美濃屋商店〈瓶詰の古本日誌〉

呑んだくれの下郎ながら本を読めるというだけでも、古本に感謝せざるを得ない。

生死分かち難くとも文字を追えるか

2015年11月08日 | 瓶詰の古本

   「嵐が丘」を書いた作者の心底にある作意。主人公を幸せにするも不幸せにするも作者次第であるということを、読者ににべもなく知らしめるために書かれた小説。主人公の運命を自在に翻弄させることによって、作者の影をはっきりと頁に落とすための小説、と同時に、ひょっとすると幸せ、不幸せに左程の差異はないことに作者自身書き進めているうちに気が付いて行く小説。あるいは、自分に起こりつつある不条理を受け容れるしかないことが必ずしも誰にとっても苦悩であるとは言い切れないのではないかと告げる小説。
   病患を得て生死の分かち難いことを思うとき、再読に堪えるかどうか試してみたい小説。

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