花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

東京都美術館「バベルの塔」展の感想(2)

2017-04-22 22:41:22 | 展覧会

ボイマンスでこの《バベルの塔》を観た時、あまりにも細密緻密な描写に目を奪われつつ、その朱赤の持つ色調の不穏さが物語の結末を暗示しているのではないかと思った。 

  サイズ:60 x 75 cm

ピーテル・ブリューゲル《バベルの塔》(1568年)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館 

しかし、今回の展覧会で、なんと朱赤が煉瓦の色であり、引き上げに伴う砕片粉末が付着したものだということを知った。多人数の白い人影も漆喰用の白粉を被った者たちだったとは!! だが、ブリューゲルの激リアリズムによる煉瓦色や白であると知っても、やはり暗雲の上に更に高く築かれようとしているバベルの塔は依然として不穏なのである。

ちなみに、解説に拠ると、美術史家でも「いつの日か罰せられる傲慢の象徴とする見方もあれれば、他方には仲違いによって分裂が応じる以前の調和を描いたものとする見方もある」らしい。

私的にはボイマンス作品に先行するウィーン美術史美術館《バベルの塔》(サイズもずっと大きい)の方がなにやら平穏に思えるほどなのだが(^^;

 サイズ:114 x 155 cm

ピーテル・ブリューゲル《バベルの塔》(1563年)ウィーン美術史美術館  



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16 コメント

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芸大でバベルの塔が (むろさん)
2017-04-23 00:59:42
都美術館のすぐ近くにある芸大(芸大美術館側ではなく音楽学部側)のArts & Science LABでブリューゲルのバベルの塔の大型立体模型が展示されているのはご存知ですか? 都美術館のブリューゲル展協賛企画であり、4/18~7/2まで。なお、私としては同じ会場内で展示されている法隆寺金堂釈迦三尊と金堂壁画のレプリカの方が興味を引きましたが。

ロッテルダムの美術館へ行ったのはもう30年ぐらい前です。その時はファン・エイクやボス、ブリューゲルに凝っていて、ブリュッセルからアムステルダムへ移動する途中に寄りました。港に現代彫刻の「心臓のない男」という像があったことをよく覚えています。そして作年9月にやっとウィーンへ行くことができて、大きい方のバベルの塔も見ることができました。(ここまで実に長い時間がかかりました。なお、この旅行で利用したのがカタール航空であり、ドーハの空港であの大きな熊も見ました。)このベルギー、オランダ旅行で悔いが残っているのはアムステルダムにあるカルロ・クリヴェッリのマグダラのマリアが見られなかったこと。同じく展示されていなかったボッティチェリのユディトは作年春に都美に来たので、あとはクリヴェッリの絵だけが心残りです。(クリヴェッリ好きの人のブログを見ると、この絵はあまり展示されていないので何回も行かないとダメだそうです。)
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むろさんさん (花耀亭)
2017-04-24 01:34:23
貴重な情報をありがとうございます!!
藝大とコラボ企画があることは知っていたのですが、内容も何処でやっているかもわからず、時間も無かったので東博に行ってしまいました(汗)。7/2までなら観に行けそうです(^^)v
で、むろさんさんもドーハであの熊さんをご覧になったのですね!!もしかしてドーハ空港名物?(笑)。ウィーンのバベルも良いですよね!♪
それから、アムスのクリベッリですが、せっかく行ったのに展示されていないと本当にがっかりですよねっ(>_<)
ちなみに、アンコーナ市立美術館のクリベッリも小型ですが魅力的な作品でしたよ(^^ゞ
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バベルの塔 その他 (むろさん)
2017-04-24 14:06:42
芸大のバベルの塔立体模型については下記アドレスをご覧ください。パンフレットもあるのですが、HPには載っていないようです。
http://www.geidai.ac.jp/news/2017041456149.html
この模型は3mぐらいですが、正面半分だけです。材質は硬質発泡ウレタンの表面に印刷した紙を貼っているとのこと。あちこちの窓の中には小さな人間の動画が。(会場備え付けのカメラで自分の写真を撮ると出演できるそうです。やってみたらどうですか。)隣の部屋では暗い室内でバベルの塔のプロジェクションマッピングをやっています。
また、同じ会場内に展示されている法隆寺金堂釈迦三尊のレプリカは下記アドレス(ただしこれは鋳造発注先の富山県高岡市で展示した時のもの)。
https://www.city.takaoka.toyama.jp/sanki/sangyo/shinsangyo/shakasanzon.html
芸大に行かれたら併せてご覧下さい。(先週は東博の新指定文化財展示、芸大の保存修復研究室の発表会などもあり、毎日のように上野通いでした。)

