花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

「華やぐ女たち エルミタージュ美術館展」(1)

2005-08-22 01:28:17 | 展覧会
お盆帰省のついでに岩手県立美術館で「華やぐ女たち - エルミタージュ美術館展」を観てきた。エルミタージュで観た作品もあったが初めて観る作品もあり、お盆初日の空いた館内でゆっくり楽しめた。
http://www.ima.or.jp/03_exhb/kikaku_dtl.asp

さて、やはり私的に惹かれたのはルネサンス・バロック作品だ。ティツィアーノやクラナッハの理想化された女性像はそれぞれの時代の社会性もあるだろうが、やはり両巨匠の好みなのよね、などと観てしまった(^^;。一目見ただけでわかる個性と言うべきなのだろう。ティツィアーノの女性の腕には後世の筆が入っているそうだが、ベネチア趣味の太め女性の腕はそれにしても太い。クラナッハの「発育不良」(少佐談)とは実に対称的だ(笑)
アングィソッラ作品の写実的な衣装装飾の描写は見事だった。豪華な刺繍装飾に眼を見張ってしまった。アングィソッラはクレモナの女性画家で、フェリペ2世の宮廷画家でもあり、ヴァン・ダイクも会いに行ったという実力派だ。ロンバルディアの画家として、その自然主義的作風はCARAVAGGIOにも影響を与えており、去年のMET「Realityの画家たち」展でも何点か紹介されていた。

で、バロックは私的に一番充実だった。リベーラ(?)「音楽の寓意」はCARAVAGGIOの影響が色濃く見え、光と闇による陰影、衣装の質感、肌の描写など実に似ている。特に眼を惹いたのはのはブラウスのほつれた糸(袖紐?)で、きらりと光が当たり、画面を引き締めていた。月桂樹の冠を頭にいただきラッパと本を持った女性はフェルメールの「絵画芸術」にも登場しているクリオだが、この時代、このような寓意画が流行したと思われる。
ところで、この作品は展示にも図録にもホセ・デ・リベーラ作と記されているが、専門家の間では疑問視されているそうだ(^^;。工房作、或いは模作、他画家の可能性もあるとか。帰属問題は難しい。が、私にとってはカラヴァッジェスキ作品としてとても興味ある作品だった。
リベーラ(?)作品の隣にはスルバランの「聖母マリアの少女時代」で、ムリーリョ風の清楚な愛らしさのなかにもきりりとした表情に精神性を感じる。マリアは縫い物を膝に天を仰いで祈っている。組んだ手の指、左手の親指が構図の中心となるようで印象深い。緑の針刺し用クッションの質感が素敵だ。スルバランはプラド美術館でも印象的な作品を何枚か観ているが、やはりCARAVAGGIOの明暗を感じる。図録によるとスルバランの画風が時代遅れになり、当時台頭中のムリーリョ風を取り入れたとか。要するにCARAVAGGIO風が時代遅れになったということじゃないの?と少々ムッとした花耀亭である(^^;;
ちなみに、ドレスデンのアルテ・マイスターでリベーラ(真作)「囚われの聖アグネス」を観た時ムリーリョ風だなぁと思った。ところが、反対にムリーリョがリベーラ風なのだ!スペインの画家たちの画風の変遷と影響の相互関係は複雑そうだが面白い。

(次回に続く)