何も言わずにきみは海をみていた。大きく青く果てしない海だった。きみは僕をみずに海をみていた。僕は何も言わずに海をみていた。海を通してきみの声が聞こえてこないか耳を澄ましながら。言いたいことはあるはずだった。つれ出したのはきみの方だったのだから。きみと僕の前には壮大な海だけが広がっている。聞こえてくるのは海の声ばかりだった。ずっと遠くに船がみえた。小さいのか大きいのかわからない。本当は船かどうかさえもわからないのだ。去るのか戻るのか遠すぎてまるでわからない。どうでもいいと思えるほど、ずっと遠くの風景にすぎなかった。だんだんと自分自身もとてもちっぽけな存在に思えてきた。いつからここにいるのだろう……。何も言わずにきみは海をみていた。
約束の
昨日は遠い
遠い過去
海辺のきみを
振り切った過去
(折句「焼き豆腐」短歌)
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