1/2に羽田空港で航空機衝突炎上という誠に痛ましい事故が発生しました。航空機事故調査委員会による原因究明が待たれるところですが、どうやら海保機が管制の指示に従わず滑走路に進入したことが原因であろうと報道されております。
また最近の報道では「滑走路誤進入検知システム」の警報に管制官が気付かなったのではないかとされております。同システムでは滑走路に航空機や車両等が滑走路への誤進入を検知した場合には滑走路が黄色の点滅表示、航空機等の対象物が赤色点滅するようになっているとのことです。この場合にブザーなどの警報音が鳴動していたのかは報道の範囲では不明です。
しかしながら以前、監視制御システムの開発に従事しておりました経験上、重要な監視項目の状態にアラームが発生した場合には、表示色を変更するとともに点滅(フリッカー)させることにより監視者が即座に認識できるようにします。それと同時に警報音を鳴動させアラームが発生したことを知らせます。表示の点滅及び警報音の鳴動は監視者が確認ボタンが押下されるまで継続するようにするのが通例でしょう。
「滑走路誤進入検知システム」にとって誤進入は一丁目一番地ですから警報音が鳴動しないようなシステムとなっていることは考えにくいと思います。ですから管制官が気付かなかったという報道に対しては俄かに信じがたいものがあります。
それでも管制官が気付かなかったのであれば、当該監視システムに問題があったと言わざるを得ません。そもそも誤進入を検知できなかったのではないか? それならば監視履歴を調べればすぐにでも分かることです。
監視履歴を調べて誤進入を検知した履歴がロギングされているのに監視者が気付かなかったという事象が発生したというのであれば、その監視システムはそもそも意味がない代物だったということです。
管制官のような忙しい仕事をしている人に画面を注視していろなどといったことは無理でしょう。当然のことながら警報音を鳴動させるシステムとなっていなければならないでしょう。
開発打ち合わせの席上、ユーザーからブザー鳴動を有り/無し設定できるようにできないかと要望されたことはありました。しかし、監視システムの役割から言ってそのような要望は撥ねつけてきました。設計上そうすることも可能ですが、この辺りは設計者の矜持だと思っておりました。
ただシステムを導入したばかりで未だ安定的に稼働できないといった場合に警報音が頻発すると通常業務に支障がでると泣きつかれれば、現場担当者はハード的に鳴動しなくするといったことがないとは言えません。
勿論、今回の場合がどうであったかは知る由もありませんが、システムが正常に機能していれば警報音が鳴動しないとは考えにくいのです。管制官が誤進入を認識できた時点でJAL機にゴーアラウンドをかければ事故を防ぐことが出来たのです。
折角「滑走路誤進入検知システム」が導入されているにも関わらず、有効に機能しなかったのは返す返すも残念なことだと思います。
<2024/1/7 追記>
「羽田管制塔に「誤進入」監視機能、事故当日も作動…国交省「画面を常時凝視するものではなかった」-読売新聞オンライン」によれば、このシステムは「「滑走路占有監視支援機能」と呼ばれる。着陸機が接近しているのに離陸予定機や横断機が滑走路に入った場合、管制官の前にあるモニター画面の一つで滑走路全体が黄色で点滅し、航空機も赤く表示される。音声などによる警告機能はないという。」ということで、警報音等の鳴動が無いとのことです。
また「「管制官が自分の目で見て指示する際の補助的な表示であり、常時その画面を凝視することを求められる性質のものではなかった」と説明。ただ、羽田では6日から専属の担当者を置き、画面を常時確認することにしたという。」と国交省は説明しているそうです。
この記事を読んで「えーっ!」と思わず叫んでしまいました。「管制官が画面を凝視していたら本来の仕事なんてできないでしょう!」、補助的なものであるからこそ警報音で知らせる必要があるです。警報音を耳にしたら画面で確認して適切な対応をするための情報を得るのです。それこそが支援システムの役割なのです。
更に追い打ちを掛けたのが、専属の担当者を置き画面を常時監視するとの対応策です。開いた口が塞がりません。ただでさえ忙しいであろう管制官の業務に更なる負荷が掛かるだけです。
私はかつてパイロットの夢を絶たれたとき、航空管制官になろうかと思い航空保安大学校を目指した時期もありました。しかし、調べれば調べるほど神経を擦り減らすような過酷で責任の重い仕事は私の性格上不向きであることを悟り断念したことがあります。であるからこそこの業務に携わっていらっしゃる管制官の皆様に敬意を持っております。それなのにこの国交省の弥縫策には怒りしか感じません。
先にも述べておりますように、このような監視システムで警報音が鳴らないことなど考えられません。初期設計からこのような仕様になっていなかったことを信じます。ユーザー(この場合は航空局になると思いますが)との打ち合わせで最終的な仕様が決められたと思います。この時どのような経緯で警報音をならないようにしたのか是非とも知りたいと思います。
<参 考>
「事故原因究明のためには当事者を免責にした方が良いと考えていましたが・・・」
