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中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,279話 あなたは自分の仕事が楽しいと感じていますか

2025年09月03日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「週刊文春」の表紙が9月11日号から変わるとのことです。この表紙は1977年5月からイラストレーターの和田誠さんが担当していて、2019年10月に和田さんが亡くなられて以降も、以前載せたことのある絵を使用し続けてきていたのでした。しかし、この度の8月28日号が和田さんのイラストの表紙の最終号となり、9月4日号の表紙には「和田誠さん、48年間ありがとうございました。来週から表紙が変わります」と記されています。

和田さんの絵やイラストに魅了されてきた一人として、半世紀にわたって続いてきた和田さんのイラストの表紙がついに終了してしまうことは大変残念に感じます。同時に没後6年もの長きにわたって和田さんの絵が表紙として生き続けてきたということは、和田さんならではであり改めて存在感の大きさを感じています。

私自身は、和田さんについては絵のみならず妻の平野レミさんが語る和田さんのエピソードによって、さらに魅了されていました。レミさんがトーク番組で何度か紹介していたのですが、和田さんは1日の仕事を終えて帰宅すると、レミさんに「今日も楽しく絵が描けた」と嬉しそうに語っていたということです。このように、1日の仕事を終えて「楽しかった」と言い続けられる人は、そうたくさんはいないのではないでしょうか。

これに関連して、リクルートが2013 年より毎年、全国の就業者約 5,000 人~12,000 人を対象に実施している「働く喜び調査」というものがあります。この調査によると、2013~2023年の11年間の調査を通して見えてきたこととしては、働く喜びを必要とする人が毎年約8割以上いるにも関わらず、実際に「働く喜び」を感じているという人は約4割にとどまるということです。働く喜びを必要としている人のうち、半数以上の人が働く喜びを感じられていないという結果であり、まだまだ課題の多い状況であるということのようです。

こうした調査からも「仕事が楽しいと感じること」や「働く喜びを感じる」ということはそう簡単にできるようなものではないということがわかりますが、この調査は企業に雇用されている人が中心であると考えられることから、和田さんの場合と直接比較できるものではないのだろうと考えます。

とはいえ、和田さんのように少しでも仕事を楽しいと感じられるようにするためには、私たちはどうすればよいのでしょうか。それにはいろいろな考え方があるかと思いますが、まず言えるのは「楽しさ」は与えられるものではなく、自分の関わり方次第で見出すものだということです。

具体的には、仕事のすべてが好きというわけではなくても、自分の得意分野や興味を活かせる部分を見つけること。また、仕事では課題やトラブルが生じるのは常のことですが、それを困難と捉えるのではなく、新たな工夫をするチャンスと考えたり、上司や顧客からの指示を待つのではなく自から提案して裁量を広げたりすること。さらに様々な人間関係(上司や同僚・取引先との関係)を負担と考えるのではなく刺激として捉えたりと、前向きに考え取り組むことで、仕事の中に楽しさを見出していくことができるのではないかと思うのです。

こうした地道な心掛けによって、仕事は楽しいと感じるようになっていくことも可能になるのかもしれません。まずは、自分自身に「あなたは自分の仕事が楽しいと感じていますか」と問いかけることから始めてみませんか。

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第1,277話 年上の部下を指導する際に最低限配慮すべきポイント

2025年08月20日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「部下に55歳の新人がいるんですが、どのように指導すればよいのか悩んでいます」

これは、先日弊社がある企業の監督職を対象に行った部下の育成研修の終了後に、一人の受講者から相談された内容です。詳しく話を聞いたところ、今春55歳で採用された男性が自部署に配属され、直属の部下になったとのことです。

近年、厚労省は就職氷河期世代に対する様々な支援を始めています。就職氷河期世代とは、1990年代から2000年代初頭にかけて就職活動を行った世代を言い、2025年時点では41歳から55歳の層が該当するとのことです。この層に対する支援の一環として、官民を問わず採用の際の年齢枠を拡げ、氷河期世代の受験も可能としているところが増加傾向にあります。

