ー商人が儲けるのは武士が禄をもらうのと同じー
渡部
「梅岩先生は二男でしたね。だから家を継いだ人ではないのでしょう。」
石田
「ええ。自分は家の政(まつりごと)には責任がないといっています。その
上で独身を通してこの道を極めてみようと覚悟披露しています。」
渡部
「独身だから直系の子孫はいないわけですが、しかしその思想は日本人
中で生き続けました。げんだいしそうから見ますと、渋沢栄一は石門心学
は知らなかったけれども、やろうとしたことはその150年くらい前の梅岩
先生と同じだったと私は思うんです。」
石田
「ほう、渋沢栄一さんが梅岩先生と同じことを」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/fb/8428643c3bdafc5bb7774c04dff0cb57.jpg)
渡部
「梅岩先生の頃は士農工商といって、商は一番下に置かれていたでしょう。
梅岩先生は、そういう商人の意識を高め、商人にプライドを持たせました。
決して下に見られるようなことはない、士農工と同じだと。「商人が商売
をやって儲けるのは、武士が殿様から禄を貰うのと同じことだ」と喝破し
たんですね。考えてみれば確かにそうなんです。いや、殿様というのは
百姓から取り上げて自分の家来に配っているだけだから、商人の方が
立派だといってもいい。大阪や京都の商人が梅岩先生に惹かれた理由は
、そういうところにもあると思います。」
石田
「梅岩先生はそこまであえて言わなかっただけですね(笑)」
渡部
「言えばやっぱり武士から怒られますから、武士に劣らないというところ
で留めているわけです。(笑)」
石田
「もちろん梅岩先生は、商人が一方的 い金儲けをすることを勧めたわけ
ではありませんでしたね。商道の本質である勤勉、誠実、正直 に立ち返
り、仁義礼智を備えれば、お客様からの信を得て商売も繁盛することを
説きました。」