事件記者のページ

遠い昔のTV番組を再現しようというムチャな試み

ユリシーズ

2011-12-21 19:10:44 | 本と雑誌
樹液そして果実 樹液そして果実
価格:¥ 1,800(税込)
発売日:2011-07-05

丸谷才一の紹介がメッチャおもしろそうだったのでつい注文してしまって届いた以上読み始めずにはいられない(柳瀬尚紀の訳が出るより私が死ぬ方がたぶん先だろうし)、1ページにつき数箇所の注釈がなかったら何のことやらわからない(何せハナから神学だもんね、わけわからないことを「神学者の争い」とキリスト教世界のヒトも言ってるらしい)、けどさすがに訳文がよいのでサラサラ読める、まだ主人公ブルームが登場したばかりだが、猫が「ムルクナオ」と鳴き(ユニークだなあ)、ブルームはお湯沸かしっぱなしで買い物に出てよその女中さんに気を取られ、買って来た腎臓(!)をフライパンで焼きながら奥さんにパンと紅茶を持って行ってすぐには戻らない、焦げついちゃうじゃないか、ああもうこの世界の話じゃねーな、でも1904年の6月、日本はロシアと戦争しててアイルランド人もそれを知ってる、フシギな感覚だ-というわけで何となくおもしろい、もうちょっと読み続けることになると思う

とは言えわからん、どうして冴えない中年のブルームがオデッセウス、神学にこだわる若いスティーブンは息子のテレマコスってことになるんだろなあ?老ネストルは全然賢くなさそう、だけどただひたすらスティーブンの思考が変容しまくるプロテウスの章にはなるほどと思った、これはけっこう楽しめるかもね

追記-まだちゃんと読んでないけどブルームは22歳で17歳の奥さんと(たぶん)できちゃった結婚して、15歳になったばかりの娘は家を出て働いてる、生きてれば11歳になってるハズの息子は生まれてすぐに死んだ、奥さんは歌手、リサイタルで「ドン・ジョバンニ」を歌うと言うんだが、イタリア語をちゃんと発音できるのか不安(とダンナは思ってる)、いったいいつそんな修行したんだ、いかに1904年のアイルランドと言えど、ここはこの地球じゃないのじゃあるまいかと私は思うけど誰もそう突っ込んではいないらしい、やっぱ私の読み方は違うんだろか?

さらなる追記-ブルームは腎臓を食べ終わってトイレへ行く、室内じゃなく外の、注にいわく「踊り場脇の室内便所へ行くのを面倒くさがってるのか」、アホか、外へ行く方がずっと面倒だろが、すぐ上に奥さんがいるところで大きい方をしたくない、そんだけ奥さんのことを大事に思ってるってことじゃないのか、結婚して16年経ってるダンナが・・・いや確かに信じられん、信じられんから誰も言わんのだろか?


坂の上の雲

2011-12-19 10:25:33 | テレビ番組

昨夜は奉天会戦(日付変わらんうちにアップしようと思ったけど飲んだくれてるうちにどうでもよくなっちゃった、でもやっぱ書いとこう)、児玉源太郎と大山巌(米倉斉加年、年はとったがけっこうカッコいい、余談ながら30年前の映画では野口元夫=ヤマチョウさんがやってたとのこと、記憶ないなあ)、捨て身の大作戦(戦力の一気投入、もう後がない)で何とか勝負を六対四に持って行く、ここで終わってなかったら悲惨なことになってたろうね、当時の糧食は(エネルギーはともかく)ビタミンが足りなくてそのために多くの兵士が死にかかってたなんて、みんな神ならぬ身故知る由もなかったんだし、もっともあちらには壊血病(ビタミンC欠乏)が蔓延してたらしく、作者は書いてないけどロシア軍が引き上げたのはそのせいもあったという説がなくもない・・・ま、何はともあれ薄氷を踏む勝利(?)だった、これがホントにめでたしだったかどうか、その後の運命を考えると思いは複雑だよね、たぶん作者もそう思ってたハズ

そして日本海海戦、ヨーロッパからはるばるやって来たバルチック艦隊を対馬海峡で迎え撃つ海軍の東郷平八郎(渡哲也)と秋山真之(本木雅弘)その他、いやあカッコイイ・・・と言いたいとこだけどもうちょっとフレッシュな男はおらんのかね、渡哲也と高橋英樹、これじゃほとんど50年前(四捨五入)の日活映画だろ、そう言えばもう一人の主役とも言うべき小村寿太郎は誰だった?

