ぼろや食堂の看板は朽ち果てて、傾いている。それを立て直す体力は、もはやこの食堂には残っていない。貧乏灯りがちかちかと止むことがなく、店の中は寂れた空気だけが席を占めているようだった。
「おーい。こんちは!」
「こんちは! こんちは!」
1度呼んだだけでは無人かと思われるが、5度ほど呼びかけると奥から三角巾を巻いた老婆が出てきた。
「兄ちゃん。元気だね」本当はふらふらだったけれど、元気だと言われるので少し元気になった気がする。猫冷えの体を温めたくてラーメンを頼んだ。
「お待たせ! 札幌八番ね」お婆さんが、何が面白いのか笑いながらラーメンを運んできた。
「一番だけが、偉いんじゃあありません」なおも、高笑いをしながら、お婆さんは幕の奥へと姿を消した。
麺を啜る音、そして忘れた頃に、時々雨漏りのような音がした。けれども、それは催眠療法師フランサの奏でる不規則なメトロノームの調べだった。
「おーい。こんちは!」
「こんちは! こんちは!」
1度呼んだだけでは無人かと思われるが、5度ほど呼びかけると奥から三角巾を巻いた老婆が出てきた。
「兄ちゃん。元気だね」本当はふらふらだったけれど、元気だと言われるので少し元気になった気がする。猫冷えの体を温めたくてラーメンを頼んだ。
「お待たせ! 札幌八番ね」お婆さんが、何が面白いのか笑いながらラーメンを運んできた。
「一番だけが、偉いんじゃあありません」なおも、高笑いをしながら、お婆さんは幕の奥へと姿を消した。
麺を啜る音、そして忘れた頃に、時々雨漏りのような音がした。けれども、それは催眠療法師フランサの奏でる不規則なメトロノームの調べだった。