花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

300%スパニッシュ・デザイン展

2005-07-20 03:05:15 | 展覧会
埼玉県立近代美術館で「300%スパニッシュ・デザイン展」と「ファッションとスペインの文化展」を観た。スペインにおける20世紀初頭から現在に至るデザインを一望できる画期的な展覧会だった。
http://www.saitama-j.or.jp/~momas/3.htm
ちょうど行ったのが展覧会オープニングの日と言うこともあり、会場にはスペイン人関係者が多く、日本人観客の方が少なく感じた。なにしろ聞こえてくるのは元気なスペイン語ばかり(笑)

さて、今回は「300%スパニッシュ・デザイン」の感想なのだが・・300%とは、椅子・ポスター・照明の3種類のデザインを指す。

【椅子】
そのデザインを誇るだけあってシンプルでモダンなものが多かった。やはり皮革製品に定評あるスペインなので良質の皮の椅子もある。しかし、一番見応えがあったのはアートとしての椅子だった。ミロの椅子「座る女と子ども」は色彩豊かないかにもミロ的造形で、子どもが空豆のような形で座面にちょこんと置いてある(ように見える)。ダリの椅子の足はハイヒールを履いた女性の足だ。もしかしてガラ夫人の足だろうか?(^^; タピエスの椅子には画家の衣服が貼り付けてあり、椅子と言うよりオブジェ作品と言った感じだ。そんな中で一際目を惹いたのはアントニ・ミラルダ「ロッキング・チェア」だった。揺り椅子全面を覆いつくすのは銃を構えた無数の兵隊の列。白い兵隊のフィギュアが整然と銃を構え、沈黙がロッキング・チェアを支配する...。

【ポスター】
さながら20世紀ヨーロッパにおけるアート・デザインを回顧するような内容だった。ロートレックを思わせるポスターやアール・デコそのものと言えるものなど、当時のスペインが欧州デザインの流行に否応なく影響を受けざるを得なかったことが見て取れる。
しか~し!スペインは圧倒的個性を持った芸術家を生んだ。ダリ自身が作った「ダリ劇場美術館」ポスターの何とシックで素敵なこと!もちろん大御所ピカソやミロも自身の展覧会ポスターを描いている。自分の展覧会だからモチロン力が入っていてオシャレである(笑)。ピカソ「女官たち」もあったが、ベラスケスの絵を元にしたものだと思うのだがどうなのだろう…?
実は私的に一番興味深かったのはアルモドバル監督の映画「ハイヒール」のポスターだった。作者のファン・ガティはヒール部分を拳銃の銃身として描いている。う~ん、この映画を観ているので確かにわかるけど…デザイン的にちょっと考え過ぎのオチという気がしないでもなかった(^^;

【照明】
なにしろ今回の展覧会の一番の期待はマリアーノ・フォルトゥニー(息子)のデザイン作品にあった!下目黒研究所長さまから、期待できそう、との情報をいただき、初日に走ってしまった花耀亭である。と言うことで、期待通りフォルトゥーニの照明ランプもあった(^^)v。繊細なプリント地や房飾りを用いたにランプ・ シェードはそのフォルムも含め東洋的な雰囲気を醸し出していた。実は会場で白いプロジェクターを見たのだが、後でリストを見たら、それもフォルトゥーニのデザインだったようで意外だった。
フォルトゥーニはスペインの画家マリアーノ・フォルトゥーニの息子で、母は画家でありプラド美術館長を務めたマドラッソの娘である。フォルトゥーニ(息子)はベネチアに工房を持ち、照明・ファブリック・衣装等々、さまざまなデザイン活動を行った。今回の2つの企画展では何と親子競演が見られたのだ!)^o^(

さて、スペインの照明ランプで一番有なのはル・フリーク「ピンポン」ではないだろうか?ピンポン玉の集合体としての楽しい作品になっている(ブログの画像参照)。では、一番意表を突いた作品はと問われるならば、はやはりダリの作品と答えたい。スタンド部分にまるで燃えるキリンに出て来るような抽斗が付いているのだ!抽斗の中からコードが出てくるのもダリらしくおちゃめだと思った(^^;。そして、一番見惚れてしまったのがラモン・バイス「ブルカノ」(多分)である。メタリック板素材でスパイラル状に上へと引き伸ばされたような造形で、フォルム的にも素敵だ。その先端からふと天井を見ると、何とスパイラル円の渦巻きが美しい光の影となって映っているのだ!計算し尽くされた造形の美を見たような気がした。ウルカルヌスとウェヌスのシンフォニーと言うところだろうか?

