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「かかし」で有名な宮地岳町をご存知でしょうか。
宮地岳町は熊本県西部の天草下島の中央部に位置しています。先日私は天草市を訪れたのですが、その際にたまたま立ち寄ったのが道の駅「宮地岳かかしの里」でした。
宮地岳町は世帯数224、総人口が431人、うち65歳以上が387人となっていて(天草市HPより)、高齢化率89.8%のいわゆる限界集落です。
この宮地岳町が有名になったきっかけは、人口を上回る数の600体以上の手作りのかかしの存在です。かかしの里があるということを知らずに、たまたまこの地を訪れた私は今にも動き出しそうな、生き生きとしたかかし達に出迎えられ、「ここは一体何なのだろう?」と驚きました。
この道の駅は平成24年3月に廃校となった宮地岳小学校の施設を活用しているのですが、往時の小学校での日常生活の一コマがかかし達によって再現されているのです。たとえば校庭でかかしが体操をしていたり、教室では先生・生徒の授業風景が再現されていたり、別の教室では結婚式をしていたりもしています。また、田植えの時期には、周辺の道路に農作業をしているかかし達が並んで、毎年その期間には4万人もの観光客が訪れるとのことです。
それでは一体、なぜ宮地岳町に600体以上ものかかし達がいるのでしょうか。私が伺った際に、かかしの発起人で現在「宮地岳かかし村 初代村長」の碓井弘幸氏に偶然お会いすることができ、いろいろとお話を伺うことができました。碓井さんは中学校の数学の教師と小学校の校長を務めた後に公民館長になられたそうですが、その際に高齢者が集う「ふれあいサロン」の活動の一環として、かかし作りを提案したとのことです。もともと碓井さんは趣味で能面を作成していた経験があったため、それぞれ異なる表情のかかしを作ることができるのではと考えたとのことです。その後、最初の6体のかかしが完成し道路沿いに展示したところ、道行く人々が写真を撮るなどの反響があり、地域の活性化につながると感じた住民達も積極的にかかし作りに参加するようになったとのことです。
かかし達の顔は廃品の発砲スチロールでできており、また服は町民が持ち寄った古着であるなどエコでもあるためか、この取り組みはメディアでも取り上げられ、宮地岳町は「かかしの里」として広く知られるようになったのです。 そして、現在は「道の駅 宮地岳かかしの里」として、「宮地岳米」や当地生産の菜種油とともに販売され、観光客の受け入れ拠点としても機能しているようです。
このように、宮地岳町は地域住民の協力と創意工夫によって、「かかし」を通じた地域活性化を実現し、そのユニークな取り組みが全国的な注目を集めるようになったわけですが、であるからこそどうしても私が心配になってしまうのは、この町の高齢化であり人口減少です。かかしづくりは高齢者の皆さんを中心に行われているわけですから、いずれ作り手がいなくなってしまうのではないかと心配になるのです。発起人の碓井さんも御年87歳とのことです。
もちろん、このような高齢化の心配は宮地岳町だけのことではなく、日本全体に言えることですし、組織においても言えることです。先日弊社が研修を担当させていただいた企業では、シルバー社員は増加している一方、新入社員は必要な人数を確保できないために、毎年社員の平均年齢が上がっているとおっしゃっていました。これは多くの企業が抱えている問題ですが、解決に向けた妙案がないことも事実だと思います。
こうした流れの中でも、道の駅「宮地岳かかしの里」では先月下旬に4周年祭りを行ったり、5月頭までかかし祭りを開催したりするなど様々なイベントを行い、集客に努めています。企業においても宮地岳町のかかしのような組織活性化の施策や、職場の高齢化への活性化策もあわせて考えていく必要があるのではないかと思います。