冒頭の受講者の55歳の部下も、この採用枠の拡充により入社試験を受けて採用されたそうです。年上の部下の指導や育成に関する悩みや相談自体は取り立てて新しいものではありませんが、「部下が55歳の新人」というケースは私自身も初めて聴いたことから、正直なところ少々驚いたことは隠せませんでした。

詳しく話をお聞きしたところ、現段階で55歳の新人に取り立てて大きな問題が起こっているというわけではないとのことです。しかし、それ以前に自身より15歳も年齢が上の人が新人であるということに面食らってしまい、どのように仕事を教えればいいのかや、慣れない業務でミスがあった際にどのように指導すればいいのかなどについて、悩ましいと感じているとのことでした。

そもそも部下指導というものは年齢に関係なく難しいものではありますが、このように年上の社員が自分より年下の若い指導者に教わるということに心理的な抵抗感を持つということは、当然とも思えます。したがって、年上の部下を指導する際には最低限配慮すべきポイントがいくつかありますが、私はその中でも特に言葉遣いと態度に十分配慮を払うことが必要だと考えています。たとえば友達言葉で話したり、腕組みをしたりするなど「上から目線」と感じられるような態度をとってしまうと、年上の部下からすれば、違和感やマイナス感情をもってしまうことにつながりかねません。そしてこれらの配慮は、年上の部下への指導に限ったことではなく、本来は年齢に関係なく部下指導の際に配慮すべきことなのだと考えます。

昨今、若年層の労働人口が減少する中、官民を問わず若手の採用がここ数年で一気に難しい状況になっています。東京商工会議所の「2025年新卒者の採用・選考活動動向に関する調査」によれば、計画以上に確保できている企業は13.4%にとどまる一方、充足率が50%未満の企業は40.3%であり、96.4%の企業が採用環境が厳しいと回答しており、新卒者の採用が足りていない企業の方がはるかに多く、それは企業規模が小さくなるほど顕著です。

生産年齢人口の減少、特に若い世代が減ってきている中で若手を採用することは、今後は官民問わずますます難しくなっていくであろうことは明らかと考えられます。そうした中では、就職氷河期世代のみならずキャリア採用も増加していくと、自分よりもずっと年齢が上の人が部下になるというケースも増えていくはずです。

組織の人間関係を良好な状態にしチームワークを維持していくためにも、年齢が上の人に対しては敬意を示すことともに、部下の年齢に関係なく、言葉遣いや態度には十分に配慮することがますます重要になっていくと考えています。

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第1,276話 ピンチヒッターを頼まれたら燃えよう

2025年08月06日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「急遽、ピンチヒッターとして参加しました」

これは先日弊社が担当させていただいた、管理職を対象とした公開セミナーの受講者のAさんが、自己紹介で言葉です。当初、このセミナーにはAさんの上司が参加する予定だったそうですが、急用が入ってしまったため、まだ係長であるAさんが代わりに参加することになったのだそうです。

他の参加者が全員管理職であったため、セミナー開始時には少々気後れしているようにも見えたAさんでしたが、演習でディスカッションを繰り返すうちにどんどん積極的になり、途中からは熱心に発言もしていました。そして、セミナー終了後には「まだ管理職でない私がセミナーに参加することになり心配していましたが、監督職と管理職の違いがわかり、将来管理職を目指したくなりました。参加してよかったです」と、生き生きとした表情で感想を話しに来てくれました。

ところで、ピンチヒッターとは野球で言えば代打、一般的には代役のことを言います。仕事のみならず、プライベートにおいてもピンチヒッターを頼まれた経験があるという人も多いと思います。

このピンチヒッターについて、先日タレントの清水ミチコさんがNHKの番組「スイッチインタビュー」の中で話をされていました。清水ミチコさんが年末の恒例として行っている日本武道館でのワンマンショーですが、2026年新春に12回目の開催を迎えるとのことです。毎回、チケットの発売と同時に完売になってしまう人気のショーで、私も以前に一度行ったことがあるのですが、とにかく面白くあっという間に気持ちを鷲掴みにされ、武道館全体に笑いが渦巻いているようでした。

