花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ウィーン美術史美術館《ゴリアテの首を持つダヴィデ》の帰属(追記あり)。

2016-10-30 22:10:07 | 西洋絵画

「芸術新潮」11月号はクラーナハ特集だった。

表紙はウィーン美術史美術館作品ではなく、ボルゲーゼ美術館作品だよ~(・・;) 

で、美術史美術館での取材記事の中で、《ゴリアテの首を持つダヴィデ》がカラヴァッジョ作品 →カラヴァッジョと カラヴァッジョ派(意味がよくわからんぞ!?)作品に変更されたことを知った。

カラヴァッジョとカラヴァッジョ派(?!)《ゴリアテの首を持つダヴィデ》ウィーン美術史美術館 

確かにこのダヴィデは正統派イケメン過ぎて、カラヴァッジョ作品としては異質な感じは元々あった。なので、今回の帰属変更について意外感はなく、やはりねぇ~!!と思った。まぁ、カラヴァッジョの帰属問題はけっこうデリケートなのだけどね。



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21 コメント

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カラヴァッジョ作品の真贋 (むろさん)
2016-11-01 00:04:24
そうそう、この絵です。この人が修復しているので私はウィーンで見れなかったのだと芸術新潮を手にしてすぐ思いました。(カラヴァッジョ派と書かれていることはあまり気にならなかったのですが)

このダヴィデの帰属について手持ちの資料でざっと見たところでは、Rizzoriのカタログ(Michael Kitson)とPhaidonのカタログ(Catherine Puglisi)では否定的、チノッティ(邦訳岩波)とシュッツェ(邦訳タッシェン)は真筆としていて、意見は半々のようですね。この前の西美カラヴァッジョ展のヴォドレ氏の全世界作品リストでは真作として取り上げられていなかったのですが、これは同じ第一次ナポリ時代の作とされているルーアンの鞭打ちが取り上げられていないのと同じ理由でしょうか。

研究者が考える真贋判定や年代設定については、あくまで現時点で知られている資料や絵の状態からの判断であり、新しい事実の発見によってそれまでの定説が覆される例はいくらでもあります。(カピトリーノの女占い師が修復によって判明した知見により評価を一新したこと、聖マタイの一連の絵の製作順が新資料の発見によって確定し、それまでロンギなどの世界的権威や若桑先生―旧姓山本みどり時代の論文―などで論じられていた順番については研究者全員が間違っていたことなど)

また、最近読んだ日本美術の例(快慶の仏像)では「銘がない場合に、わずかな違いを取り上げて真作から外し、研究対象外とするよりも、もう少し広く候補作として俎上に上げて検討した方が良いのではないか」という意見がありました。このことはクラーナハのように工房作という問題を考える時には大事なことだと思います(カラヴァッジョはほとんど工房を持っていなかったのだから、ケースとしてはちょっと違いますが)。美術作品の真贋判定はお金が絡む(カラヴァッジョ作であるかどうかで価値は桁違い!)のでなかなか難しい問題でしょうが、私としては真筆ではないと現在判定されているような作品でも、(将来覆るかもしれないから)なるべく自分の目で確かめたいと思うし、ルーアンにも行きたいと思っています。(このダヴィデも見たかった。)
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むろさんさん (花耀亭)
2016-11-01 22:05:03
なんと、ウィーンでは修復中だったのですね!むろさんさんのご感想も伺いたかったのに残念でした。私のド素人眼ではちょっと怪しい作品だったのですよ(^^;;;
でも、本当に真贋問題は難しいですよねぇ。おっしゃる通り研究者によって異なるし、真贋が覆る例もあるし、今回の件もまたどうなることやらですね(^^;
《ナルキッソス》だって一時はスパダリーノによる模作だと言われていたら、近年はカラヴァッジョ真作扱いですし。

ちなみに、NYで買ったJohn T. Spike「CARAVAGGIO」の表紙はこのダヴィデなのですよ。Spykeは真筆派ですね(笑)
https://www.amazon.co.jp/Caravaggio-John-T-Spike/dp/0789210592

