眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

ドラゴン寿司

2023-07-12 23:55:00 | ナノノベル
 カウンターにかけると一間竜ほどの距離で大将と向かい合った。

「二枚銀を」

「あいよー」

 まずは小手調べに二枚銀だ。

「へいお待ち、二枚銀です」

 よい腕だ。早く、正確で、味も申し分ない。

「銀矢倉と銀冠を」

「あいよー」

 順番だ相性だと気にする者もいるが、寿司は自分の好きに頼むのがいいだろう。

「へいお待ち、銀矢倉と銀冠です」

 くーっ、利かせやがったな! いくら山葵が強く刺激してきても、表情なんて変えるものではない。寿司はデュエルではないか。安易に弱みは見せられない。

「腰掛け銀と早繰り銀を」

「あいよー、銀がお好きですかい」

「まあそうね」

 今日は銀尽くしといこうじゃないか。

「へいお待ち」

 おっと、これは何だ?

「カニカニ銀、こちらはサービスで」

「あー、これはバランスが取れてますな」

 なんて素敵な店だろう。調子に乗って行くか。

「銀多伝を」

「……」

「金目鯛ですな」

「銀多伝を」

「お客さん、申し訳ない。銀が切れてしまって」

「何?」

 ウォォオォォーーーーーーーーーーーー!

 その瞬間、私は燃え上がる龍となり大将を丸飲みした。

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