「人間が咄嗟にとる行動について」
「ティータイム 第10話 大空への憧れ(1)」
また最近の報道では「滑走路誤進入検知システム」の警報に管制官が気付かなったのではないかとされております。同システムでは滑走路に航空機や車両等が滑走路への誤進入を検知した場合には滑走路が黄色の点滅表示、航空機等の対象物が赤色点滅するようになっているとのことです。この場合にブザーなどの警報音が鳴動していたのかは報道の範囲では不明です。
しかしながら以前、監視制御システムの開発に従事しておりました経験上、重要な監視項目の状態にアラームが発生した場合には、表示色を変更するとともに点滅(フリッカー)させることにより監視者が即座に認識できるようにします。それと同時に警報音を鳴動させアラームが発生したことを知らせます。表示の点滅及び警報音の鳴動は監視者が確認ボタンが押下されるまで継続するようにするのが通例でしょう。
「滑走路誤進入検知システム」にとって誤進入は一丁目一番地ですから警報音が鳴動しないようなシステムとなっていることは考えにくいと思います。ですから管制官が気付かなかったという報道に対しては俄かに信じがたいものがあります。
それでも管制官が気付かなかったのであれば、当該監視システムに問題があったと言わざるを得ません。そもそも誤進入を検知できなかったのではないか? それならば監視履歴を調べればすぐにでも分かることです。
監視履歴を調べて誤進入を検知した履歴がロギングされているのに監視者が気付かなかったという事象が発生したというのであれば、その監視システムはそもそも意味がない代物だったということです。
管制官のような忙しい仕事をしている人に画面を注視していろなどといったことは無理でしょう。当然のことながら警報音を鳴動させるシステムとなっていなければならないでしょう。
開発打ち合わせの席上、ユーザーからブザー鳴動を有り/無し設定できるようにできないかと要望されたことはありました。しかし、監視システムの役割から言ってそのような要望は撥ねつけてきました。設計上そうすることも可能ですが、この辺りは設計者の矜持だと思っておりました。
ただシステムを導入したばかりで未だ安定的に稼働できないといった場合に警報音が頻発すると通常業務に支障がでると泣きつかれれば、現場担当者はハード的に鳴動しなくするといったことがないとは言えません。
勿論、今回の場合がどうであったかは知る由もありませんが、システムが正常に機能していれば警報音が鳴動しないとは考えにくいのです。管制官が誤進入を認識できた時点でJAL機にゴーアラウンドをかければ事故を防ぐことが出来たのです。
折角「滑走路誤進入検知システム」が導入されているにも関わらず、有効に機能しなかったのは返す返すも残念なことだと思います。
<2024/1/7 追記>
「羽田管制塔に「誤進入」監視機能、事故当日も作動…国交省「画面を常時凝視するものではなかった」-読売新聞オンライン」によれば、このシステムは「「滑走路占有監視支援機能」と呼ばれる。着陸機が接近しているのに離陸予定機や横断機が滑走路に入った場合、管制官の前にあるモニター画面の一つで滑走路全体が黄色で点滅し、航空機も赤く表示される。音声などによる警告機能はないという。」ということで、警報音等の鳴動が無いとのことです。
また「「管制官が自分の目で見て指示する際の補助的な表示であり、常時その画面を凝視することを求められる性質のものではなかった」と説明。ただ、羽田では6日から専属の担当者を置き、画面を常時確認することにしたという。」と国交省は説明しているそうです。
この記事を読んで「えーっ!」と思わず叫んでしまいました。「管制官が画面を凝視していたら本来の仕事なんてできないでしょう!」、補助的なものであるからこそ警報音で知らせる必要があるです。警報音を耳にしたら画面で確認して適切な対応をするための情報を得るのです。それこそが支援システムの役割なのです。
更に追い打ちを掛けたのが、専属の担当者を置き画面を常時監視するとの対応策です。開いた口が塞がりません。ただでさえ忙しいであろう管制官の業務に更なる負荷が掛かるだけです。
私はかつてパイロットの夢を絶たれたとき、航空管制官になろうかと思い航空保安大学校を目指した時期もありました。しかし、調べれば調べるほど神経を擦り減らすような過酷で責任の重い仕事は私の性格上不向きであることを悟り断念したことがあります。であるからこそこの業務に携わっていらっしゃる管制官の皆様に敬意を持っております。それなのにこの国交省の弥縫策には怒りしか感じません。
先にも述べておりますように、このような監視システムで警報音が鳴らないことなど考えられません。初期設計からこのような仕様になっていなかったことを信じます。ユーザー(この場合は航空局になると思いますが)との打ち合わせで最終的な仕様が決められたと思います。この時どのような経緯で警報音をならないようにしたのか是非とも知りたいと思います。
<参 考>
「事故原因究明のためには当事者を免責にした方が良いと考えていましたが・・・」
「人間が咄嗟にとる行動について」
「ティータイム 第10話 大空への憧れ(1)」