長い間続いているこのショーですが、元々清水ミチコさん自身は武道館でショーを行うことを目指していたわけではなく、予定されていた他の公演が中止になり、急遽ピンチヒッターを頼まれたのがそもそもの発端だったのだそうです。その時、清水さんは「ピンチヒッターって燃える。チャンス。期待されていないし、ここは私が」と考えて舞台に臨んだとのことです。当時既に人気タレントであった清水ミチコさんですが、ピンチヒッターで臨んだこの舞台が成功したことによって、さらに人気がアップしたのは言うまでもないことです。

私達も日々の生活の中で、予期せぬタイミングでピンチヒッターを頼まれることがあると思います。それが仕事の場合であれば、短い時間の中で結果を出さなければいけないなどというケースもありますが、それ故にプレッシャーで出来れば引き受けたくないと考えてしまうことが誰にでもあるのではないでしょうか。

しかし、ピンチヒッターには考え方によってプラスの面も少なくないとも考えられます。ピンチの状況で頼まれる、頼られるということは「この人ならきっと何とかしてくれる」という信頼や期待の表れであり、単なる穴埋に過ぎないということではないはずです。

したがってピンチヒッターを頼まれたら、まずは状況を前向きに捉えて、自らの力を精一杯発揮してみるという姿勢が大切なのでしょうないでしょうか。前任者と全く同じことをするのではなく、自分なりの強みや持ち味を出してしっかり代役を果たす。そうすることにより、ピンチを自らにとってのチャンスに変えることができ、清水ミチコさんのように替えのきかないような仕事になっていくのではないかと考えています。

ピンチヒッターを頼まれたら、たとえ心の準備ができていないときでも、まずは声がかかったことを前向きに捉え、積極的な気持ちで精一杯臨んでみること、こういった姿勢が大切なのではないでしょうか。

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第1,273話 仕事の段取りと東大生の勉強法

2025年07月16日 | 仕事

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「仕事を予定どおりに進めるのは簡単なことではありません。私はそれだけのエネルギーを使っています。」

これは、弊社がある企業のタイムマネジメント研修を担当させていただいた際に、受講者Aさんから聞いた言葉です。仕事が予定通りに進んでいないという受講者が圧倒的に多い中、Aさんは「仕事は毎日ほぼ予定通りに進んではいる。しかし、そのためには相当のエネルギーを使っている」とのことでした。そこで、Aさんの仕事の進め方を具体的にお聞きしたところ、まず仕事の段取りを細かく立てて、次に個々の業務にかける時間の見積もりをし、その時間の中で終了できるように適宜タイマーも使っているなどの話をしてくれました。

これに関連して、先日(2025年7月1日)の朝日新聞に「合格するために 東大生の勉強法とは」という記事が掲載されてました。記事によると、東大生の勉強法で共通していたのは「スケジュール管理」で、勉強すべき内容をすべて書き出し、月単位や1日単位のスケジュールに組み込む。やるべきことを明確にし、結果を毎日記録する。集中度合いを3段階に分けて記録し、自分の集中の傾向をつかんだりするということでした。また、人によっては毎日タイマーで時間をはかって勉強時間を見える化し、スケジュール管理表には取り組む参考書のページ数まで詳細に書き込んでいたとのことです。

これらはまさに、私がタイムマネジメント研修の中で紹介している段取りのやり方そのものです。前述の2つの事例から確認できることは、「仕事にしろ、勉強にしろ、予定通りに進めること」「成果を出すためにはそれ相応の努力が必要であり、手段の一つには段取りを行うことがある」ということです。

このような話をすると、段取りをすること自体が面倒ではないかとの質問をいただくことがあります。確かに慣れていなければ段取りに30分位はかかるかもしれませんが、慣れてしまえば10分程あれば行うことができるはずです。わずか10分程度の時間によって、その後の仕事や勉強が予定どおりに進む。それによって成果も上がるということであれば、少々の時間と手間を惜しんで段取りをしないという手はないのではないでしょうか。