などと言いつつけっこうよいドラマになってたと思う、何と言っても元ネタがよいしナレーション(渡辺謙)もよい
私「まあしかしテクニックが進歩しても公共放送の体質は基本的に変わってないな、結局金をかければ受けると思い込んでるあたり」
家人「そんなに金かけてると思えないね、あの戦艦なんか明らかにオモチャだろ」
いやその役者の話なんだけどさ、遠い昔、長谷川一夫を大石に、尾上梅幸を内匠頭に引っ張り出して「赤穂浪士」と作った時と変わってないってこと、これぞ万古不易の真実ってか・・・・・

追記-小村寿太郎は竹中直人だった、そう言やそうだったかも、ついでに見たら明治天皇=尾上菊之助、おいおいこれはまたちょっとフレッシュ過ぎじゃない?ここは三船敏郎に匹敵する大物を使ってもらいたいよ、全くドラマ制作者の考えることってわからんな


すばる1月号3

2011-12-17 23:51:18 | 本と雑誌

青来有一人間のしわざ」-ひたすらヒトの残虐行為を語る小説と言ったら作者は気を悪くすると思う、非常に技巧的な構成だし、私は初対面だがかなりのヴェテラン、「長崎」にこだわり続けてるらしい、だけどせっかく凝った設定を用意しながら主人公たちの一番肝心なドラマ(だと私が思うところ)が語られない、ご想像に任せます、それが純文というものでって?これについては今時間ないのでまた書くかも

追記-語り手の私は50代の主婦、娘たちは独立し夫は浮気している、昔の恋人と30年ぶりに再会して旅に出た、恋人は戦場カメラマンとして世界各地で死体を撮り続け、その間に奥さんがガンで死んだ、引きこもりの息子はなにやらアヤシイことに関わってるらしい、私とベッドを共にしつつ彼は戦場でのこと、奥さんや息子のこと、そして30年前長崎(と思われる街)でローマ法王のミサに参加した時見た幻覚(惨殺される殉教者たち、島原の乱の侍たちなど残酷シーンをこれでもかとばかり微に入り細に入り、リアルを描ける筆力は認めるけどはっきり言ってクドイ、何でもかんでも書ける時に書けばよいというもんじゃないと思うぜ)を前後ゴッチャに語り続ける、いやまタイトルが「人間のしわざ」=残虐行為で、恋人どうしがホテルの一室にいるというのはそれを語るための舞台に過ぎないんだからこれでよいのかもわからんけど、二人がいかなる事情で再会し逃避行(と思われる)への出発に至ったのか、ミステリ読みはそこが一番知りたいんだよな、彼らが30年前に好きあってながらいっしょにならなかった事情はよくわかった、でもそんじゃ今度はどうしていっしょになったのか・・・それは言わぬが花だって?

モブノリオ太陽光発言書」-小説じゃなくてエッセイじゃん、それも当たり前のことしか言ってないような・・・と思ったけど当たり前ながらこれはちょっとイケてるかも

おまえらの家に核シェルターあるやろ?
そこへ[核の平和利用]のなれのはて
ほりこんでなんまんねんもねかせとけや

ベタだし、そも核シェルターなるものは実用にならなかったと聞いた気もするし、少なくとも日本にはたぶんないだろうと思う、だけど鉛で覆われた地下壕をこれから作るというのは一つのアイディアじゃないか、生物が中に住むためには水と酸素とエネルギー源が必要だけど核燃料にはそんなもの一切いらない、放射性物質をそこまで移動させるのにパワフルなロボットも作らにゃいかんけどさ、これぞまさしく「必要は技術の母」

角幡唯介アグルーカの行方」-これはノンフィクション、19世紀前半に北極で行方不明になったイギリス海軍の探検隊を追う21世紀の日本隊はただ二人、自力でソリを引いてバックアップもなしにひたすら歩き続ける、おもしろい、読むだけで疲れるけどでもおもしろい、やっぱこれ来月も買うよ

追記-なんと190人が遭難したという「フランクリン隊」のことは昔植村直己が書いてたのを読んだ気もするけど、それは別の話だったかも、氷に閉じ込められた船を放棄して徒歩で南へ向かったらしい、原住民の証言である程度足取りがわかったというんだが、当時の装備はとんでもなくお粗末なものだったハズだしソリもないのに人間一人が運べる食料と燃料などタカが知れてる、もちろんGPSなんかないし北極では方位磁石が役に立たないから方角もわからない、まさに自殺行きだった、植村は「なぜ原住民に助けを求めなかったのか」と言ってたが、事実前の探検では原住民を協力を得たとのことだが、190人は多すぎたのかもね

