昔々あるところに、というのは、元々は何もないようなところでしたが、いつしか草が生え、小さな花が咲き、蝶や猫たちがやってきて、色んなものが生まれていった。そういうところ、それは奇跡のようなところとも呼ぶことができました。そんなあるところに、おじいさんは鬼のような顔をして、おばあさんは仏のような顔をして暮らしていました。
おじいさんは懲りもせず山に芝刈りに、おばあさんは清々しく川に洗濯に行きました。おばあさんが川に行くと何やら上流から流れてくるものがありました。
どんぶらこ♪
どんぶらこ♪
「何だろうか?」
おばあさんは身を乗り出して流れてくるものを観察しました。人か? いいえ人ではありません。獣? いいえ獣でもありません。角度を変えて見ると南瓜のようにも見えました。
「ああいう乗り物か」
だとしたら舟であろう。一通り推測を終えるとおばあさんは洗濯に精を出しました。