経営コンサルタントへの道

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】FACTから「真実」を知ろう

2021-12-10 13:44:23 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】FACTから「真実」を知ろう

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

 

【 注 】

 本号は、11月第4火曜日に発信する予定のものでした。

 お届けが遅れまして大変ご迷惑をおかけして申し訳ございません。

 陳謝と共に、平素のご愛読への感謝の意を申し上げます。

 

本

■  今日のおすすめ

 『噓と感情論で封殺された「5つの日本の真実」』(高橋 洋一著 徳間書店)

 

本

■  FACTを正しく見極め、正しい判断を(はじめに)

 

 著者は、数量政策学者らしく統計やグラフ等を基に公正・中立的な立場から政治、社会、経済を論ずる経済学者です。財務官僚を経て現在は嘉悦大学ビジネス創造学部教授を勤め、財政政策、金融政策を得意とします。

 著者は、2021年5月の「さざ波」事件で内閣官房参与を辞任しました。この事件は五輪中止論が高まる中、著者が自身のTwitterに、日本が世界の主要国の中で感染者が極めて低いことを示す「世界の感染者数のグラフ(ジョンズ・ポプキンス大学データ)」を添付して、『日本はこの程度の「さざ波」。これで五輪中止とかいうと「笑笑」』と投稿したことに端を発します。「さざ波」は、元厚労省医療技官木村氏が1年前から著者と共演する「正義のミカタ」(朝日放送テレビ~テレビ朝日ANN系の大阪キー局~で毎土曜9:30より放映)で使っていた言葉を引用したものでした。

 しかし、朝日新聞系の論座などの一部マスコミは、このTwitterは『必死の五輪反対論を「せせら笑う態度」』と批判し『これで内閣官房参与とかいうと「笑笑」』などと揶揄しました。立憲民主や共産党は菅内閣の任命責任と結びつけ、著者の国会招致を要求しました。

 これに対し著者はTwitterに「日本の状況を客観的的に分析し正確に伝えるのが本意で、それを妨げる用語は使用しないようにします」と謝罪し、政権批判と結びつくや、内閣官房参与を辞任したのです。

 著者は紹介本を出版するに至った思いを次のように表現しています。『この事態を通して、マスコミや立憲・共産は(状況の一部を「切り取り」)、「表現がけしからん」の一点張り。それでは真に私たち国民にとって重要なことが掻き消されてしまう。本書でFACTを正しく見極めて頂きたい』と。

 著者は紹介本で、5章60項目の『掻き消されている「真実」』を紹介しています。次項ではその中から「知っておきたい『掻き消されている「真実」』を見てみましょう。

 

本本

■  知っておきたい『掻き消されている「真実」』(紹介本の記述を要約引用)

 

【賃金の伸びが低すぎる。メディアや日銀が理解していない「ヤバイ現実」】

 OECDの実質賃金データでは、日本は1990年22ヵ国中12位、2019年は21位。1990年当時のOECD加盟国で、この30年間の名目賃金の伸びを見てみると、ほとんどの国で2倍以上となっているのに、日本の伸びはほぼゼロで、伸び率は最低だ。

 名目賃金は一人当たり名目GDPと同じ概念なので、名目賃金が低いのは、名目GDPの伸びが低いからということになる。日本の名目GDPが1990年からほとんど伸びておらず、世界でもっとも低い伸びだ。名目経済の成果の反映である賃金が伸びないのは、当然ともいえる。

 名目GDPともっとも相関が高いのがマネー伸び率だ。各国のデータでみても相関係数は0.7~0.8程度もある。「90年代以降の30年間」と、「90年より前の30年間」を比較すると、名目GDPの伸び率とマネーの伸び率は一貫して相関があることがわかる。具体的にいうと、「90年より前の30年間」では、日本のマネーの伸び率は、データが入手できる113カ国中46位と平均的な位置にある。一方「90年代以降の30年間」では、日本のマネーの伸び率は148カ国中、なんと最下位である。結果、名目GDPの伸び率も最下位だ。

 マネーの伸び率は、日銀が金融政策でマネタリーベースを増やすことでコントロールできるのだ。リーマンショックで先進国の中で唯一金融緩和をしなかった日銀(白川総裁時代)の罪は重い。デフレのA級戦犯は中央銀行なのだ。

 最近の日銀はかつてのような失敗はなくなったが、それでも筆者の基準からみれば、まだいまいちだ。ETF、REIT、国債買い入れなど金融緩和政策の出口の話は、デフレ脱却の目標を達成してから言うべき話だ。日銀の政策検証で必要なことは、過去30年間の日銀の間違いを総括することだ。

 

【民主主義指数からみる中所得国インドと中国の将来】

  イギリスの「エコノミスト」の調査機関エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit)が2年おきに発表している、各国・地域の政治の民主主義の水準を測る指数「民主主義指数」と世界銀行の「一人当たりGDP(2000年~2019年平均値)」のデータに基づき、中国とインドの先行きを予測する。

 ここで面白いのは、民主主義指数と一人当たりGDP1万ドルの壁「中所得国の罠」とが相関していることである。民主主義指数が6程度以下の国は、一人当たりGDPは1万ドルに達していない。世界で、民主主義指数が6程度以下で1万ドルを超えている例外国は産油国とシンガポールだけである。

 民主主義指数から、インドと中国の先行きを見てみる。インドは現段階では一人当たりGDPは3000ドル程度だが、民主主義指数が6.61の民主主義国なので、一人当たりGDPは今の3倍以上に上昇するなど今後の経済発展が期待できる。ここにクアッドにインドを加える意味がある。

 一方、中国の民主主義指数は2.27なので、6には程遠く今の一人当たり1万ドル程度のGDPを維持できる確率はかなり低い。となると、中国はこれから経済停滞に陥る可能性が出てくる。そうすると、国を維持するために国外紛争を作り国民の目を外に向けようとし、核心的利益(ウィグル、南シナ海、香港、台湾、尖閣)の達成に走るだろう。核心的利益で未だ達成できていないのは、台湾と尖閣だ。

 

本

■  FACTに基づく「真実」を知るには(むすび)

 

 「真実」を知ることは簡単ではありませんね。敢えて言うならば、提供された情報が、データやFACTで裏付けられているか確認することでしょうか。

 企業経営の視点からは、PEST(政治、経済、社会、技術)に関し、メタ(必ずしも表に現れない事態の原因となっている「真の事実」)を含む正しい情報をスピーディーに収集し、分析、仮説・検証、課題の見極め、課題解決の実行をしていくことではないでしょうか。

 

本

【酒井 闊プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

http://sakai-gm.jp/index.html

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

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