2012年の米大統領選挙に落選した共和党大統領候補ミット・ロムニー氏(Mitt Romney)はその後どうしているのだろう?
彼は(多少)普通の人に戻ってきたように見える。米国の代表的ソーシャルニュースサイト「レディット(Reddit)」のユーザーmkb95さんは、最近カリフォルニア州サンディエゴ市北部のラホヤ(La Jolla)でロムニー氏を見かけたという。その証拠として、ボサボサの髪でイライラした様子のロムニー氏の写真を同サイトに投稿した。また情報通のツイッター(Twitter)ユーザーも、ガソリンスタンドにいるロムニー氏を発見したようだ。
「地元のガソリンスタンドでのロムニー氏、疲れはてて、くたくた」といったタイトルの写真は、多くの人の興味を引いた。
「ロムニー氏がタンクに給油している3分間に、私はうまく彼の話を聞くことができた」とmkb95さんはコメントを寄せており、「ロムニー氏は、私が住んでいるラホヤにある自宅に滞在しているようだ」と綴っている。サンディエゴ北部のラホヤ地域は、全米有数の高級住宅街だ。富豪として知られる共和党の大統領候補だったロムニー氏も、ここに何軒目かの家を構えている。
そして、このガソリンを給油しているロムニー氏の写真は、白熱した議論の火付け役となった。
「これほど短期間で、世界で最も強い国である米国のリーダーになれるかどうかというところから、普通の人と同じように自分でガソリンを入れる人に変わるとは、かなりびっくりした」とレディッター(Redditor)のagwayclerkさんはサイトに書き込んだ。「ロムニー氏に、誰か他の人に給油させるだけの経済力がないわけではないだろう。しかし、オバマ氏が夜中にガソリンを入れるために、スタンドの周りをジャンクフードを持って普段着で散歩しているのは考えられない」と綴っている。
ロムニー氏は推定2億5000万ドル(約200億円)の資産を持ち、全米で上位3,000人内にランクされる富豪だが、彼にそこまでの価値があるのかとからかう投稿もサイトには寄せられた。
「落選した今こそ、新居を購入して暇になった時間を過ごしているんだ!」とあるレディッターが投稿した。
「そうだ。ヤツは大統領選で落選した」と別のコメントが寄せられた。「しばらくの間、そっとしておこう。お金の山で涙をぬぐうために暫し時間が必要なんだ」
「他人の雇用創出について選挙運動をしていたくせに、彼のためにガソリンを売ってくれる人はいないから、ロムニー氏は自分でガソリンを入れているんだ」というコメントもあった。
「勤勉なアメリカのガソリンスタンドのスタッフから仕事を取りあげている。とんでもないやつだ」と皮肉なレディッターは書いている。
しかし、ロムニー氏を心からそっとしておくように求めるレディッターもいた。「勘弁してやれよ。ロムニー氏が好むと好まざるにかかわらず、共和党は彼らの苦悩、失敗、非能率性をロムニー氏のせいにしようとしている」とあるレディッターは書き込んだ。「最初の時点であまり好かれなかったことを考えると、ロムニー氏は究極のスケープゴート(犠牲者)だ。一時期はロムニー氏を仲間や同僚だと見なしていた人ですら、今では彼を嫌っている場場合が多い。大きなマイナス効果をもたらしているからだ」と書いている。
落選したロムニー氏が、論争の的になるような発言をすると、大物の米共和党員の中には元大統領候補であるロムニー氏から離れる者も出てきた。
ロムニー氏は最近の集会で、支持者に対して選挙での落選について釈明した。オバマ大統領が女性層、ラテン系、その他の少数民族に「贈り物」を与えて大きな支持を得たと述べたのだ。
「例えば、若者たちにとって大学ローンの金利免除は大きな贈り物だった」とロムニー氏は裕福な支持者に語った。「また避妊具の無料配布は女子大生らにとって大きかった。そして、オバマ政権が推進する米国の包括的な医療保険制度改革である『オバマケア』も、彼らに大きな贈り物をもたらした。なぜなら、26歳未満の若者は親の医療保険に加入できるという条項があるからだ」と述べた。
しかし米共和党員は、オバマ大統領はロムニー氏よりもパフォーマンスに優れており、はるかに優れた広告塔となる素養があるとしている。
「2012年の米大統領選挙を振り返って見ると、(共和党の目線で)市場におくべき商品があり、市場がそれを買わないならば、より良いマーケティングを行うか、より良い商品を生み出さなければならない、ということがわかる」と副大統領になる可能性が高いという噂があったティム・ポーレンティ共和党員(Tim Pawlenty)はケーブルチャンネルC-Spanに語っており、「そしてこのことは共和党に、より良いマーケティングを行うべきだと喚起している」と述べている。ポーレンティ氏は、共和党を支持する女性有権者、ブルーカラーの有権者、ラテン系やヒスパニック系有権者がさらに必要だと述べた。
今回の選挙では両候補の得票率が拮抗したにもかかわらず、選挙人の獲得数に開きが出たのは、製造業が集積するオハイオ州などの激戦州をオバマ氏が制したためとされている。
「オバマ大統領は、少なくとも得票数だけを見れば有権者の判断を得て強さを発揮したかのように見える」とポーレンティ氏は言った。「しかし人々は選挙に期待しているわけではない。また、ロムニー氏の言ったように『贈り物のために投票するつもりだ』というわけでもないと思う。リーダーシップと、有権者のニーズを最高に理解できるのはどちらの候補なのかを考慮して、かろうじて決めたのだと思っている」と述べた。
共和党所属ルイジアナ州知事、ボビー・ジンダル(Bobby Jindal)氏も、なぜオバマ大統領が再選されたのかについてのロムニー氏の発言は「絶対に間違っている」として激しい非難を浴びせた。アメリカの有権者を分裂させるような呼びかけは止めて欲しいと彼は述べた。
ジンダル氏は「共和党が推し進める政策が、中産階級に入ったり、子どもたちに最高の教育機関を与えるといったアメリカンドリームの実現にどれほど役立つかを示し続ける必要がある」としてロムニー氏の発言を強く否定した。
この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。