古い布
若いころの小紋で作った小さな着物。身丈30センチ。
織の教室の生徒さんの一人が、別の生徒さんに注文したのが出来上がりました。81歳のお姑さんが縫われるそうです。
「シミのあった着物が蘇った」と喜んでいました。
正面から。襟下が短いのが可愛らしい。
ぬいぐるみにいろいろな着物を着せて、来月、宮島の古民家を借りて販売するそうです。
先生も昔の着物を出してこられました。戦争直後、ハワイの御親戚が、「日本にはものがないだろうから」とチョコレートなどと一緒に送ってくれたそうです。縮緬に紅絹裏のついた子供用の長襦袢です。「Made in Japan」のタグがついていました。ハワイの日系人用に輸出していたのでしょうか。裂いて裂き織りにされるそうです。
女は布や糸が大好き。古い着物を囲んで、楽しく話が弾みます。
私の持って行った留袖は、刺繍があるし柄が大きすぎるから他のものに活用したらとアドバイスされて持ち帰る。もう一つの子供時代の綸子は、「慌てて切らなくてもと」また持ち帰る。袋に突っ込んでたので皺くちゃです。
着なくなった着物。ただの古い布きれだけど、古い布きれは、大事にされたときの、幸せだったときの、元気だったときのことを思い出させてくれる大切なもの。家の中でそう空間を取るわけでもなく、持っていることに意味があるのかも。
捨ててすっきり、とか、断捨離とか、そんなことでは割り切れない人の生きてきた軌跡。
最近半纏代わりにしている絞りの羽織。ド派手。母の好み。で、先日母が「あれ、何?」と聞くのでずっこけた。娘に作ったことを忘れているらしい。
「縫い直して道中着にしたら」と言われたので、「誰が縫うの」と母に聞いた。母、何も答えず。針に糸が通りにくくなって、もう縫い物はしたくないそうで。
日本全国、津々浦々、死蔵されている総絞りの羽織、一体いくつあることやら。ネットするときは体が冷えるので風邪ひく前に羽織る。いちばん正当な使い方ではないかしらん?