山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

TPPについて(17)-農業の経営規模拡大の行き着く果ては?

2013-05-13 | 農業

 農業の生産規模拡大を図り、経営基盤を強固にするといった方針が議論されております。そのためには、農地の集積化や株式会社の参入などの規制緩和が不可欠であるといった論理になります。これらの議論に対する私の考えは、。「TPPについて(3)-経営規模拡大で対抗できるか?」などで述べてきておりますが、今回は視点を少し変えて、実際にこのような農業が実現した場合を想像してみましょう。

 実現の手段として、先ずは個別農家、あるいは株式会社が多くの農地を購入乃至は借り入れるなどして耕作面積を拡大していくといったことが考えられます。設備投資など多くの資金が投入されますので、これを回収するためには売上高の増大とコストダウンを目指します。売上高の増大には、収穫量を増やすことと付加価値を高くすることといったことが対応するでしょう。収穫量の増大には、自ずと限界があります。付加価値を高くするためには、加工販売や流通まで乗り出すこととなります。しかし、これは従来の産業を他者から取り込んだだけですから、全体的に見ればプラマイゼロですし、ここまでくると農業による利益よりも加工販売の利益の方が大きくなるでしょう。そうすると、もはや農業とは言えないのではないでしょうか。また、コストダウンに関しては機械化、省力化の徹底が図られるでしょう。このことは農作物管理の希薄化となって現れます。収穫量と肥料投入量、農薬使用量、農作業などが金銭評価され、利益の極大化が図られることとなります。利益が極大化されるならば、多量の農薬が用いられるかもしれませんし、除草剤がコストアップの要素となれば雑草だらけになってしまうかも知れません。人手で除草などはもってのほかといったこととなります。例えば、稲作ではヒエが多く発生します。基本的には除草剤で対応するでしょうが、最終的には人手で取らなければなりません。大規模経営の場合には、人手でヒエ取りすることは不可能ですから、除草剤に頼るか、放置するしかありません。放置すれば、流れヒエの原因となり他の農地に迷惑をかけます。何れにしても大規模経営からは環境保護といった考えは出てきそうにありません。

 他の手段としては、個々の農家が共同して集団営農を行うといったことがあろうかと思います。しかしながら、社会主義国での失敗例を引き合いに出すまでもなく、賢い方法とは言い難いように思います。既に営農集団は全国に多数存在しております。このような緩やかな結合ならば機能していく可能性はありますが、集団営農による大規模化は、自由主義国においては不可能でしょう。

 更には、大規模経営によって利益が上がれば良いのですが、上手く行かない事だってあるでしょう。始めたは良いのですが、引き際がまた大変なことになってしまいそうです。集積化された農地をそのままで引取る新たな経営母体があれば未だしも、多くは切り売りされるのでしょう。一旦離農した方々が元に戻るようなことは考え難いものがあります。結局は耕作放棄地になりはしないか、最悪は農地が転用されて商業地として高値で売買されることになりはしないかといったことも懸念されます。

 このように大規模化すれば農業問題は解決できるといった考え方には疑問を呈さざるを得ません。さはさりながら、規模拡大化は一つの大きな流れとなることは必然でしょう。問題は規模拡大化のためには、他は犠牲にしても良いといった考え方が出てくるのが困ります。「農地の集積化を邪魔をしているのが兼業農家だ!」だから強制的に農地を取り上げてしまえみたいな議論にならないように願いたいものです。

 「兼業農家は是か非か?」でも述べておりますように、私は兼業農家にも一定の役割があると考えております。「経営規模拡大」、「攻めの農業」、「集約化農業」、「趣味の農業」などなど多様性の高い農業のあり方を認め、互いの特色で相互補完することができてこそ足腰の強い農業となるのではないかと考えます。

<参考> 「農地の集約化と生産性向上の限界


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