眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ダルマさんが来ないんだ(折句の扉)

2018-05-04 21:19:43 | 折句の扉
表に人通りが絶えることはなかった。背筋を伸ばして待っていると誰も中に入ってこない。君は本を開いて退屈を紛らわそうとする。3行読み進めると自動扉が開いた。久しぶりの来客だ。久しぶりに働いて、次の来客を待った。歩いている人は多い。こちらに顔を向ける人も見える。けれども、扉は開かない。君は袖に隠れてこっそりチョコレートに手を伸ばした。ひとかじりしたところで自動扉が開く音がした。君は慌てて口を拭って出て行く。チョコレートのかけらが床に落ちて散らばっている。美味しくない。存分に味わうことができない。甘い香りをまき散らしながら、君は丁寧に接客を終えた。続いて入ってくる人はいない。

君はまた本を開く。3行進むと約束したように客がやってきて君の手を止めた。どうやら忙しくなりそうだ。そうして何もせずに待ちかまえていると誰も訪れない。意を決して本を開くが、するとすぐにドアが開く。何度繰り返しても同じだ。3行毎に客は足を運んできて君の世界を断ち切った。集中できない。「物語に入り込めない!」

嫌気がして君は本を開くことをやめてしまった。じっとしていると徐々に体が冷えてきた。袖に入ってカーディガンを羽織りかけているとすかさず自動扉が開いた。途中で出て行く君は慌ててボタンをかけ違えていた。
「いらっしゃいませ。プランはどうしましょう?」
「どうもこうもないよ」
破れかぶれの紳士を君は冷たい口調で定番のプランの中に封じ込めた。それから君は小腹が空いてもチョコレートに手を出さなかった。本も開かず、表の人々を見ていた。必要なのは誰にも悟られない動作だ。
折句の扉が開かれるべき時が訪れた。



絵の中の
オズの使いを
待ちながら
インコは独り
愛をさえずる

折句「エオマイア」短歌




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