「段取り八分」と言う言葉があります。これは、段取りをすれば「仕事は段取り八分で決まる(仕事の前の段取りで、仕事の8割は終わっている)」と言う意味であり、仕事における下準備の重要性を伝えているものです。毎朝、10分程度の時間を使って段取りを立てることで、仕事の8割ほどは完了するというのであれば、手間暇を惜しむことなく段取りを行うべきものだと思います。

段取りを立てること、これは一人一人の仕事を俯瞰することでもあります。現在、仕事を進めるうえで段取りをしっかり立てていないという人がいたら、一度客観的に自分の仕事を俯瞰して確認した上で、段取りを立てることを始めて見てはいかかでしょうか。また、もしあなたが管理職でいるのであれば、部下がしっかり段取りを立てているか、確認してみることから始めてみませんか。

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第1,272話 期待されていると感じると人はどういう気持ちになるのか

2025年07月09日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「上司は彼にとても期待していて、将来はリーダーとして頑張ってほしいと度々声をかけているようです」

これは、先日弊社が担当させていただいた2つの企業の中堅社員を対象とした研修の終了後に、それぞれの担当者から伺った言葉です。

双方の企業ではいずれも20代後半の社員を対象とした研修を担当したのですが、受講者の1人がとても前向きに研修に参加し、グループ演習にも生き生きとした表情で取り組んでいましたので、見ていて頼もしいと感じていたのです。そうした状況を受けての研修終了後の打ち合わせでお聞きしたのが、冒頭の言葉なのです。

年齢的にも既にそれぞれの職場にとって、欠かすことのできない存在になっているであろう彼らが、周囲から将来を期待されるほどに仕事に前向きに取り組むことになったのは、なぜなのでしょうか。もちろん、元々そのような資質を持ち合わせていたということがあるとは思いますが、私は担当者の話から、上司をはじめ周囲から期待されていることをはっきりと伝えられていることが、彼らをやる気にさせているのではないかと感じました。上司や周囲から「あなたならできる」「あなたに任せたい」「将来リーダーになってもらいたい」などと具体的に言われたら、その人がどういう気持ちになるのかを想像することは難くないです。多くの場合、このように言われたら自己効力感が芽生えて、「もっと成長したい、頑張って活躍したい」と考えるようになるのではないでしょうか。

このことは、教育心理学でいうところの「ピグマリオン効果」にも通じる話です。ピグマリオン効果とは、相手から期待されていると感じるとやる気が上がり、スキルや知識が身に付き、人は育つというものです。それとは反対に、相手からの期待や評価が低いことによって、実際のパフォーマンスが低下する「ゴーレム効果」というものもあります。そのように考えると、人間のやる気が上がったり下がったりする原因は、その時の気持ちや感情に大きな影響を受けるなど、案外シンプルなものなのかもしれません。

そうした観点から冒頭の研修の受講者たちのことを思い返してみると、彼らは「今この瞬間、この機会を大切にし、身に付けられるものすべて自分のものにしよう、今後に活かそう、ここで出会った仲間との関係を大切にしよう」と考えているような姿勢です。

「他者に期待をする」ということは、今の状態よりも一歩先の姿を信じているからこそ伝えられるものです。そうであるからこそ、上司は部下の今の状態を的確に把握するとともに、一歩先の姿をイメージして、出し惜しみをすることなく定期的にそれを具体的に伝えること。それが部下を成長させることになると考えています。

それにしてもこれらのことから改めて感じるのは、私たちにとって「期待」というものは思っている以上に大切なものではないかということです。さて、あなたには期待をしている人はいますか。いるとするならば、その人の成長はあなたの期待にかかっているのかも知れません。

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第1,270 話 希望とは異なる企業に就職したAさんの取り組みとは

2025年06月25日 | 仕事

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「内定をもらった後に親戚に会社の名前を言ったら、『〇〇企業なんかじゃなくても、もっと良いところに入れたでしょう』と言われたんです」

