花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ファッションとスペインの文化展

2005-07-24 04:01:21 | 展覧会
さて、「300%スパニッシュ・デザイン」展と同時開催の「ファッションとスペインの文化」展も、華麗なドレスとインスピレーション源になったスペインの絵画を並べて見比べるという大変面白い企画だった。

会場は大切なドレスが痛まないように照明を落としているのでメッシーナ美術館のように真っ暗だ(引き合いに出してごめんなさい)。しかし、係りの人がクレジットを読むためにペン・ライトを貸してくれる。暗くても、素敵なドレスばかりなので目が吸い寄せられる(笑)。シャネルのクラシックなドレスやロエベのラム・スゥエードのロング・ドレスには目を見張った。ミロの油彩《悪の華》とジャン=ポール・ゴルチエのドレス《ミロ》(画像)は今回の展覧会でも圧巻だったと思う。

絵画は近代スペイン絵画が中心だったが意外な作品などもあり、古典絵画好きとしてはあのファン・カレニョ・デ・ミランダの油彩画がさり気に展示されていたので嬉しいと同時に驚いた。まぁ、さすがにベラスケスやスルバランやゴヤなどが複製写真だったのは仕方が無いところだ。今回の展示されていた絵画作品には個人蔵も多く、このような形でも日本で観られることは滅多に無い幸運だと思う。カレニョ作品は《ドン・フェルディナンド・デ・バレンスエラ・ビリャシエラ侯爵―宮殿の亡霊》と題されており、黒い服を着た色白の青年貴公子が描かれている。亡霊というより繊細な夢見る青年という感じだったのだが(^^;;。ちなみに当時のスペインでは染色で黒を出すのが難しく、黒を着るのは貴族や金持ちの証拠だったそうだ。フェリペ2世も黒ずくめだったしね。

ところで、会場で観ている途中、グループを引率したスペイン人のおじさんが解説を始めた。ラッキーと思いその説明を側で聞きながらの鑑賞となったのだが、意外にサックリと飛ばすので後でまたゆっくりと自分で観直すことになった。もしかしてその方は今回のキュレーター氏なのではないかと睨んでいるのだが、実際はどうだったのだろう?
ちなみに、そのおじさんはドリス・ヴァン・ノッテン(多分)のドレスの説明で、並んで展示されていたフェデリコ・マドラッソが孫娘のマリー=ルイーズ・フォルトゥーニを描いた絵を指し「ゴヤの絵から影響を受けた…」なんて、まるでこの絵がゴヤ作品と間違われそうなことを言っていた(・・;) 。確かにエンリケ公女風のドレス姿なのだけれど、私的にはちゃんとマドラッソ作品と言って欲しかったなぁ。う~ん、ゴヤ作品を持ってこられなかった代わりだった可能性もあるけどね。今回の展覧会はフォルトゥーニ(子)デザイン作品をお目当てに行ったのだが、お祖父さんのマドラッソ作品まであって大収穫だった。

日本ではあまり知られていないフォルトゥーニの家系を参考までにちょっと…。
http://www.fortuny.com/Mariano/History.html

画家マリアーノ・フォルトゥーニが画家(プラド美術館長もした)フェデリコ・マドラッソの娘セシリア・マドラッソと結婚して長女マリー=ルイーズ・フォルトゥーニ(先に挙げた絵のモデル)とデザイナーとして活躍する長男アリアーノ・フォルトゥーニ(子)をもうける。西美「プラド美術館展」でのフォルトゥーニ作品《日本風居間で遊ぶ画家の子供たち》を思い出していただけたら幸いである。

さて、更に驚くことに、モスキーノの扇型ハンドバッグと並んで展示されていたのは、何とマリアーノ・フォルトゥーニ(父)の水彩画《アグラソ夫人》だった!)^o^( 観葉植物のあるサロンに座った女性を描いた絵で、開いた扇を持っている。ドレスの繊細な水玉模様までしっかり描き込んである。フォルトゥーニ作品は油彩画、特に人物のいる渇いた風景画が好きなのだが、繊細な水彩画も魅力がある。この展覧会でフォルトゥーニ(父)作品を観られるなんて予想していなかったので、本当に本当に嬉しかった。

で、当然、服飾デザイナーとしても活躍したフォルトゥーニ(子)のプリーツ・ドレス《デルフォス》も展示されていた。解説のおじさんも「重要作品」と言うくらいに当時としてもインパクトのある有名作品である。彼はドレスから舞台照明やファブリックのテキスタイル・デザイン等まで、多彩なデザイン活動を行った。スペイン人ではあるがヴェネチアに工房を構えていたのでイタリアのデザイナーとても登場する場合がある。ちなみに、MET「ロバート・レーマン・コレクション」の深紅色の壁布はフォルトゥーニ製である。

なんだか、今回の感想文は去年のスペイン旅行ですっかり興味を持ってしまったフォルトゥーニ親子を中心とした感想文になってしまったようだ(^^ゞ

それから...実は迷った挙句、2つの展覧会図録を購入しなかったので、記憶違い等ががあったらどうぞお許しあれ。なにしろ、スペイン語図録で日本語訳部分も少なく、フォルトゥーニ親子に関しても詳しく触れておらずがっかりしたのだった。

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
行きたいですー! (ツマ)
2005-07-24 23:09:25
花耀亭さま



首都圏(というか横浜と東京23区内)以外の美術展にとんと疎いのでこんなに素晴らしい展覧会が始まっていたとはつゆ知らず、びっくりしました。絵画、ポスター以外に、椅子・照明・ドレスだなんて!私が好きなものだけが展示されている展覧会です(とことん自己中心的ではありますが)。10月までと期間も長いし、絶対に出かけてきます。夏休みだと学生さんが多いのかな…できれば空いてる時期にゆっくり見たい展覧会ですね。花耀亭さんが書いてくださらなければ絶対知り得ませんでした。とても感謝してます。ありがとうございます。

