界は公にならないものなので作者の創作。聯盟通信の尾形正義はモデルはいるのでしょうけどこれも創作。
当然ながら実在の人物も実名で多数登場する。ドイツ国防軍のカナリス提督も実在しているのだが、替え玉処刑で密かに逃亡しているかもというのはフィクション。スペイン公使の須磨弥吉郎やドイツ大使の大島弘は当然ながら実在の人物。須磨は積極的に情報活動を行い「東情報」を送信しているのがこれはほぼ完ぺきに解読されている。もっともその情報はほとんど役に立たないものでしたが。
キム・フィルビーも実在の人物でソビエトのエージェントと働きつつ英国情報部に潜り込みМI6で働いていたが、能力と人柄に疑問を持つものはおらず敬愛されていたが、冷戦時ソ連のスパイではないかとの疑いがあり、1963年には追い詰められてモスクワ逃亡、ソ連へ亡命している。今では考えられないけど当時は共産主義にシンパシーを持つものは多く、その影響下にあったものが多かった。
今ではほとんど生きていないが執筆時はまだ存命だったこともあり、実在の人物だが仮名で登場した人もいる。二重スパイのガルボ、須磨公使のために情報活動を行ったスペイン人スパイのジェロニモなど。
それにしてもこのシリーズ執筆のために膨大な資料を渉猟し、当時の関係者と面談している。現代史だけにあまり荒唐無稽な話にすることは出来ず、史実に沿って巧妙にフィクションを交えて大作を仕上げています。歴史の流れのおさらいのつもりで時間が許すなら第1作の「イベリアの雷鳴」から読み返してみましょうか。
ドイツが降伏し、やがて日本も降伏。
交戦国ではなかったスペインでもその影響は受けるのだが、おなじみの陸軍参謀本部付情報将校でスペインとペルー国籍を持つ北都昭平にМI6第5課員のヴァジニア・クレイトンはどうなるのか。
さらには聯盟通信ベルリン支局長の尾形正義は無事帰国できるのか。ドイツ・アブヴェア元長官のカナリスは本当に処刑されたのか?
完結編にふさわしく今までの登場人物のその後を回収しています。
話の中心はヴァジニアがイギリスに帰国してソ連と通じていたのではないかと疑っているМI6第9課長のキム・フィルビーとの対決。でもヴァジニアはフィルビーの疑いについては状況証拠しか掴んでおらず追い詰めることが出来ない。このあたりのヴァジニアの行動はいかにも脇が甘い。戦時下の権謀術策の交叉するスペイン、ドイツで活躍した腕利きの情報員とは到底思えない。
ヴァジニアを助けるべくイギリスにわたる北都の行動も無鉄砲と言うかあま~い。二人とも命がいくつあっても足りないでしょう。
その間にいろいろな人の援助を受けて、敵か味方も分からない登場人物が入ってきたりして、話が二転三転しつつ進んでいくですが、読むのを止めることが出来ない一気の展開はさすがです。
結局北都とヴァジニアはスペインへの逃避行は失敗し、北都はアメリカОSSによって拘束され日本人戦犯としてスペインから日本へ強制送還される。ヴァジニアはイギリスで日本人諜報員との親密な関係を疑われ逮捕され取り調べを受けることになる。
強制送還される北都はスペイン在留邦人やヨーロッパの他の国の在留邦人とともに地中海からスエズ運河を抜けてマニラまで乗船。ひどい待遇のボロ船の航海の様子が詳細に書いてありますが、敗戦国の悲哀がよく分かります。
ところでこの本は完結篇らしく登場人物のそれぞれに話のおちをつけていますが、最後に作者自身のエピローグで、この足かけ16年の歳月をかけたイベリアシリーズの7作トータル4千ページに及ぶ創作の種明かしをしています。
きっかけはアメリカの公文書館が解禁した「マジック・サマリー」これは日本の外務省と在外公館の間に交わされた、暗号による外交通信を傍受、解読、集積した最高度の機密文書。そこには遠いヨーロッパにあっても様々な形で戦っていた日本人の姿があった。
当時スペインはドイツと英米の情報員が呉越同舟の状況で情報戦にしのぎを削っていたのだが、そこに日本の情報員が一枚加わればヨーロッパの戦争を違った視点で見ることが出来るのでは?試みは大成功でこの長編シリーズをハラハラドキドキ読むことが出来ました。
最後はお決まりの大団円ですけど、それでないと終われません。
このシリーズでは第二次世界大戦の勃発前夜から終戦までほぼ史実に沿っているのですが、主人公の北都昭平、ヴァジニア・クレイトンは諜報員の世界は公にならないものなので作者の創作。聯盟通信の尾形正義はモデルはいるのでしょうけどこれも創作。
当然ながら実在の人物も実名で多数登場する。ドイツ国防軍のカナリス提督も実在しているのだが、替え玉処刑で密かに逃亡しているかもというのはフィクション。スペイン公使の須磨弥吉郎やドイツ大使の大島弘は当然ながら実在の人物。須磨は積極的に情報活動を行い「東情報」を送信しているのがこれはほぼ完ぺきに解読されている。もっともその情報はほとんど役に立たないものでしたが。
キム・フィルビーも実在の人物でソビエトのエージェントと働きつつ英国情報部に潜り込みМI6で働いていたが、能力と人柄に疑問を持つものはおらず敬愛されていたが、冷戦時ソ連のスパイではないかとの疑いがあり、1963年には追い詰められてモスクワ逃亡、ソ連へ亡命している。今では考えられないけど当時は共産主義にシンパシーを持つものは多く、その影響下にあったものが多かった。
今ではほとんど生きていないが執筆時はまだ存命だったこともあり、実在の人物だが仮名で登場した人もいる。二重スパイのガルボ、須磨公使のために情報活動を行ったスペイン人スパイのジェロニモなど。
それにしてもこのシリーズ執筆のために膨大な資料を渉猟し、当時の関係者と面談している。現代史だけにあまり荒唐無稽な話にすることは出来ず、史実に沿って巧妙にフィクションを交えて大作を仕上げています。歴史の流れのおさらいのつもりで時間が許すなら第1作の「イベリアの雷鳴」から読み返してみましょうか。
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