これは、コロナ禍に就職活動を終えた知り合いのAさんが、就職先を親戚に話した際にかけられた言葉を教えてくれたものです。Aさんはもともと語学に関心があったため外国語大学に進学し、大学4年の時には海外へ語学留学をする予定で、それに向けて準備を進めていたのでした。しかし、コロナ禍になってしまったため留学を見送らざるを得なくなり、急遽就職活動をすることになってしまったのでした。もともと留学予定であったこともあり、就職活動に少々出遅れてしまい、さらに希望していた旅行業界がコロナにより採用を中止してしまったのです。致し方なく、Aさんは希望していたのとは全く異なるホテル業界のB社へ就職したのでした。

Aさんに対する期待が特に高かったこともあり、当初周囲の親戚たちは「Aさんならもっと良い企業には入れたのではないか。B社なんかではもったいない」などと、悪気はないものの少々配慮に欠けた言葉をかけられたとのことです。しかし、そもそもB社は業界有数の大手の会社であり、入社すること自体決して簡単なことではなく、Aさんだからこそ入社できたとも言える状況だったのです。

そうした様々経緯を経て、入社4年目社員となったAさんですが、得意だった語学を活かして努力を重ねた結果、海外事業を展開する部署に異動し、現在は定期的に海外に出張して現地での指揮を執るなど、若手のホープとして大活躍しているそうです。

そんなAさんを見ていて感じるのは、本人が何よりも今の仕事を楽しいと感じているということです。大変生き生きとして頑張っているため、学生時代に希望していた業界とは異なるものの、本人の気持ちや取り組み方次第で、こんなにも活躍できるものなのだなと傍から見ていても頼もしく、嬉しく感じています。

昨今、就職活動においてはかつてないほどの売り手市場になっています。だからと言って、皆が皆、希望したところに就職できるとは限らないわけです。言うまでもないことですが、入社後の本人の心がけ次第で、仕事のやりがいを見つけて活躍し、成果を上げるなど、当初の希望とは違ったとしてもいかようにでも活躍の場は作ることができるということではないでしょうか。

それでは、Aさんのように活躍するためには、何が必要なのでしょうか。Aさんの話を聞いていて感じたのは、日々の仕事の中で継続的に努力を重ねているということです。もともと英語が堪能だったAさん、入社した当初は英語をあまり使うことのない部署に配属されたのですが、その後もいずれは役に立つことがあると考えて英語の勉強を毎日欠かさず行っていたのだそうです。さらに、まずは3年間しゃにむに頑張ろうと考え、目の前のことに一所懸命に取り組んでいたとのことです。

もともとの自分の希望に固執し続けることなく、気持ちを切替えて今の職場で得られる価値に目を向け、目の前の業務に丁寧に取り組むことで小さな信頼を積み重ねながら中長期の視点から現在地を意味づける。その結果が今につながっているということなのではないかと思います。

Aさんにも今後引き続き仕事をしていく中では、様々な試練が訪れることがあるかもしれませんが、この3年間の歩みはAさんにとって大きな自信になり、今後の困難を乗り越えていくための大きな力になったのではないかと考えています。

人生においては誰もが自分の思い通りになることばかりではありませんが、思うようにならなかったとしても落胆することはない、道は一つではないと改めて感じたところです。

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第1,269話 運のよい人になるには

2025年06月18日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「私は運が悪い。そういう運命だから」

これは先日見たあるテレビドラマで、主人公が語っていた言葉です。そのドラマでは主人公がこれまでの過酷な人生をこのように表現していたのです。

さて、多くの企業では来春に卒業する大学生や大学院生の採用選考の峠を越えた言われているところです。先日弊社が研修を担当させていただいた企業のご担当者も「予定数の三分の二はとれましたので、あと一頑張りです」という話をされていました。

こうした採用に関する話を聞くたびに、私はあの松下幸之助氏の話を思い出すことが多いのです。有名な話ですので耳にしたことがある人も多いかと思いますが、松下氏は採用試験の面接の最後に必ず「君は運がいいか?」という質問をし、その答え次第で採用するかどうかを決めていたという話です。