で、むろさんさんが「なるべく自分の目で確かめたい」とおっしゃるのが凄く良くわかります。私もそうです!!なので、「真作発見」作品も自分の目で確かめたいし、それに怪しくてもペルージャやトレドも外せませんでしたし...。
ところで、ルーアン作品ですが、私のド素人眼では真筆のように思われました(^^ゞ。もちろん、研究者の意見は謙虚に拝聴しますけどね。むろさんさんのご感想も楽しみにしております♪
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コメント (山科)
2016-11-02 06:23:57
>カラヴァッジョの帰属問題はけっこうデリケートなのだけどね。

 ヒエロニムス=ボスの帰属問題は、2000年になって、カオスになってしまいました。

むろ 様>Rizzoriのカタログ(Michael Kitson)
 書誌学になってしまうので、恐縮ですが、Michael Kitson本 は ミラノでRizzoliが出版したシリーズじゃないんじゃないかと思います。たしか米国でABRAMSがRizzoliのシリーズを英訳したときに同時に同装幀で出版したものではないか?と推測しています。
 このRizzoliシリーズの一部は集英社・座右宝で日本語訳されているのですが、ボス本では、部分的な省略があったので、当方はフランス語版を使っています。フラン版がないらしいクリヴェッリやコスメ トーラはイタリア語版を架蔵しています。このシリーズは研究史や作品評価が詳しいので、古い本とはいえ貴重です。日本語版にカラヴァッジョがないのは惜しいですね。
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Rizzoriのカラヴァッジョ (むろさん)
2016-11-02 22:07:34
山科様
Rizzoriの件ですが、あまり細かいことを書くのも面倒だったので「Rizzoriのカタログ(Michael Kitson)」と書きましたが、私が持っているのは正確には英国のペンギンブックス版のRizzoriカタログです。
Rizzoriのこのシリーズはカタログレゾネとして重宝しているので、少しずつ集めています。集英社版がないものは英語版で、それもないものはイタリア語版を買うようにしています。ただ英語版もある程度有名画家しか出ていないようなので、持っているのはABRAMSのジヨット、ペンギンブックスのピエロ・デラ・フランチェスカ、ファン・エイクとカラヴァッジョぐらいで、残りは全てイタリア語版です。仏語版は持っていません(仏語は辞書も持っていないので)。ボスのフラマリオン版が集英社版と異なるとのことですが、それはカタログ部分もそうなのでしょうか?(カタログ以外ならあまり気にしませんが。)

Rizzoriから出ていないと思われる画家でフィリッポ・リッピやルカ・シニョレリは別の全作品カタログ(PHAIDON、T&H)を持っているのですが、ギルランダイオ、ポライウォーロなど私の興味の対象である画家で作品カタログを持っていないものがあるので、もしどこかで出版されていることをご存知ならご教示ください。また、今一番欲しいのはフィリッピーノ・リッピ(伊語版Nelson & Zambrano著2004 Electa Milano)ですが、Amazonでも現在扱っていないので、芸大図書館や都美の資料室で閲覧しています。将来イタリアへ行った時に探してみるつもりです。
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Rizzoriのカタログ レゾネ (山科)
2016-11-03 09:20:02
>むろ  様

また書誌になってしまって、まことに恐縮なのですが、

架蔵している、Rizzoli原出版 Flammarion フランス語版出版  1967 のカラヴァッジョ絵画全作品の著者は、
Angela Ottino Della Chiesaです。

