眠れない夜の言葉遊び

折句、短歌、言葉遊び、アクロスティック、夢小説

Good Job

2012-08-14 01:44:48 | 夢追い
 冷蔵庫の中には飲みかけの、あるいは作りかけのアイスコーヒーが入っていて、客に出せばいいのか自分で飲んだ方がいいのかと迷っている余裕はすぐになくなった。「スーパー和食」新しく始まったメニューについて、客が相談し合っているが僕はまだその中身について理解していなかった。選べるメニュー、鳥のから揚げ、白身魚のフライ、海老の天ぷら……。「もう1人いますので」もう1人の従業員に訊いてみると言ってその場から逃げた。トモは冷蔵庫から種々の食材を取り出して自分の食事を作るのに夢中だった。

「お客さん来てるよ」
 メニューの整理ができないまま、次々と新しい客が訪れて席を占めていた。あたふたする中、気がつくと目の前に一万円札が突き出されていて、その向こうには大男が立っていた。大きなお金は対応できないと言っても大男は引き下がらず、券売機を揺らし始めた。

「やめてください。倒れます」

 倒れます、倒れます……。次第に声が出なくなったのは大男の手が機械から離れて今度は僕の首を締め上げているからだった。 助けてくれたのは常連の客で、今は忙しさを見かねて店の仕事を手伝ってくれている。和食の載ったトレイを持ち、右往左往しているが結局は目的地を発見することができず帰ってくる。

「やっぱりわからん」

 混乱の最中、僕は自分が裸であることを思い出して仕事に集中できなくなっていた。今、女性客がやってきたら大変だ。せめてパンツだけでも履かなければ落ち着かず、冷蔵庫の下や、食器棚の上や、あらゆる考えられる場所を探したけれど、ありそうな場所にはそれは見当たらなかった。
 カウンターの上には適当な料理が並んでいるように見えた。

「作りすぎでは?」
 料理人は何も答えない。もはやわけがわからないのだ。

 トモがラーメンを1つ完成させたが、それはまだスープを入れ忘れている様子で、彼も冷静な顔の裏で少なからず混乱しているのかもしれない。こちらがしっかりしなければ、そう気持ちを切り替えると新しい視点が生まれたためかようやくパンツを見つけることができた。
 スープの場所をトモに訊くとそれは汁なしラーメンだからそれでいいということだった。完成品を手にして客の元へ急ぐ。客のテーブルの上は既に何者かによって運ばれた料理で埋め尽くされて、少しの置き場もなかった。
「しまったな」
 客は小さな声でつぶやく。下に置いてくださいと言う。テーブルの下、通常は本や荷物を置くためのスペースがあった。零さないように、恐る恐るその場所にラーメンを運ぶ。汁がないことが幸いだった。


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