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【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業4 迷いの始まり 1 初めてのアテンドも吹き飛ぶ事態発生

2024-03-01 12:03:00 | 【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業

  【小説】竹根好助の経営コンサルタント起業4 迷いの始まり 1 初めてのアテンドも吹き飛ぶ事態発生

 

■ 【小説】 竹根好助の経営コンサルタント起業 

 私は、経営コンサルタント業で生涯現役を貫こうと思って、半世紀ほどになります。しかし、近年は心身ともに思う様にならなくなり、創業以来、右腕として私を支えてくれた竹根好助(たけねよしすけ)に、後継者として会社を任せて数年になります。 竹根は、業務報告に毎日のように私を訪れてくれます。二人とも下戸ですので、酒を酌み交わしながらではありませんが、昔話に時間を忘れて陥ってしまいます。それを私の友人が、書き下ろしで小説風に文章にしてくれています。 原稿ができた分を、原則として、毎週金曜日に皆様にお届けします。

【これまであらすじ】

 竹根好助は、私の会社の後継者で、ベテランの経営コンサルタントでもあります。
 その竹根が経営コンサルタントに転身する前、どのような状況で、どの様な心情で、なぜ経営コンサルタントとして再スタートを切ったのかというお話です。

 1ドルが360円の時代、すなわち1970年のことでした。入社して、まだ1年半にも満たないときに、福田商事が、アメリカ駐在事務所を開設するという重大発表がありました。
 商社の海外戦略に関わる人事案件なので、角菊貿易事業部長の推薦する三名を元に、準備は水面下で慎重に進められていました。その中に竹根の名前が含まれていることは、社員の誰もが思いもよりませんでした。
 討議を重ねた結果、福田社長は、海外戦略にも関わる高度な人事の問題なので、専務と社長に一任してほしいと言って三者会談を終えることにしました。しかし、後日、角菊事業部長は、最終的に、自分が推薦した佐藤君ではなく、竹根に決まったと聞かされます。

 一方で、角菊は、自分の意図とは異なる社長の結論に納得がいかないのですが、かといって、それをあからさまにすることはしませんでした。他方、竹根は角菊からの内示なしに、社内には竹根に白羽の矢が立っていることを知りました。
 竹根に何の説明もなく、ニューヨーク駐在の人事発表が発表されました。海外経験のない竹根は戸惑うばかりで、どの様な準備をしたらよいのか途方に暮れていました。そのような時に、直接の上司である池永が再びアドバイスをしてくれ、準備を始めました。しかし、あっという間に出発の日が来たのです。

 空港で家族や長池の見送りを受け、初めての飛行機に搭乗。シートに座っても落ち着きません。次々と出てくる機内食にも戸惑います。初めてのカルチャーショックを味わう竹根です。

 雲と海だけの長いフライトの末、ようやく地上が見えてきました。サンフランシスコの上空から滑走路に向かうのです。着陸の不安、着地後の安堵、アメリカという新天地への期待などが入り混じっていました。着陸したときの安堵感は束の間、自信があった英語のリスニング力も吹き飛ぶほどで、空港内のアナウンスが聞き取れないのです。

 ようやくニューヨークに着き、竹根にとって初めてのアメリカ生活が始まりました。まずは、アパートさがしとニューヨーク事務所さがしです。幸い、日本人の不動産屋さんに出遭うことができ、順調に決めることができました。しかし、家具や内装などでは、カネ次第で、アメリカ時間で動くことに竹根は打ちのめされそうになりました。

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【過去のタイトル】
 1.人選 1ドル360円時代 鶏口牛後 竹根の人事推理 下馬評の外れと竹根の推理 事業部長の推薦と社長の思惑 人事推薦本命を確実にする資料作り 有益資料へのお褒めのお言葉 福田社長の突っ込み 竹根が俎上に上がる 部下を持ち上げることも忘れない 福田社長の腹は決まっていた

 2.思いは叶うか 初代アメリカ駐在所長が決定 初代所長の決定に納得できず 竹根に白羽の矢 竹根の戸惑い 長池係長のアドバイス 急ごしらえの出張準備が始まる 

 3 アメリカ初体験  いよいよ渡米、最初のカルチャーショック キュンとしたりトロトロしたり 心細いサンフランシスコ上空 生まれて初めて外国の地に降り立つ ニューヨーク事務所開設準備が始まる ニューヨークで稼働開始 ニューヨークの時計はカネ次第で回る速度が変わる!? ニューヨーク生活もカネ次第

■■ 4 迷いの始まり

 私の会社を引き継いでくれた竹根が、経営コンサルタントになる前の話をし始めました。思わず私は乗り出してしまうほどですので、小説風に自分を第三者の立場に置いた彼の話を、友人の文筆家の文章を通して、ご紹介します。

◆4-1 初めてのアテンドも吹き飛ぶ事態発生

 竹根のニューヨーク生活が始まって、二週間が経った。

 本社から指示があり、商社マンに不可欠なアテンドという業務が始まった。

 ラッキーという、竹根の会社の文具を製造している会社の幸常務のアメリカビジネスの支援をしなければならなくなった。

 ひと様の世話をするということになれていない竹根にとっては、初のアテンドに緊張した。

 ラッキーの幸常務とロサンゼルス、シカゴを訪問してニューヨークに入ったのはクリスマス休暇が始まる直前であった。

 事務所に行くと郵便が数通届いていた。

 本社からの郵便を開くと、アメリカに来る時に見た、達筆な文字のメモが入っていた。

 いずれのメモも事務的な連絡でしかなく、何となく寂しかったが、本社で竹根のフォローをしてくれる相本との間が繋がっていることは確かである。

 そんな思いを隣の明森製菓の檜山が打ち砕くように飛び込んできた。

 「円ドルの固定相場が一ドル三百六十円から三〇八円になった」というのである。

 これまで三百六十円換算で、割安に日本製品を輸出することができたが、そのメリットが薄れることになり、新たにニューヨークで仕事をスタートしようと、一ヶ月も経っていない竹根の前に、急に暗雲が広がった。

 すぐに外に飛び出して新聞を購入したが、朝刊しかなく、まだその記事は掲載されていなかった。

 ラッキーの幸常務のアテンドも上の空となってしまった。

  <続く>

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