ここで松下氏のいう「運がいいか?」という意味は、偶然起こりうる運に期待するような運任せにする運の良さのことではなく、自分の考え方と行動によって運命は変えることはできるということであったようです。松下氏が言っていた「運のいい人」とは、運を味方につけ自ら人生を切り開いていけるような、力強い人物であるのかどうかというようなことを言っていたのではないかと思います。

この話と同様のことは、司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」の中でも書かれています。明治天皇から東郷平八郎を司令長官に抜擢した理由を尋ねられた海運相の山本権兵衛は、「東郷は運のいい男ですから」と答えたという話です。東郷平八郎は、日露戦争で連合艦隊司令長官として日本海海戦でバルチック艦隊を撃破したことにより、日本を勝利に導いたことは有名です。この勝利をもたらした「運のよさ」の背景には、それに至るまでの幾多の知識や経験と、それらを総動員した東郷ターンという決断が勝利をもたらしたわけで、ただ単に待っていた結果、運の方からやってきてくれたというようなものではないということです。

これらの話からわかるのは、「自らの運を切り開くためには、チャンスを引き寄せる主体的な行動が必要」ということです。と同時に、主体的に生きるということは口で言うほど簡単ではないということも、多くの人が感じているところではないか思います。私たちは日常の生活の中では他者との関係性の中で生きており、そうした中で主体的に生きることはなかなか難しいです。逆に言えばそういう人が少ないからこそ、求める人材像に「主体的に行動する」ことが入っている企業が多いのではないか。つまりは、主体的に生きることがいかに難しいかということの裏返しなのだと考えます。

「運を切り開く」とは単に偶然を待つのではなく、物事を必然に変えていくということであり、そのためには日々自らの積極的な姿勢と行動が必要になるのは言うまでもないことです。

「チャンスの神様には後ろには髪が生えてはいなくて、前髪しかない」という話があります。チャンスは目の前に現れたときにすぐつかまないと、過ぎ去ったあとではつかめないという教訓を伝えているのでしょう。この神様はギリシャ神話のカイロスという神のことだそうですが、チャンスをつかむためにも、私たちは主体的に生きることによって運のよい人になりたいものです。

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第1,268話 無制限に時間があると、いいものは作れない

2025年06月11日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「無制限に時間があると、いいものは作れない」

これは、先日放送されたNHKの番組「スイッチインタビュー」で、シンガーでタレントの堂本光一さんがプロスケーターの羽生弦さんとの対談の中で語っていた言葉です。

番組では、お二人が作品を生み出すまでの過程や向き合い方について熱く語っていたのですが、その中で創作への向き合い方として堂本さんが語っていたのが冒頭の言葉なのです。創作への向き合い方として「期限を区切る」こと、それに加えて「悩んでいるときって良い発想が生まれないから、考えてなければいけないことを一旦置いて普通の生活をしていると、その後風呂に入っているときに、メロディが下りてきたりする」と話されていました。

この話を聞いていて、彼らのような壮大な創作活動ではないにしても、私たちは日常の仕事や生活の中で「忙しいから考える暇がなかった」、「忙しいから良いアイデアが浮かばなかった」など、「忙しい」ことを言い訳にすることが結構多いのではないだろうか。そして忙しいからこそ、反対に自らの納期を設けてアイデア出しをするということが、発想をするためには重要なのではないだろうかと感じました。

それでは、なぜ納期を設けた方が良いアイデアが生まれるというようなことが起こるのでしょうか。それには様々な理由があるかと思いますが、一つには締め切りを設けないと“制約がある中でどのように工夫するか“という、アイデアの源ともなる集中力が散漫になったり、緊張感がなくなったりしてしまうということがあるのかもしれません。

また、パーキンソンの法則(1958年に英国の歴史学者・政治学者のシリル・ノースコート・パーキンソンが「仕事は、完成までに利用可能な時間をすべて満たすように拡大していく」という考え方を提唱)が働いてしまうということもあるのではないでしょうか。

