花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

ローマ「da Guercino a Caravaggio(グエルチーノからカラヴァッジョ)」展(3)

2014-11-28 23:56:50 | 展覧会

さて、展示作品を紹介しよう。まずは、故マーホンの原点であるグエルチーノから始まった。オープニングは(1)で紹介したように、ベネデット・ジェンナーリの《グエルチーノの肖像》だ。
(画題は花耀亭の翻訳なので、誤訳があってもお許しあれ)

■ベネデット・ジェンナーリ(Ⅱ世)(1633-1715)

・《グエルチーノの肖像》ボローニャ国立絵画館(マーホン寄贈)


ジェンナーリの肖像画を観ると、確かに斜視である。一説では、グエルチーノの自画像を模写したもの、との説があるが、そうであればなおさら画家の眼差しのありようが伝わってくるような気がする。

グエルチーノの本名はジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ(Giovanni Francesco Barbieri) (1591 - 1666)。エミリア地方のチェントに生まれる。斜視のためグエルチーノと綽名される。17歳ごろにはボローニャに出てルドヴィーコ・カラッチと出会い、カラッチ派の影響下で描いていた。後にローマに出て、ボローニャのルドヴィーシ家出身のグレゴリウス15世に用いられるようになる。が、教皇の死後、チェントへ戻ることになる。

蛇足だが、ローマの「カジノ・ルドヴィーシ」はカラヴァッジョの天井画だけでなく、グエルチーノの天井画《オーロラ》でも有名だ。

■グエルチーノ(ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ)(1591-1666)

・《ウェヌス、マルスとクビド》エステンセ絵画館(モデナ)
 

今回の展覧会のメインの作品である。マルス(マーキュリー)とウェヌス(ヴィーナス)の間にクビド(キューピッド)が居て、観る者に向かって指さし、恋の矢を放とうとしている。豊満な肢体のウェヌスと言い、多分パトロンの嗜好に合った作品なのだろうなぁ、などとニンマリ眺めてしまった。ヴィーナスの皮膚やもマルスの鎧には画家の力の入れ具合を見たような気がする。

・《聖トマスの懐疑》ヴァティカン絵画館


キリストの傷口に指を入れてみる聖トマスに、思わず、カラヴァッジョの影響でしょ!、と言いたくなってしまった(^^;。なんだかんだ言ってもボローニャ派だってカラヴァッジョを無視できなかったはず。グエルチーノは復活後のキリストに旗を持たせる図像が多いなぁ。

・《時間、マルス、ウェヌス、クビド》エルミタージュ美術館


イタリア語が「Tempo」になっていたから「時間」と訳したが、私的にはクロノスよりもカイロスを描いているような気がするのだがどうなのだろう?クビドに網を仕掛けて捕まえているが...?まぁ、恋の狩猟には待つ時間も大切だし、捕まえるチャンスも必要だし、やはり「時間」が必要なのかも?うーん、美術ド素人には解題は無理なようだ(^_^;)。で、この作品の前に立つとカラヴァッジョ的な明暗法を強く感じるのだ。
追記:ウルカヌスにマルスが網で捕まった話をクビドに置き換えているのかもしれないが、でも「Tempo」はウルカヌスのこと?ウェルカヌスは鍛冶屋・火山の擬人化だし、不思議??)(再追記:網では無くヴェールを剥ぐだったら、「時は真実を明らかにする」ということで、時間のクロノスだ!!)


・《ベルナルディーノ・スパーダ枢機卿の肖像》スパーダ絵画館(ローマ)


素晴らしい肖像画だと思う。枢機卿の個性が画面からリアルに立ち上がってくる。何よりも薄色の目の虹彩が際立ち、枢機卿の知的で冷たい情熱のようなものが伝わってくる。スパーダ絵画館のコレクションは枢機卿の集めた作品が基になっている。私も訪れているがボローニャ派作品が多い。グイド・レーニも枢機卿の肖像画を描いているが、私的にはグエルチーノに軍配を上げたい。絵画館にはボッロミーニの遠近法的トンネルがある(中に入ることができた!)。

・《本を持つ老人》エステンセ絵画館(モデナ)

見た瞬間、リベーラみたいだと思った。カラヴァッジョ風だったり、リベーラ風だったり、当時の流行を取り入れていたのかもしれない。ちなみに、「Vecchio」は古典古代の寓意かもしれないが、簡単に老人と訳した。

・《アビシャグの息子を復活させるエリシャ》ミラノ教区博物館

・《つばめの聖母》ボローニャ国立絵画館


聖母が人差し指につばめをとまらせて、幼児イエスに「ほら」っと見せている微笑ましい作品だ。

・《ペルシャのシビラ》カピトリーニ美術館(ローマ)

・《カルトーシュを持つシビラ》ボローニャ国立絵画館

・《アムノンとタマル》エステンセ絵画館(モデナ)


ダビデの子アムノンとタマル(旧約聖書:サムエル記下第13章1節-39節)の物語だ。アムノンがタマルに言い寄る場面だと思う。で、観た瞬間、カラヴァッジョの《女占い師》を想起。カラヴァッジョの影響大だと嬉しくなった(^^;;


カラヴァッジョ《女占い師》カピトリーニ美術館

・《ロザリオの15の謎と花輪を支える二人の有翼のプット》・サン・ジョルジョ教区教会(チェント)


チェントから出展されていた素晴らしく豪華な祭壇画絵画タベルナクルムである。で、中央二人は天使ではなく「due Putti」になっていた。

・《聖カルロ・ボッロメーオの奇跡》サン・セバスティアーノ教区教会(チェント)

ミこちらもチェントからの出展。ミラノのサン・カルロ・ボッロメーオですね。画像が見つけられなかったけど、構図は向かって左上から右下への斜め構図で、なんと右下には可愛い猫が描かれていたのだ♪
追記】:ボローニャのFさんから画像紹介があり、画像を追加UPした(感謝です!)。小さいけど猫が見える。

以上がメモを基にまとめた出展作品だが、ご覧の通り、チェントからの出展は2作のみだったのだ。



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