家について浴衣を片付けて、お風呂にはいるとRinNonは宿題を
やりはじめた。
根っこはまじめで、海外暮らしのせいか反抗期らしいものがないままきている
2人なのだから、やっぱりまじめに宿題もするのだ。流されてるだけで。
(海外に暮らすと反抗期がないというのはぼくの持論だ。またそれはどこかで)
Rinはかなり進んでいて、今日の日付でやっておくべきラインに達していた。
日記もあと何日か残すだけでよかった。
Nonはそういかなかった。あまりきつく言ってもしかたないので、そのままそっと
宿題をするままにさせておく。
分数の足し算はすっかりできるようになっていた。ようは量をこなしていない
だけなのだ。2人の学校では、日記が10日分でよくって数学が毎日やるように
プログラムされている。数字で一日を評価しようというのだろうか。
それはそれでGDP2位に躍進するだけのことはある。数値評価の国。
22時になるとRinがとても眠そうにしていた。Nonにつきあって起きているのが
つらそうだ。彼女も彼女で実はマイペースなのだ。
先に寝てもいいよ、というと うん と言って歯を磨いて3Fに上がっていった。
Nonはそのまま宿題をやっている。彼女もマイペースなので、相棒が寝ても
あまり気にならない様子で、プリントを続けている。
結局Nonは23時すぎまでがんばって電池がきれたように動きがにぶく
なって、ぼくの「寝るかい?」という提案にこくんとうなずくと、もぐりこむ
よにRinの隣で眠ってしまった。その間、ほんの数分だった。
2人が寝たあと、ぼくはテレビを小さな音でつける。
カップヌードルのCMでJamiroquaiが自分の歌を自分のPVで
替え歌で歌っている。
Jamiroquai
ジャミロクワイになにさせんねん と思ったけれどそれはそれで
出来の悪くないCMだった。
ジェイ・ケイは歌詞を変えて日本語で「ハラヘッタ、ハーラヘッタ 」
と歌っている。
Jamiroquai - カップヌードルがいいよ~
原曲はこんな感じなのだ。
And nothing's going to change the way we live
Cos' we can always take but never give
And now that things are changing for the worse,
See, its a crazy world we're living in
And I just can't see that half of us immersed in sin
Is all we have to give these -
Futures made of virtual insanity now
Always seem to, be govern'd by this love we have
For useless, twisting, our new technology
Oh, now there is no sound - for we all live underground
And I'm thinking what a mess we're in
Hard to know where to begin
ここのところの物事はもっと悪い方へ変わりつつある
発狂した世界なのさ、僕たちが暮らしてるのは
僕が全く納得行かないのは罪に手を染めてる半数の奴らに
僕たちみんなが捧げなきゃいけないことさ、
この仮想狂気でできた未来、いつだって振り回されてるのさ
用無しのねじくれたニューテクノロジーにご執心な人類にね
もう音もない、みんな地下で暮らしてるからだ
考えてるんだ、僕たちはなんて酷い混乱の中にいるんだって
替え歌でハラヘッタと歌うことが彼らの逃避なのか脱出なのか
それはよくわからない。
けれど肩の力が抜けた感じで歌っているのはかわらない。
この曲がでたのは1996年。すでに14年を経過して、なにかがまた
変わったのかもしれない。
ともかくは世界は14年たっても住みよくなったわけでも、みんなの
心の距離が縮まったわけでもなく、むきだしの感情をぶつけやすく
なったというただそれだけなのかもしれない。
そうだとしたら、ハラヘッタと替えて歌うジェイ・ケイのほうが
なんだか救いがあるようにすら思えてくる。
そう、カップヌードルを夜中に食べたり、CMをみて目を丸くする人の
大半はacid jazzってなんだっけ?というくらいの気分なのだから。
そうであるなら、RinNonが眠い目をこすりながらでも理解して一歩
ずつそれぞれのペースで宿題をこなす意味もある。