身近な例で考えてみると、納期までに十分な余裕がある仕事をしようとする場合、すぐに仕事にとりかかって完成させることもできるのに、そうはせずに納期ぎりぎりまで手を付けず最後に一気に完成させるというようなことがあります。これはパーキンソンの法則でいうところの仕事を完成させるのに全ての時間をかけてしまっているということです。そしてそのような場合、時間をかけたからといって必ずしも完成度が高くなるということでもなく、案外短納期で仕上げた方が精度の高い仕事につながったというような経験を持つ人もいるのではないでしょうか。

それでは、こうしたパーキンソンの法則が働いてしまうことがないようにするためには、一体どうすればよいのでしょうか。

それには堂本光一さんも話していたように、仮に納期が先の仕事であったとしても自ら納期を少し短めに設定してみるのがよいと考えます。短い納期の中で、限られた時間や資源などを最大限に活かして、まずは一所懸命に考えてみる。それを繰り返していると、たとえばお風呂に入っている時など何か別のことに取り組んでいるときに、ふと「アイデアが下りてくる」というようなことがあるのではないでしょうか。

「次から次へとアイデアが泉のように湧いてくる」というような人でなければ、まずは「時間に制約を設けて考える」というように地道に取り組んでみることから始めることが、良い発想を得る一番の近道なのではないでしょうか。制約があるからこそ、その中でどう工夫するかということが、アイデアの源になるように考えています。

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第1,266話 意識的に「ゾーン」を作ることはできるのか

2025年05月28日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「その時はゾーンに入っていたんだと思います」

これは、元陸上選手の為末大さんがある講演会の中で語っていた言葉です。先日、第40回東大寺文化講演会に参加したのですが、その中で講演者である為末さんの「人間を探求する 人はいつまでも学び成長できる」というテーマの話を聴講する機会がありました。

講演では過去に出場した数々のレースを振り返り、それぞれのレースでのスタート前の心境やハードルとハードルのインターバルの歩数、踏切の足がどちらだったかなどや、その結果レースにどういう影響があったかなど、走った本人にしかわかりえない話をライブ感たっぷりに話していました。その中で、400mハードルでの銅メダル獲得につながった世界大会で走っている時の状況を、「ゾーンに入った状態だった」と表現されたのです。

「ゾーン」とは、学術的には「フロー」と呼ばれる心理状態のことで、心理学者のミハイ・チクセントミハイが提唱した概念と言われています。ゾーンに入るというのは、目の前のことに集中した状態であり、周囲の雑音や時間の感覚を忘れるほどに目の前のことに没頭している状態で、体験者がその瞬間を「物事が自動的に進む流れ(Flow)の中にいるようだ」と語ったことによって、「フロー状態」と名付けられたとのことです。

これまでも、オリンピックをはじめ様々なスポーツの大会でメダルを獲得した選手が「ゾーンに入っていた」と表現していることを幾度となく聞いたことがあります。またスポーツのみならず、身近なビジネスパーソンの中にも、(その程度の差こそあれ)ゾーンに入ったことがあるという人も少なくないように感じています。

私は、ゾーンとは集中力や感覚が極限まで研ぎ澄まされた状態であり、容易にはその状態に入れないのではないかと思っているのですが、もしそれによって目の前の仕事に集中できるのであれば、そのような状態を作り出すことで目標に近づき成果を出すことができるのではないでしょうか。

では、日々の仕事の中でどうすれば意識的にゾーンに入る、あるいはそれに近い集中状態を作り出すことができるのでしょうか。

為末さんは「毎日、午前中に短距離走を〇本、午後にも〇本走り、そのほかにも○○をやって、それを毎日繰り返し、さらにそれを10年続けた先にようやくオリンピックがあるような世界」といった話をされていました。本当に大変な努力の積み重ねの結果、ようやくたどり着ける一瞬の世界なのかもしれません。