ドーハの空港には黄色い熊の他に、銅?でできた巨大な滑り台付き人形のような物が何個かあったり、子供でも飽きないように工夫されていました。

クリヴェッリについてはそのうちアドリア海沿いの町へクリヴェッリ巡りに行きたいと考えています。山科さんも以前モンテフィオーレ・デラーゾやアスコリ・ピチェーノへ行かれたとブログにお書きになっていたと思うので、いずれお二人には詳細情報を教えていただきたいと思っています。(アンコーナへ行ったらロレートにも立ち寄ってルカ・シニョレッリの壁画を見たいと思います。)なお、私も最近RizzoliのCrivelliカタログを入手しました。
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むろさんさん (花耀亭)
2017-04-25 01:49:56
なんと、バベルの塔の立体模型なのですね!!面白そうな企画で、ぜひ行ってみたいと思います。法隆寺金堂釈迦三尊のレプリカも併せて観てみますね。藝大も色々やっているのですねぇ。上野に近いむろさんさんが羨ましいです!!仙台なので講演会とかシンポジウムは殆どあきらめています(涙)
で、ドーハ空港って面白そうですね(笑)。美術館も興味津々だし、いつか寄ってみたいです。
おお、むろさんさんはクリヴェッリの追っかけ計画中なのですね(^_-)-☆ 山科さんと違って、私の場合はたまたまクリヴェッリを観ることができただけなのですよ(汗)。で、ロレートではメロッツォ・ダ・フォルリもぜひ♪
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マルケ旅行 (山科)
2017-04-29 06:41:25
>むろ 様

  マルケでクリヴェッリを観にいったのは、かなり蛮勇というかギャンブルでした。とにかく、クリヴェッリが長く生活したアスコリ=ピッチェーノという町と、モンテフィオーレ祭壇画を観るのが目的でしたから。

  はっきりいって、ローマやフィレンチェやミラノで教会や博物館を歴訪するよりずっとずっと問題が多かったと思います。
 モンテフィオーレなんか葡萄畑の真ん中にあってアクセスが悪かった。

 展示館が臨時休館していてみすみす門前払いされたこともありますし、モンテフィオーレの展示環境採光が最悪でろくに鑑賞できなかったり(今は場所が移ったらしい)しました。
  イタリア在住の方でも煮え湯をのまされた(URL)例もあるようです。
 私はアスコリ=ピッチェーノに泊まりましたが、、マチェラータやフェルモを基点に回った人もいるようですね。

 交通手段としてレンタカーを使えれば、多少有利かもしれません。

 石井暁子氏の著書が旅行記になっているので、参考にもなると思います。
 個人的にはアスコリ=ピッチェーノのホテル  パラッチオ  グンデロッキは、また泊まりたい素晴らしいところでしたし、街も気に入りました、シエナ風の感じがあります。
 なお、マルケは海水浴シーズンは混むそうなので、それを少し前後に外せば有利だと思います。


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クリヴェッリ巡り (むろさん)
2017-04-30 00:35:58
山科様
情報ありがとうございます。石井暁子氏の本は2冊とも読んでいます。その本によると昔より少しは行きやすくなったようなので、「そのうちなんとかなるだろう♪」という気持ちで気長に待って挑戦したいと思っています。それまでにまだ行ったことのないボローニャとかベルガモとかウルビーノとかマントヴァとか…あと数回イタリアに行って、シチリアやマルタでカラヴァッジョ巡りもして、それからモンテフィオーレ・デラーゾやアスコリ・ピチェーノのクリッヴェッリ巡りをしたいと思います。でも、クリッヴェッリの絵を見たい!と思う気持ちが今よりもっと強くなったら、案外早く行くかもしれません。その節はまたアドバイスをよろしくお願いします。

ところで山科さんはR.Lightbown のCarlo Crivelli,Yale Univ. Press 2004
はご存知でしょうか? 私はまだ見たことがないので、お持ちになっているか、何かご存知なら教えてください。(AmazonでもAbe Booksでもかなり高額ですが)
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ライトボーン (山科)
2017-04-30 05:58:33
R.Lightbown のCarlo Crivelli,Yale Univ. Press 2004
は8.9年ほど前に購入しました。

