眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

玄関先で/キャップをあけておく

2022-06-18 02:34:00 | デリバリー・ストーリー
 5キロほど背負うと少しふらつくのでバランスに注意が必要。詳細欄には「キャップをあけておく」とあったが、よくわからないのでとりあえず無視する。コンビニでのピックはいずれにしろ近所だ。ほどなく川沿いにある小さなマンションに着くとインターホンを鳴らした。
 女性の声で返事はあったがオートロックは解除されない。しばらくして1階の部屋からおばあさんが出てきた。おばあさんがゆっくりと歩いてきて、自動ドアが開いた。

「何か注文していますか?」
 心当たりがないようなので、僕は不安になった。
 名前を確認すると間違いはないようだ。

「息子が頼んだのだろうか?」
 家族がいればそういうケースも考えられた。

「今家にいらっしゃいますか?」

「あれは今は東京に行っとる」
 そうか。そういうことか。
 僕は飲料の入った袋をおばあさんに見せた。

「キャップあけてくれた? 私手がわるいから」

「まだ何もしてません」

 袋の中には大小あわせて7本の飲料が入っていた。すべてのペットボトルのキャップをあけてから、軽くしめておいた。

「ありがとうございます!」


(ケチャップを2つもらってきてください)

 僕は昨日完全にスルーした詳細欄のことを思い出した。
 そうだ。
 メッセージは、誰かのために送ることもできるのだ。

 配達完了!


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