私たちがその状態に近づくための道のりはもちろん簡単なものではないでしょうが、まずは自分がどのようになりたいのか、仕事でどのような成果を得たいのかなど、明確にゴールのイメージを持ったり目標を立てたりすることが大切になるのでしょう。スポーツで言えば目標タイムを決める、メダルをとるなどといったことになると思います。その際には自分の能力に見合った適度な難易度が必要で、あまりにも高すぎる目標ではやる気が失せてしまうでしょうし、逆にあまりにも簡単すぎてしまうと達成欲につながらないでしょうから、的確なレベルが必要です。

そのうえでゴール・目標を目指し、努力や鍛錬を続けることが大切なことだと感じています。「練習は噓をつかない」といった言葉もあります。仕事について言えば、ゾーンに入ること自体を目的とするのではなく、日々の地道な努力・鍛錬を繰り返すことにより集中力を維持できるようになり、やがては喜びや充実感を得られるようになるのではないでしょうか。

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第1,264話 「注意残余」の状態になっていないか

2025年05月14日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「職場内の業務ミスが増えています」

これは最近弊社が問題発見・課題解決研修を担当させていただいた際に、受講者から聞くことが多いフレーズです。

一人の受講者に詳しく話を聞いてみたところ、職場の人数が以前よりも減っており、その結果個々が担当する業務量が増えているとのことです。その一方で、残業の制限もあることから限られた時間の中で複数の作業を同時並行で行わざるを得ないのだそうです。たとえば見積書を作成している途中に課長に呼ばれたり、別件のチャットの返事を急かされたりすることも多々あるのだそうです。この受講者が言うには、集中して仕事をしたいのにそれができないのが現状であり、このように複数の作業を同時に行っているためどうしても集中力が削がれ、その結果業務ミスにつながっているということです。

人手不足と言われて久しい中ですが、現実の問題としてこのような「マルクタスク」をせざるを得ないビジネスパーソンは少なくないと思います。マルチタスクとは、複数の作業を同時並行で行ったり短時間で切り替えながら行ったりすることです。複数のタスクを同時にかつ連続的に行うことなどによって効率的に進めることができたり、成し遂げた場合の達成感がより強く得られたりするなどのメリットがあります。

しかし、その一方で強く懸念されるのが「注意残余」などによる業務ミスの発生です。「注意残余」とは、作業や行動を終えて次に移る際に注意の一部が前の作業に残っており、次の作業などへの集中が妨げられる状態を指す心理学用語です。終了したはずの前の仕事のことが気になって集中できていない状態のことを言います。

この言葉は、2010年頃にアメリカの組織心理学者ソフィー・ルロイによる研究で広く知られるようになったものです。ソフィー・ルロイは仕事の時間と注意の管理及び中断が仕事のパフォーマンスに与える影響を調べ、仕事や生活の中で注意力を高める方法を研究しているとのことですが、最近はこの注意残余という言葉を聞くことが多くなったと私自身も感じています。

実際、私自身も仕事が短期間に集中しているときに、複数の業務を同時に並行して行わざるを得ない状態になると、目の前の仕事に集中できなくなり、後からメールの文章に誤植などのケアレスミスがあったことに気が付くといった、注意残余の状態になってしまっていることを自覚することがあります。

このようなことは誰にでも起こりえることですから、それを避けるためにも注意残余に対する対策を考えなければなりません。そのためには、やるべきことの優先順位をつけたり、事前に段取りをしたり、現在行っている業務以外のものは一旦視界から遮断したりするなどといった方法が考えられます。しかし、これらはまさに時間管理の手法と同様のものですので、何も注意残余だけに関わる特別なことではありません。

とはいえ、特に仕事上のミスの防止や注意力の維持を考える上では、注意残余というものの意味などをきちんと知っておくと、心理的な疲労やミスの連鎖を防ぐヒントになるのではないでしょうか。

もしあなたがマルチタスクを行っている中で、なかなか集中できない状態になってしまっているようでしたら、注意残余の状態になっていないかどうか、冷静に自身を見つめてみる必要があるかもしれません。

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