【小説風】竹根好助の経営コンサルタント起業1 人選 6 社長説得前の緊張
■ 【小説風】 竹根好助の経営コンサルタント起業
私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。
竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。それを私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。
原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。
【これまでお話】
エピローグは、主人公である竹根好助(たけねよしすけ)の人柄を知る重要な部分でした。
親によるある教えで、超一流ではないものの上場商社に入社した竹根の若かりし、1ドルが360円の時代でした。
入社して、まだ1年半にも満たないときのことです。アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。社内では、誰が派遣されるのか話題沸騰です。若輩の竹根は推理小説でも読むような気持ちで、誰が選ばれるか、興味津々で推理を働かせました。
一方、竹根の信条のひとつに「サラリーマンとしての心得のひとつとして上司からの命令には逆らうなというビジネス書の教えをかたくなに守ってい」という頑固というか、意志堅固なところがあります。
人事というのは、競馬の予想のような下馬評が走り回るのがサラリーマン世界の常です。そのような中、トップ間での人選は進みます。角菊事業部長は、自分の推薦順位の高いものから三名のリストを福田社長に提出するのですが、福田の顔はさえません。角菊には、福田の腹の内を読めないでいます。
角菊事業部長は、次回の福田社長との人事ミーティングで、自分の考えをキチンと伝え、自分の提案が通るように、じっくりと考えた上で資料作成をしました。
【過去のタイトル】
1.人選 1ドル360円時代 鶏口牛後 竹根の人事推理 下馬評の外れと竹根の推理 事業部長の推薦と社長の思惑 人事推薦本命を確実にする資料作り
■■ 1 人選
私の会社を引き継いでくれた竹根が、経営コンサルタントになる前の話をし始めました。思わず私は乗り出してしまうほどですので、小説風に自分を第三者の立場に置いた彼の話をご紹介します。
◆1-6 社長説得前の緊張
翌朝、九時半になってから、角菊は相本が昨日作成してくれた資料に目を通し始めた。売上伸び率も、新規顧客開拓数も国別と、担当者別の総計とが一覧表になっていた。
自分は、三人の伸び率と開拓数を調べるように言っただけなのに、相本は気を利かせて作成してくれたのである。これまでも、相本の機転で何度も助けられた。
社長室に行くと、すでに福田が山之下専務と角菊を待っていた。山之下専務は、先代社長時代からの大番頭で、小柄で細身ではあるが、夏でも三揃えをきちんと着こなすダンディーである。
「遅くなりました」と言いながら、社長室のソファーに座った。
「時間があまりないので、早速昨日の続きをやりたい。できればこの場で決めたいので、専務にも来てもらっている」
「これが、昨日ご指示いただきました資料です」
福田は、めがねを少しずらしてから書類に目をやった。
何を言われるのか、佐藤をどのように売り込んだら社長を納得させられるのか考えてきたことをいつ切り出そうかと、角菊は緊張した。
<続く>
■ バックナンバー
https://blog.goo.ne.jp/keieishi17/c/c39d85bcbaef8d346f607cef1ecfe950