昔々、あらゆるところにおじいさんとおばあさんがいました。おかげであるところには、おじいさんとおばあさんがいたと言えました。おじいさんは仇討ちにでも行くように芝刈りに出かけ、しばらく戻ってきませんでした。おばあさんは心を整えて洗濯をします。そこは川でした。
どんぶらこ♪
どんぶらこ♪
と上流から大きな桃が流れてきました。伝説の前にいるのかもしれない。おばあさんは不思議な予感を覚えて身を震わせました。今まさに伝説の前に立ち会うのかと思えば、流石のおばあさんも冷静ではいられなかったのでした。匂いを嗅ぎつけて犬がきました。きたか、とおばあさんは思いました。猿がきました。猿もきたか、とおばあさんは思いました。アヒルがきました。アヒルもきたか、とおばあさんは思いました。おじいさんがきました。
「おじいさんもきたか」
とおばあさんは声に出して言いました。おじいさんの後ろからいかにも賢そうなカワウソがきました。カワウソもきたか、とおばあさんは思いました。風呂敷を持った鬼が突然現れました。ついには鬼まできたか、とおばあさんは思いました。鬼は大きな桃を風呂敷に包むとものすごいスピードで去って行きました。
「おばあさんあれは?」
おじいさんは伝説の歪みを見送りました。
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