さて 久し振りに新作をご紹介します。
お伽草子シリーズ あるいは昔話シリーズに属する作品です。
この作品の構想を想い至った動機は ある日突然来ました。
頭の何処かにしまい込まれていたデューラーの銅版画「Melancholia」と
「かぐや姫」が 何の前触れもなく 無理なくぴったり重なったのです。
「これはいける!」
鳥肌が立つ程のわくわく感
何かの啓示のごとく 向こうからイメージが近づいて来た感じでした。
では 順に説明してみます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/cc/460a2cb05af0d02ca50f951a0b5d149e.jpg)
「Melancholia」 (wikipediaからお借りしました)
ドイツの画家・版画家アルブレヒト・デューラーが1514年に製作した銅版画
多分エングレービング(直刻技法)と思います。
かなり知れ渡った作品なので 版画好きの方なら見覚えがあるんではないでしょうか。
wikipediaの解説には
<「憂鬱」をテーマにしたもので、天使が憂鬱に沈んでいる。
魔方陣をはじめとして、寓意的な画題がいくつも描かれており、様々な解釈がある>
この版画のテーマ「憂鬱」を本歌取りとして
かぐや姫の「憂鬱」と 現代の私の「憂鬱」を描き込んでみよう というのが私の目論みです。
とは言っても この想いを具体的なイメージに変換するのには だいぶ手こずりましたが.....
そして仕上がった作品がこちら
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/1e/d7d1f8de0e65192c57f96155fc69d7bd.jpg)
「Melancholy KAGUYA2014」 540×440mm ED70 28色35回刷り
天使の頬づえポーズと同じく かぐや姫も頬づえを付いています。
天使の様な深刻な憂鬱ではなく 姫はどこか遠くを見つめて 想いに沈んでいる表情です。
近々不本意ながら 月に帰らなければならない 気持ちの整理が付かない そんな目線です。
「憂鬱」というより「物思い」感の方が かぐや姫には合っている様に思います。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/b9/ddc74820c1fc5cd2509eede5fe121b09.jpg)
半分開いた丸窓の外には キノコ雲が月を隠さんばかりに わき上がっています。
この部分は右下の和歌と連動して 今の私の憂鬱を出してみました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/e1/46abb5b0584586de8c6b819bdf345527.jpg)
歌は逆さまなので読みづらいですが 抜き書きしますと
天(あま)かくす
くも立ちのぼる迷乱古里(めらんこり)
早や 忘れいる
様ぞ うらめし
(もちろん自作です 和歌と云うより狂歌ですかね)
和歌の左には 何か漢数字が書かれていますが これは篠笛の譜面です。
曲は「さくら」
かぐや姫が右手に握っている赤い笛と連動しています。
(Melancholiaでは天使の右手にはコンパスの様なものを持っています)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/e5/4b5e3e04ca769f09d2c335eda331233f.jpg)
三毛猫が赤とんぼを狙っていますが 多分捕まえる事は出来ないでしょう。
その奥には「火蝋燭」が夜の時を刻んでいます。
この三点はかぐや姫の「物思い」の時間の長さを感じさせる道具として 描きました。
いかがでしょうか。
「Melancholia」のような寓意性はありませんが
ふっとすると 気が沈み込んでしまいそうな 現代の気分を かぐや姫を借りて表現してみました。
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