  なにしろ、約三十年ぶりのクリヴェッリの総カタログということなんで。

 とにかく厚い重い本で、確かに総カタログでもあります。

 ただ、Dirk DeVosのロヒール総カタログやメムリンク総カタログとは、ちょっと書き方が違いますね。

  絵の図像や解説を細かく長く書いていて文章の量が非常に多い。しかも、なんというか項目分けしないで長々と書くので要領よくつまみ読みができないので外国人には優しくない。しかし、よくこれだけ一人で書けたもんだ、と感心します。文章活字の量の多さに辟易する本です。

  図版は、本が大きい割りには意外に小さく、やや少なめ、あまり拡大図版も多くないので、そういう意味では失望しました。勿論、全部カラーで入ってはおりますが、そういう視点とはちょっと違う書き方の著作だと感じました。

 ライトボーンという人はかなり個性の強い学者のようですね。


 
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【訂正】ライトボーン (山科)
2017-04-30 12:24:03
✕>勿論、全部カラーで入ってはおりますが
〇>だいたいカラーですが、モノクロもあり、

 なんとなく、カラー写真・精細な質の良い写真図版を求める欲望に乏しい感じがいたしました。
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Re:Lightbown (むろさん)
2017-04-30 23:18:57
山科様
早速のご回答ありがとうございます。やはりお持ちでしたか。Amazon等では5万とか7万とか高価なので、すぐに購入するのはどうかと思い、まずはお問い合わせをしたということです。あとはいつも利用している大学の図書館などで置いてあるかを確認してみます。

Lightbownに関しては40年ぐらい前にBotticelliの2巻本を英国から直輸入し、このうちの1巻がカタログレゾネ、あと1巻がBotticelli論で、このBotticelli論のみが数年後に改訂されてカラー版大型図録として出版され、日本でも西村書店から森田訳として出版されましたが、カタログレゾネの方は結局邦訳されないままです。私としてはこのカタログレゾネとRizzori集英社版(マンデル著)のカタログを活用しているところです。内容としてはLightbownの方が充実していて、今でも重宝しています。Botticelliでこれ以上のカタログレゾネは今だに出ていないと思っています。という訳で「Lightbownの書いたカタログレゾネ」ということならCrivelliも良い本だと予想していたのですが、ちょっと予想外でした。

ところで、Crivelliの本を検索していたら、ZampettiのCarlo Crivelli (イタリア語) 1985 というのがAmazonに出ていました。
https://www.amazon.co.jp/Carlo-Crivelli-Pietro-Zampetti/dp/8840411054/ref=pd_rhf_dp_p_img_3?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=YCM0NPYH1R396ZWNR5NX
中古品13,346円、新品16,184円ということですが、石井暁子氏の本にはZampettiの1968年版のCrivelli総カタログ(重さ3.5kg)を手に入れたという話が出てきます。1985年版はこの本の改訂版カタログなのか、もしご存知ならご教示ください。(Lightbown 2004が「約30年ぶりの総カタログ」とはZampetti1968から30年ぶりということでしょうか?)
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英語とイタリア語 (山科)
2017-05-01 06:55:18
 ライトボーン本の参考文献目録をみると確かに、フィレンチェの
Nardini社で1986年に刊行された
Zampetti, Carlo Crivelli, 1988 この年に2edが出たらしい。。。があります。

 アマゾンの本と同じかどうかは不明ですが 石井さんの本にあげてあるのは、1986 or 1988のこれでしょう。イタリア語を
花耀亭さんやむろさんのように楽には読めないので、イタリア語の大きな総カタログを買っても私には役に立ちません。フランス語版なら買ったかもしれませんがイタリア語ではちょっと。それで閑却しておりました。薄くて要領のよいRizzoliなら
辞書片手に読めますから。でもブリューゲルの「マルチヌスのワイン」(スペイン語)はプラドで無理して買いましたが、、、
 ライトボーン本は英語の本なので、ガンガン使ってやろうと思って買ったのですが、現在Rizzzolli本(イタリア語)と、読むのは半々ですね。ライトボーンにはマンテーニャの大きな本もあるようで、とにかく精力的な方だと思います。
ただ、私にはDirk DEVosのハンス=メムリンク カタログのような書き方のほうが読みやすいものでした。やはり初期ネーデルラント系が一番親しんでいるからでしょう。

また、30年ぶりというのは間違いでした。個人的には Boveroの Rizzoli本からは3,40年経ったな、という感じです。


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