経営コンサルタントへの道

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■■【経営コンサルタントのお勧め図書】独在住の日本人が語るドイツ メルケルの功罪

2021-12-28 13:45:39 | 経営コンサルタントの本棚

■■【経営コンサルタントのお勧め図書】独在住の日本人が語るドイツ

 「経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。

 日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。

本

■  今日のおすすめ

 

  『「メルケル仮面の裏側」―ドイツは日本の反面教師である―』

                     (川口ロマーン恵美著 PHP新書)

  『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』

                     (川口ロマーン恵美著 WAC)

  『住んでみたドイツ9勝1敗で日本の勝ち』

                     (川口ロマーン恵美著 講談社α新書)

本

■  ドイツ在住35年の日本人が語るドイツ(はじめに)

 

 著者は、1985年ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科を卒業、以来35年ドイツに在住し、拓殖大学日本文化研究所客員教授を勤める作家です。その間、巾広く政治・社会・経済に関わる30冊以上の著作を発表。ドイツを中心とするヨーロッパから見た日本に関する記述は「真実」に溢れています。

 ドイツと言えば、明治維新から間もない日本にとって、「近代国家」として歩み出したという共通点があり、法制、軍事、科学、芸術 など様々な分野で模範となる国でした。

 現在も、技術、経済、医療面での交流は活発で、日本にとってドイツはヨーロッパ地域最大の貿易相手国、ドイツにとっての日本はアジア地域で中華人民共和国に次ぐ貿易相手国です。自動車産業においては最大のライバル同士として、世界でトップ争いをしています。

 著者から見た日本像・ドイツ像は「住んでみたドイツ9勝1敗で日本の勝ち」の表現に現れているように、ドイツ礼賛ではありません。特に東西ドイツ統一の1990年から2021年9月にメルケルが4期16年の首相任期を終えるまでの政治・経済・社会の変化を、メタ(必ずしも表に現れない事態の原因となっている真の事実)から解き明かしているのが紹介本です。

 紹介本が語る日本人の知らないドイツの「真実」について、次項でその一部をご紹介します。

本

■  東西ドイツ統一の象徴メルケルの16年間の長期政権とドイツ、EUの行方

 

 1989年から1991年までは、東欧の脱共産化、ベルリンの壁崩壊、東西ドイツの統一、そしてソ連崩壊と続きます。冷戦が終わると同時に「世界地図が塗り替わった時代」でありました。

 この時代に生きたのがメルケルです。父親ゆずりの「第三の道(民主的プロセスによる社会主義を目指す)」の思想をバックグランドに持ちながら、「私は社会主義とは決別」と表明し、ベルリンの壁崩壊を機に保守政治家への道を歩みます。

 賢さ抜群のメルケルは、身ぎれいさを貫き、他の東ドイツ出身の政治家がソ連のスパイ容疑などで失脚する中、唯一の東ドイツ出身の政権中枢の政治家として生残り、要職を順調に昇っていきます。

 1991年1月には女性・青少年問題大臣に就任。1994年には環境・自然保護・原子力安全大臣を務めます。1998年~2005年はCDUからSPDに政権が移りますが、その間にCDUの幹事長を経て、2000年にCDUの党首に就任します。

 2005年CDUが総選挙で勝利すると同時に首相に就任。メルケルの16年間の長期政権がスタートするのです。

 著者はこの16年間の変化について、「ドイツは変わった。社会主義化、中国との抜き差しならない関係、難民問題、エネルギー問題、反対意見が抑え込まれ活発な討論の出来ないソフトな全体主義化」とコメントしています。そんなドイツのこれからの行方はどの様になるのでしょうか?

 

【もう誰もドイツを信じない―中国投資協定の謎―】

 2020年12月30日、ドイツがEUの議長国でいられる最後のタイミング、言い換えればメルケルのEU発足28年に於ける16年のEU治世の最後のタイミング。一方中国の様々な暴力が明らかになり、米国の大統領がバイデンに替わりEUと米国が共同で対中包囲政策を敷こうとしているタイミング。

 そんな時、法治国家ではない中国相手の投資協定交渉は2014年以来遅々として進まなかったにも拘らず、突然合意の発表が行われました。

 何故この様な突然の合意が発表されたのでしょう。それは、バイデンになったら対中政策で共闘せざるを得ないと予測し、ドイツの自動車を中国で確実に売るための何らかの下地を作っておく必要を感じたのではないかと言われています。著者は次のように指摘します。「EUの国々は、メルケルのした事をちゃんと見ている。メルケル治世の後遺症は、彼女が政界を去ってから次第に現れてくるに違いない」と。

 

【EU発足から28年の内16年のメルケル治世で、EUの静かな崩壊へ】

 メルケル治世の大きな問題は難民問題です。EUにおける特徴的な基本ルールはダブリン協定とシェンゲン協定です。2015年9月5日、メルケルはこの2つの協定を破ることまでしてハンガリーで足止めをされていた難民にドイツの国境を開いたのです。

 ハンガリーに到着した難民はハンガリー国内のみで滞留できるのです(ダブリン協定)。難民は到着国以外へは自由に移動できません(シェンゲン協定)。両協定は難民以外のEUの移動の自由と安全を確保する、経済安全保障上の協定といって良いでしょう。

 しかしメルケルは、この経済安全保障のルールを人道問題に置き換えハンガリー到着の難民を、自由にドイツに入れたのです。ドイツに流入した難民は100万人を超えたのです。この後、2015年11月にはパリで、2015年12月にはケルンでテロが起こります。難民とテロの関係は明らかではありませんが、EU各国はドイツから難民が漏れ拡散することを恐れ、非常時の例外規定を使い国境を閉め入国検査を始めたのです。

 ここでダブリン協定とシェンゲン協定は一時停止となったのです。その後、詳述しませんが、難民問題はドイツ国内では様々な矛盾を生み、EUに於いても社会不安の増大、アイデンティティーの喪失と分断を招いているのです。イギリスのEU離脱の要因にもなりました。

 「メルケルは大変な種を蒔いた。100年後のヨーロッパはどうなっているだろう」と著者は記します。

本

■  メルケル退任後のドイツとEUの行方を見守ろう(むすび)

 

 2021年12月8日、メルケル政権に代わり、社民党(SPD)、環境政党の緑の党、リベラルの自由民主党(FDP)の連立政権がスタートしました。ドイツにもEUにも早速変化が出始めています。ポスト・メルケルに注目です。

本

【酒井 闊 先生 プロフィール】

 10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。

 企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。

  https://www.jmca.or.jp/member_meibo/2091/

  http://sakai-gm.jp/index.html

【 注 】

 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。

 

 

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