怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

小田嶋隆「諦念後」

2023-07-02 20:54:31 | 
22年6月惜しくも逝去した小田嶋隆さん。そうなると慌てて今まで読んでいない本を読んでみようというのはいかがなもんですが、結構このブログにはその類が多い。
小田嶋さんは日経BPの連載「ア・ピース・オブ・警句」を愛読していたのですが、その鋭い視点と批評にはいつも目を開かれていました。
今回は没後の2022年12月出版の「諦念後」を読んでみました。
これは「青春と読書」に2018年7月から2019年10月まで連載した「諦念後 男の老後の大問題」をまとめたものです。
 
いろいろありながらもコラムニストとして地位を確立して活躍している小田嶋さんですが、還暦を過ぎ老年を自覚し、会社員ならば定年後、小田嶋さん的には「諦念」後の生活について今までやったことのないような体当たり取材を敢行。
手始めの「そば打ち」から「ギター教室」「スポーツジム」さらには「断捨離」に「終活」、卒業40年を経ての同窓会とイメージと違う行動力。連載があるので留まることなく「暇つぶしの麻雀」に「鎌倉彫」、実際には出てはいない「選挙に出てみる」と言い出すと思うと今度は「盆栽」、「大学講師」
そうこうするうちに脳梗塞で入院して連載は3回ほど休載を余儀なくされる。入院中の無聊を慰めるためかSNSをやってみたりする。
最後の2章は何歳まで働けばいいかと「ガン」での死に方を考えてみたりT、死期が遠くないことを感じてのものなのか。
定年後のやることのないおやじはそばを打つのが定番で、小田嶋さんも蕎麦屋の大将のそば打ち講座を受講。やればそれなりに楽しいのだがその後そばを打った様子はない。
ギターを始めるにあたっては自分的には簡単に撤退できないようにそれなりのギターを購入。知り合いの演奏家に月一のレッスンを受けて1年は続けようと覚悟を示しているのですが、初回の報告だけで多分先細り…
スポーツジムについては、レオタード姿の若い女性と一緒に筋トレなどと言う妄想は外れ、周りは高齢者ばかり。最初から暗雲漂うのだが、結局入会時の体験見学から個人トレーナーのレッスン1回で立ち消えに。因みに小田嶋さんのかかりつけ医に言わせるとジムは登録している人が全員真面目に通ってくると経営が成り立たず、来ない人の会費で成り立っているとか。
まあ、予想通りと言うか、今までシニカルに見ていたことを定年後と言えども急に始めようとしても無理がある。実際に体験してもやらない理由を確認しているだけ。でもそれが小田嶋さんらしくて、自分でもいろいろやろうかと考えても何一つ実っていないので、そうだよねと思う次第。男と違って出席してくる女性は素晴らしいホスピタリティを自分のものとしているのですが、惜しむらくは諦念後では時の流れが残酷で間違いも起こりようがないと言うのは、人生80年時代の今だからこそ間違いがあってもいいのではとほのかに思ってしまいますけど時は残酷です。
コロナ禍で暫く立ち消えているが、定年後は各種同窓会の案内が来る。中学の同窓会は地元のヒエラルキーを引きずっていて、大学進学者は地域社会を捨てたようなもので居場所がない。高校の同窓会は「成功者縛り」があったり自分の会社以外のこと以外には興味がないようなくそおやじになり果てていると言われると同意できないまでもそういう側面もあるかなと思う。
大学講師について言えば2年ほど前から関西大学の特任教授と早稲田大学の非常勤講師をしているそうですが、その報酬は驚くほど低額、でも大学の講師というステータスは金銭以外に名誉という報酬を与えている。定年退職者にとってはカネではなくて肩書の通り良さと自己満足のネタとして魅力的なものなんでしょう。
そうこうしているうちに小田嶋さんは脳梗塞で入院という事態になってしまう。ここでいろいろ病気との付き合い方を考えるのですが、諦念者が目指すべきものは機嫌よく病むことと悟り?を得ている。長く入院していると病院内の事情にも詳しくなってくる。70歳過ぎはほとんどテレビオンリーなのだが年齢が下がるに従ってパソコン、スマホとインターネット依存度が増えてくる。では諦念者はSNSとどう付き合って行けばいいか考察してる。匿名だけどネタばれぎりぎりの名乗りもあってツイッターがいいと言うのが小田嶋さん。
この本は、結果として諦念後の死を強く意識しだした小田嶋さんの心の動きが出ています。
もう1冊ほこれも最近訃報を見た原僚(名前は「りょう」を変換しても出ない)の私立探偵沢崎シリーズ。

寡作の作家として知られていますが、最初の2作「そして夜は甦る」「私が殺した少女」の印象が強烈だっただけに作者自身がこれを超えることのできる小説がなかなか書けなかったからでは。最初の2作がなければこの「それまでの明日」も水準以上の優れたミステリーと思うのですが、どうしても印象が薄くなる。因みにこの本は以前読んだかどうか定かでなく、だいぶ読み進めても読んだような気がしないわけでもないと言う気分。でも初めて読んだようにミステリーの予想外の展開を楽しみながら読むことが出来たので、それはそれでよかったかも。単に私の認知機能が衰えただけと言われれば何とも言い訳出来ないのですけどね。
素晴らしい作品を出してきたお二人のご冥福を祈ります。




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小田嶋隆さんのTwitterについて (のむた)
2023-07-03 10:11:50
小田嶋隆さんのTwitteは、まだアカウントが残っており、過去のやり取りが閲覧できます。
@tako_ashiです

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