 フランス語板もRizzolliのものを全部出版しているわけではないようで、少なくともクヴェッリ、ペルジーノ、コスメトーラ、ポントルモはなかったと思います。
 ABRAMSが1968-1970年ごろにThe Complete Paintings..で出版したものは、確かにRizzoli原出版のものが多いのですが、著者が違う以上、別の本だと思います。おそらく版権の問題があって、ABRAMSはMichael Kitsonに依頼したのか、あるいは、Rizzoli本自体が2つあるのかもしれません。実は貴殿のコメントをみて、架蔵の本をみたら著者も内容も違っていたので驚いてコメントした次第です。ちなみに、あのダヴィッドはフランス語版では「議論はあるが真蹟である意見が多い(右下端の1つの正方形だけが白い)」の鑑定でした。
  集英社本は力作労作です(あのややこしい総カタログを全部日本語にするんですからね)が、当方が相当昔、ボスの総カタログ部分を読んでいたとき、おかしいなと思ってフランス語板か英語版かを図書館?で対照したら、部分的な省略がありましたので激怒して、結局集英社本を捨てました。比較的カラー印刷の良いフランス語板をずっと使っています。どうも編集者のミスか怠慢じゃないかと思うような小部分でしたがカタログですからね。

Nelson  Zambranoのフィリッピーノ リッピ本は  Dirk deVosのロヒール本と同じくらい高価な古書になってしまっているようです 5万円以上!!
 一応、abebooksでは売ってますが512.39 ドルです。


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再度Rizzoriの件 (むろさん)
2016-11-03 21:49:08
山科様
以前集英社版のボッティチェリの作品カタログ部分がガブリエーレ・マンデルの著で、伊語Rizzori版もマンデルだったので、各国語版やどの画家についても少なくともカタログ部分は伊語Rizzori版と同じだろうと数十年来思っていました。カタログ部分が違う場合もあるということにちょっと驚くとともに、伊語版でないものを使う時は注意が必要ですね。ちなみに英国ペンギンブックス版(多分ABRAMS版と同じ)のカラヴァッジョ作品カタログ(Michael Kitson)では「真筆とすることに議論のある作品」(四角マークでは左上の4つのみ黒)となっていて、フラマリオン版とは全く逆の判定です。(伊語Rizzori版も仏語版と同じ著者でしょうか?)機会があれば集英社版、ABRAMS版、ペンギンブックス版で持っている分については、作品カタログ部分が伊語Rizzori版と別の著者であるのか調べてみようと思います。

私が今持っている伊語Rizzori版を確認してみたら、ドウッチヨ、マンテーニャ、マサッチオ、ペルジーノ、フラ・アンジェリコ、シモーネ・マルティーニ、ウッチェルロ、ブロンヅィーノ、コスメ・トゥーラ、ミケランジェロ彫刻の10冊でした。今後イタリアに行ったら買いたいと思っているのはクリヴェッリ、ポントルモ、チマブーエ、アンドレア・デル・サルト(もしRizzoriで出しているなら)などです。

