中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第896話 「お察し文化」はコミュニケーションを阻害する

2020年03月25日 | 仕事

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「大丈夫だとは思うのですが、万が一弊社の社員に感染してしまったら困りますの

で・・・。申し訳ないのですが・・・、そこのところをご理解いただいて。・・・」

これは先日、私の知り合いが打合せを予定していた相手方の企業の担当者から受けた電話でのやりとりです。

現在、多くの企業では新型コロナウイルス感染防止のために様々な取り組みをしていますが、その一つに社外からの訪問を見合わせているところがあります。

そうした中で、先方から打ち合わせの予定を変更してほしいという連絡をしてきたのですが、それをはっきり伝えることがためらわれたようです。遠回しな表現を繰り返されたとのことです。

もちろん、知り合いは前後の文脈から「今回の訪問を遠慮してほしい」と言いたいのだということはすぐに理解できたそうです。

しかし、敢えて「感染が心配ということですね。それではどうすればいいのでしょうか?」と質問してみたそうです。それを受けてようやく先方は「訪問をご遠慮いただきたい」という言葉を発したとのことでした。

たったこれだけのことを伝えるのに、先方は随分と回りくどい伝え方をしたわけですが、あなたはこのような言い方を他者からされたり、自身がしてしまったりという経験はありませんか?

自分の伝えたいことをはっきり言わずに「相手に察してほしい」というコミュニケーションでは、直接的な表現を避けることで摩擦を回避したいという考えです。そこで敢えて婉曲的な表現をしているわけです。

これは、一見相手をおもんぱかるような姿勢のようにも思えますが、暗黙のうちに「No」を伝えていることにもなります。

つまりこれはまさに「コンテクストに頼っているコミュニケーション」と言えます。コンテクストとは、文化や価値観、習慣などと訳されますが、日本人の中にはこの「コンテクストに頼ったコミュニケーション」が基本になっている人もいるではないでしょうか。

「言わなくてもわかるでしょう?」という暗黙の了解を求めるコミュニケーションは、言っている本人は相手に配慮しているつもりかもしれませんが、結果的に相手に察することを強要していることになります。同時に言いたいことをこちらから主体的に伝えるのではなく相手任せにするわけですから、受け身のコミュニケーションとも言えるでしょう。

そして、言われた方はたとえ同じ会社や身近な人であっても、必ずしも同じ文化や価値観、習慣を共有しているとは限りません。ましてや社外の人であれば、文化や価値観が異なることは当たり前です。よって「察する」ことができないこともあるでしょう。これでは、正確なコミュニケーションのやりとりはできません。

同時に、こうしたコミュニケーションは時に誤解を生んでしまう可能性もあります。効率という観点からも大いに問題であり、仕事の生産性を向上させるどころか、逆に阻害してしまうことにもなります。

まずは、仕事の生産性を上げるためにも「文化や価値観、習慣はでそれぞれで異なるものだ」ということを念頭おくことが大切です。続けて含みを持たせずダイレクトに具体的に伝えることを意識し、実行することから始めてみてはいかがでしょうか。

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