眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

コロ

2009-10-27 17:02:25 | 猫の瞳で雨は踊る
私の席の隣の席には、新しく陽気な人が来ていてね。
笑い声が、そこを中心に世界を席巻するように開いていたんだ。
私はそこには戻らずに、柱にもたれたまま何かが始まるのを、あるいは何かが終わるのかを待っていたんだ。
最初から今日は、そこには戻らなかったんだ、最初からここにいたよ。
コロ。
散歩に出かけた時のこと、私はキミについていくことができなかった。
街に出るといったのに、キミはずっとずっと歩いて歩いて歩いて止まらなかった。
引き返すことを知らないキミは、街を出て遠くへずっと歩いて行った。
私はついていけずに、泣いていたのに。
コロ。
あれから何度生まれ変わった?
私の前に現れもせずに、どうして、どうしているの。
コロ。
あの笑い声が、怖いよ。私の居るべき場所から聴こえてくる陽気。
柱にもたれたまま、何かをしているふりをしているのに疲れたんだ。
どうしようもなくぼろぼろなのに、何も考えてないような形をとって。
その努力は、誰のためなのか。
私はあの時のキミが歩いたように、世界に出て行くよ。
新しい世界に出て行くために、古い世界を出て行くよ。世界は一つじゃないものね。
もうすぐ、先生が。
私は、近づいた。左から二列目の前から二番目辺りの自分の席。
そこには誰かがいる、そこには他人の服がかかっている、そこにはもう……。
もうどこでもいいんだ。どこでもいいんだ。
私が座った場所が、きっと私の場所になるのだろう。
コロ。
あれから何度生まれ変わった?
私の前に現れもせずに、どうして、どうしているの。


*


「ねえ、ノヴェル。コロってだれよ?」

眠りについた猫の耳元に、マキはささやきかけた。
けれども、猫は新しい夢の中で新しい執筆の準備を始めているのだった。

----人は死んでも生き返るか?
妙な意識調査か何だかわからないものが、後を絶たない。

「なめるなよ」
感情に任せて、マキは鉛筆を動かした。

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