ボッティチェリについてはLightbownの2巻本(1978英語版)のVol.2全作品カタログ、ペルジーノについてはVittoria Garibaldiの全作品カタログ(1999伊語版)を持っているので、集英社版、Rizzori版と合わせて活用しています。フィリッピーノ・リッピについてはLuciano Berti&Umberto Baldiniの著書(1991伊語版)を持っていて、作品カタログは載っているのですが、全ての図版が載っているわけではなく、また、全作品を網羅しているかも分からないので、Nelson & Zambranoの本が欲しいと思っています。この本は2004年当時で250ユーロでしたが、今古書で買うと5万円以上ですか。個人で買うにはちょっと厳しいですね。必要なのは作品カタログですから、芸大でコピーすれば約100ページで1000円で済むので、そのうち暇を見てコピーするかもしれません。
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山科さん、むろさんさん (花耀亭)
2016-11-09 01:33:34
超遅レス、申し訳ありませんです(^^;
お二人の濃~い真贋問題に関するRizzori本や参考本談義に、美術ド素人の私はコメントする知見も持ち合わせず、もっと勉強しなければ、と反省多々でした(^^;;
それにしても、真贋問題って研究者にとっては大問題なのですねぇ。ド素人の私は「自分の眼がどう見るか」しか考えておりませんでした(^^;;;
で、お二人のお話しから色々学ばせていただきましたが、特に...
①カタログレゾネは複数読んだ方が比較検討できる。
②藝大図書館は利用し甲斐がある。
とても参考になります。ありがとうございました!!
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Rizzori本&芸大図書館 (むろさん)
2016-11-11 01:18:58
花耀亭様
ブログ主催者にはお構いなしに読者間で勝手にやり取りしていていいのかな、と思いながら連続投稿していました。多少なりともお役に立てていただけたなら幸いです。
さて、そのRizzori本ですが、私が初めて買った西洋美術の本が集英社Rizzori版のボッティチェリ作品集(日本版解説摩寿意善郎)でした。この出会いがその後のルネサンス美術に対する姿勢を決定したようです。それ以来日本版、英語版、伊語版を問わずこのシリーズにはお世話になっています。もちろん50年近く前の出版物ですからその後の研究の進展は当然で、その後に出た全作品カタログが入手できれば併用していますが、Rizzori以外出ていないもの、持っていないものもあるので、今でも重宝しています。
カラヴァッジョのようにこの数十年間で真筆が何点も発見されている画家の場合はこのシリーズの価値はそれほど高くないと思いますが、ボッティチェリのように工房作は何点か紹介されていても真筆の発見がほとんどない場合は、今でもRizzori本の価値は十分高いと思っています。
海外旅行に行く時や国内の美術展でもそうですが、事前にRizzori本やその他のカタログレゾネを一通り確認してから出かけるようにしています。9月のウィーン、ベルリンの時の一例として、ミケランジェロの初期作品という説のある聖母子トンド(集英社Rizzori版のNo.6)がウィーンのアカデミーにあるということだったので、ボスの最後の審判やボッティチェリ工房の聖母子とともに該当ページをコピーして持っていきました。作品の良し悪しは別として、こういう事前準備をしていなければ現地でも見過ごしていたと思います。

大学図書館ですが、国立大学は大体どこでも一般の人が利用可能だと思います(芸大図書館は住所・氏名を書くだけ。私は事前登録をしているのですぐ入れます)。お近くでは東北大学の図書館はいかがでしょうか。ルネサンス美術の田中英道とか日本絵画史の長岡龍作という教授がいたのですから、美術史分野の蔵書も充実していると思うのですが。芸大図書館はどちらかというと日本美術の方が充実していて、洋書はそれほどないようです(自分の探している分野に関しての独断ですが)。Rizzori本については集英社版も伊語版も少ししかありません。雑誌に関してはバーリントンマガジンや西洋美術研究、美術史などはあります。美術展の図録はあったりなかったりです。利用される場合はネットで休館日や蔵書検索をしてから行かれることをお勧めします。なお、上野では都美の資料室や東博の資料館も利用可能(入館料は不要)ですがコピー1枚30円、芸大は1枚10円なので同じ本があって沢山コピーする場合は芸大の方が安く済みます。
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むろさんさん (花耀亭)
2016-11-12 00:36:39
なるほど、国内外の美術館に行く前にカタログレゾネのチェックは有効ですね!!実は下調べをせず、観るべきものを見逃してしまったことが何度もあるのですよ(^^;;。事前準備は必ですね!!

で、東北大学の図書館カードは持っていて、もっぱら学生閲覧用図書を借りています。専門文献は研究室所蔵なので敷居が高くて...(^^;;。でも、コピー代1枚10円なので、これからは積極的に借出しコピー作戦をしようと思います。むろさんさん、貴重なご助言と勉強苦手の私に刺激をいただき、ありがとうございます(^^ゞ
ちなみに、米国旅行時作ったフリック・コレクション図書館カードを持っているのですが、まだ使えるかどうか...??
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Rizzoliのタイトルリスト (山科)
2016-11-12 10:31:03

Rizzoliのイタリア語版が
どれだけでていたのか、知りたかったのですが、

最近ようやくわかりましたので、URLにおきました。

111もあったのですねえ。

フォーマットがちょっとおかしいですが、早く呈示するのを優先しました。

そちらで編輯してください。

 なぜか  アンドレア  デル  サルトはない。
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