今回スペインのデザインをまとまった形で観ると、歴史に裏付けられながらも、現在のスパニッシュ・デザインがより斬新なものに向かっている様子が見え、目にも大変楽しい展覧会となった。
なお、次回「ファッションとスペインの文化展」へと続く…(予定(^^;;)

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
遠かった・・・ (オット(さかなのはなぢ))
2005-08-03 00:19:06
私も行ってきましたよ!

写真のピンポンは照明がオレンジでした。ブルーならもってかっこよかったかもしれません。



しかし、図録が高い・・・

こちらも購入を断念しました。
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おつかれさまでした! (花耀亭)
2005-08-03 03:54:28
あれっ、オットさん、お留守番ではなかったのですか?(笑)

しかし、さすがにチェエクの鋭いオットさんです。私などピンポデザインと造形に眼が行ってしまい、実は色まで良く見ておりませんでした(^^ゞ。確かにこのブルーの画像はカッコ良過ぎかもです。



で、図録の1企画1冊4800円は本当に高過ぎです!私もパスしました。せめてダイジェスト版を作って欲しかったですよねっ。



と言うことで、オットさんのご感想を先ほど拝見してまいりました。続きのツマさんのご感想も楽しみです~♪
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月刊展覧会ガイドー東京アートナビ (oki)
2005-08-12 16:39:12
を購入しているんですが、この展覧会のことトップで3ページ使って特集していました。

入館者が少ない少ないといわれるけど、さすがJuneさん、目の付け所が違いますね/笑。

地球博のスペインパビリオンの企画ですってね。

ちょっと僕はモロー観てきます、Juneさんはいついかれるのかな。
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東京アートナビ (花耀亭)
2005-08-16 00:30:12
okiさん、こんばんは。帰省していたもので、遅レス申し訳ありませんでした。

さて、恥ずかしながら「東京アートナビ」を存じませんでした(^^ゞ。okiさんが展覧会情報に詳しいのは、もしかしてこの雑誌を参考にでしょうか?私も早速本屋で探してみますね。

それにしても激しく空いている(た?)この展覧会、この特集で少しでも観客が動員されるとなんだか嬉しいです。さぁ、okiさんもご覧にならなくっちゃ(笑)



で、早くもモロー展にいらっしゃったのでしょうか?私もこんどの土日にokiさんから頂戴した只チケット♪で観に行こうと思っております(^^)v。さてさて、okiさんのモロー展のご感想はいかがだったのでしょう?
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東京アートナビは (oki)
2005-08-16 13:45:39
薄っぺらな小冊子で本屋では売ってないと思いますよ。

展覧会会場に時々あります。三百円。生活ガイド社というところの発行です、僕は定期購読です。

そういえばJuneさんのふるさと仙台で先ほど大きな地震があったようデーご家族の無事をお祈りします。
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探しました(笑) (花耀亭)
2005-08-16 21:18:15
okiさん、ご心配いただき、ありがとうございました!

仙台の方は皆無事で、私も安心しました。地震直後は電話が通じなくてハラハラしたのですが、大丈夫でした。

okiさん、東京も大地震がいつあるやも知れません。備えあれば...ですよ。



さて、「東京アートナビ」を書店員に検索してもらって探しましたよ~。でも、やはり売っていませんでしたし、検索にも出て来ませんでした。どうやらokiさんはかなりマニアックな雑誌を購読されているようですねぇ(笑)。こんどは展覧会場でチェックしてみます。無いとなると探したくなりますね(笑)
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