(一応オットに「一緒に行く?」と声をかけてみたら、「浦和って美味しい餃子かカレーか何か食べられるの?」と訊かれました…ひとりでゆっくり見てこようと思います)
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ツマさん (花耀亭)
2005-07-25 01:15:34
ツマさん、こんばんは。

イタリアのデザインは定評あるところですが、スペインもなかなかのものでした。ツマさんならきっと楽しめる展覧会になると思います。

初日に行ったせいか、会場は空いていて関係者ばかりが目立っていました。面白い展覧会内容なのに宣伝が行き届いていないのだと思います。ということで、NHK「新日曜美術館」あたりが扱う前がチャンスです(笑)

(ツマさん、オットさんを留守番にしてでも、ぜひ...(^^;)
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わたしも観たい! (tamago)
2005-07-25 18:36:36
うわー、本当に面白そうですね。

絵とドレスのコラボレーションなんて…。

暗闇に浮かぶドレスって、ステキでしょうね。

10月までか…行けるかな。行きたいです。
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tamagoさん (花耀亭)
2005-07-25 22:46:21
tamagoさん、こんばんは。

会場の絵とドレスを並べて見ると、スペインって歴史的にも文化的にもちょっとエスニックなイメージがあるのかも...なぁんて思ってしまいました(^^;。スペインはイスラムの影響も受けたし、ハプスブルグの世界帝国の中心でもあったし、もろもろの独特な文化がありますからね。

それにtamagoさんのご明察通り、この企画のキュレーター氏はカメラマンだそうですので、展示の仕方も見所です。

ということで、tamagoさんも機会がありましたら、ぜひ!です♪
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すごい! (アネ)
2005-07-25 23:04:53
花耀亭さん、こんばんは。

「さかなのはなぢ」でコメントを拝見させていただいております。

ツマっちがいつも褒めているので、ちょっとお邪魔させていただいたところ、のっけから、ステキな日記で感激しました。

モスキーノとドリスとフェデリコ・マドラッソだなんて!

プラド大好き、ドリスの洋服ラブなツマアネには、ウキウキものです。見に行かなきゃー!

仕事でぐったりしているときに、よいブログに出会えてリフレッシュできました。
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ツマさんのアネさま (花耀亭)
2005-07-26 01:56:20
ツマさんのアネさま、こんばんは。ようこそです♪

私も「さかなのはなぢ」さんのところで、ツマアネさまの絶妙なコメントを楽しく拝見させていただいておりました。

で、ツマアネさまもプラド大好きでいらっしゃるのですね!お洋服好きでもいらっしゃるようで、これはアネさまのための展覧会ではないでしょうか?(^^) ぜひぜひ、ツマさんとご一緒にご覧になってください。実は花耀亭ももう一度観に行きたいと思っているくらいなのですよ。

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Unknown (桂田)
2005-07-26 12:42:49
今発売中の「美術の窓」が下半期の徹底ガイドですが、それにもこの展覧会はリストにあるだけでそれ以外は全くとりあげられていません。首都圏の埼玉にあってちょっと不思議な感じもしますが、Juneさんの力の入ったご感想から、これはスゴい掘り出し物の美術展のような感じですね。プラドは未踏ですが、スペイン好きの血が騒ぎます~。

ところでこれからケニア行きで関空に向かう訳ですが、こちらは台風の影響が小さくなってちょっと安心してます。もしかして関東は直撃コースかもしれませんが・・・何ともないことをお祈りします。
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桂田さん (花耀亭)
2005-07-26 22:43:52
桂田さん、こんばんは。

って、もう飛行機に乗っていらっしゃるんでしょうね。本当にお気をつけて!



さて、「美術の窓」情報をありがとうございました! でも、リストだけと言うのも寂しいですね。インダストリアル・デザインだからアートの範疇に入らないということなのでしょうか?アートな展示物も多かったのですよ。やはり掘り出し物の展覧会でしょうかね?(^^;



で、明日、早速「美術の窓」を買って読んでみます。桂田さんに教えていただいてから、私も徹底ガイドをいつも参考にして観て歩いております。これからの下半期の私的楽しみは大阪と千葉を廻る「ミラノ展」ですね♪

http://plaza.harmonix.ne.jp/~artnavi/12publicty/171016-ohsaka-milano/00osakasi-milano.html

桂田さんも一時ご帰国に重なりましたら、ゴッホ展と共に、ぜひ!です♪
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楽しかったですー! (ツマ)
2005-07-31 22:31:33
花耀亭さま



土曜日に北浦和まで行って参りました!

ゆっくり十分に楽しんできました。全然人がいないし。土曜日の子ども教室?の子どもが突然わらわら入ってきましたが、すぐ出ていったし。あとは中年女性数人と中年男性一人ぐらい…ゆっくり見られて大変よかったですけれども。何でこんなに楽しい展覧会なのに宣伝しないんでしょう!?もったいないとしみじみ思ってしまいました。

花耀亭さんに教わって本当に良かった。ひとまずご報告まで。
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ツマさん (花耀亭)
2005-07-31 23:35:58
ツマさん、こんばんは。

おお、早起きなさって、観ていらっしゃたのですね!おつかれさまでした。

実は、楽しかったとお聞きして、内心ほっとしております。私だけが盛り上がっているのではないかと少々心配でした(^^;;;

それにしても...やはり入場者が少な過ぎますねぇ。観る方は良いのですが...ね(汗)。面白い展覧会なのですからもっと多くの方に観ていただきたいです。宣伝ガンバって欲しいです。

で、ツマさんの詳しいご感想を楽しみにしておりますので♪
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