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「ムーンライト・イン」 中島京子

2021-11-04 | 読書

今年3月に出た本。面白くてほろりとして、心が癒されて、高原のペンションに泊まりたくなって、それも無理だから、せめて家の中を暖かく整えようと前向きになれた本。


栗田拓海は30代と思われる若者。職を失い、自転車旅行の途中に大雨に降られて、高原の元ペンションにたどり着く。

住人は70代前半の元オーナー虹太郎、それより年上の女性かおる、かおるさんは車椅子生活で、一緒に来たヘルパーの搭子、搭子の知り合いの若いフィリピン女性、マリー・ジョイ。

それぞれ他人同士が、何か事情があるらしく、肩寄せ合って生きている。拓海は屋根の修理を頼まれて負傷し、思いがけずに長逗留、次第にそれぞれの事情が分かってくる。

虹太郎とかおるは昔の恋人。恋が成就しなかったのはかおるは既に人妻だったから。搭子は施設の利用者に外で出会い、親切にするつもりが強引に家の中に押し込まれ、相手にケガさせて逃げている身。もしかしたら死んだかもしれない。かおるに打ち明け、それをきっかけに二人で虹太郎の所へ内緒で移住する。

マリーは本国では看護士、日本の介護資格を取るのと、実の父親に会うのが目的。それは辛い結果になり・・・

かおるは、本社勤務になり帰国した息子に強引に自宅に連れ戻される。変な人に騙されてお金を取られているのではという妄想。帰らないつもりだったのにとりあえず言うこと聞いたのは、結局、お嫁さんが持て余して手放すはずと、作品の中で先に含みを持たせている。一度帰れば息子も納得すると。・・・・どうかな。施設に入れられそう。

拓海は、ビザが切れて帰国するマリーに、結婚しよう、必ず迎えに行くからと告げる。


たいそうに風通しのいい作品で、元気が出た。助け合い、理解し合って生きるのは家族でなくてもできる。それは人への思いやりと、人の役に立ちたいという慈愛の心。家族は甘え合い、言い過ぎて、こじれる場合もあるけれど、この作品の中で人間関係はさわやか。過度に干渉しない。

いいなあ、晩年にこんな関係が持てたら素敵だなあ。

暖炉、シチュー、夜の語らい、野菜と果物の栽培、ジャム作り、毛糸で作る小物を店に置く。二重窓の外は鮮やかな紅葉、やがて冬景色・・・

私の妄想も果てしなく。読書の効用ここにあり。

さすが直木賞作家、面白く読みましたが、一か所だけ、大腿骨骨折後に手術もリハビリもしないのは夫と息子が反対したからって、それはあまり説得力がないように思う。

大腿骨を折ると手術してもやがて歩けなくなるけれど、手術とリハビリで初めは何とか歩けるのでは。心の冷たい家族が、手術せずに車いす生活を望むという設定がちょっと理解できなかった。

また別の場所では、立つことは出来るので今からでもリハビリすれば歩けるのではと虹太郎さんが思うけど、大腿骨骨折で立てますか?リハビリだけで歩ける?

そういう人もいるのでしょうか。私の乏しい経験では立てずに、直ちに手術、リハビリしてものに掴まって歩くくらいに恢復して退院しましたが。

我が姑様の場合ですが。

普通はそうではないかなあと、ちょっと疑問符????


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