もう一つ追記-極地ではヒトの身体から出る水分が霜になってそれが調理の火で溶けると濡れる、濡れないようにテントの霜を落とすのが一仕事

自分の体から発散される水分量があまりにも多い(略)人間の肉体構造の根本部分にはどこか間違いがあるのかもしれない

そらもともとが密林のサルだったんだから北極に住むようにはできてないけど、確かにヒトはものすごく水をムダ使いする体質の動物で、必要な水を確保するために「文明」なんてものを発明したんだよ、それがよかったかどうかはわからんけど、文明がなかったら貴方は北極へ行かんかったし私はこの駄文を書かなかった、あ、やっぱその方がよかったかな?


群像1月号5

2011-12-16 14:01:02 | 本と雑誌

松浦寿輝ミステリオーソ」-この作者も初体験、三島由紀夫が死ななかったって設定の長編を書いてるとのことだけど恐ろしくて読めないんで
主人公の僕は若い頃パリへ留学してシリアから来たキリスト教徒で人種的にもヨーロッパ系の魅力的な女の子と知り合った、ある日二人はシャンゼリゼの高級クラブへ行ってル・モンクと呼ばれる黒人のピアノ演奏を聞く、ミステリオーソがよかった、そいつがほんとにジャズピアニストのセロニアス・モンクだったかどうかはわからないが自分は本物だったと思ってる、その時ある事件が起きて、友達以上恋人未満だった彼女との仲はおしまいになった・・・
きれいに決まってる、ある意味肝心な事件の内容を「アラビア語はわからない」とぼかしてるところがミステリ読みとしては不満だけど純文的にははっきり言わないのが正しいんだろか?ジャズのレコードをあんまし持ってないのでモンクの演奏は「ブルーモンク」と「ルビイ、マイディア」しか手元にない、確かにたどたどしいところもあるけど通して聞けば「下手」(作者いわく)ってほどじゃないと思う(なんて私に比べたら子供だってうまいわな)、アルバム「アローンインサンフランシスコ」にはミステリオーソが入ってないので探して注文した、どんな曲なのか楽しみだ

島本理生たそがれ」-赤ちゃんのいる若い夫婦、夕方奥さんが台所にいると赤ちゃんが泣きダンナが「たそがれ泣き」だと言ってあやす・・・
作者は佐藤友哉の奥さんで今現在小さいお子さんがいるハズ、で、これが小説?エッセイじゃないの?まあいいけど、というかこういうものを書けるのって母親の、それも若いうちの特権かもわからんもんね、いや最近は父親もこういうの書くのかな、そう言えば堀江敏幸の作品も父と息子をテーマにしてるもんね、というわけで(どういうわけで)これ以上言うことなし

以上「群像」オワリ(たぶん)


群像1月号4

2011-12-15 23:40:55 | 本と雑誌

筒井康隆教授の戦利品」-おっそろしく近所迷惑なマッドサイエンティストのお話、筒井さんは変わってないなと言いたいとこだが、何か荒れてる気もする、以前は変人を描いてもどこか安心できるところがあったような、今回の主人公はただひたすらに破壊的、これが定年過ぎても大学に居座ってる老教授ってとこがかなりコワイ、またそこへ製薬会社が持ち込む企画もあまりにベタというかウソっぽ過ぎ、老大家が今さらこんな、いや老大家だからいいのか、新人が書いたらぶっ飛ばされる(ことはない?)、若い読者の受けはよさそうだから私のいや年寄りの気のせいなのかもわからんが・・・

青木淳悟薄紫雲間源氏」-今はこの世のヒトでなくなった源氏=私が雲の上から自分が生まれた時を観察し考察する、なるほどそういう書き方もあるか、でもって自分が女の子だったらこのお話は全然違ったものになってたハズと・・・おいおいそれ元ネタの全否定だろ?
これじゃ源氏をよく知らないヒトには全然おもしろくないだろうし、よく知ってるヒトは「え、それ小説?古典をパクるならもうちょっとマジメにやれよ」と思うんじゃないかな、いやわからんでもない気もせんではないのだ、私も頭中将→左大臣とその長男柏木のファンだし、だけど源氏というのは超のつく古典中の古典で多くの先輩が様々にアプローチしてる、よっぽど覚悟決めてヒネらないと相手にされるほどのもにはならんと思うよ

日付変わっちゃうからとりあえずアップ