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第894話 議事録はムダな仕事ではない

2020年03月18日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

この度、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う事態が公文書管理ガイドラインで定める「歴史的緊急事態」に指定され、関連会議の議事録作成が義務付けられました。これは東日本大震災の時に、当時の政権が意思決定過程を記録していなかった反省から決定されたとのことです。

さて、この議事録ですが、あなたの会社での取り扱いはどのようになっているでしょうか?

弊社が担当させていただく企業研修においても、議事録の書き方を練習する機会を設けることがありますが、実は議事録を適切に作成することは簡単なことではないのです。

そのため、新入社員であればたとえ研修を受けたからと言って、すぐに完璧なものを作成できるわけではありません。そこで何度も「書く」経験を積むことで、作成技術だけでなく仕事の前後関係を理解できたり、組織全体を俯瞰したりする視点を持てるなどのメリットもあります。

しかし、議事録の書き方を正式に習ったり作成する機会がないまま中堅社員になってしまったりすると、議事録の作成を敷居が高く感じたり、かなり時間を取られてしまう人もいるようです。このため、会議後に議事録を作成することをきちんとしたルールにしている企業は、意外と限られていると感じます。

また、近年、多くの企業で働き方改革が進められていますが、この改革の一環として議事録の作成を廃止してしまう企業もあるようです。

先日、ある大手企業の経営者の講演を聞く機会がありましたが、年間労働時間の削減のために全社で議事録を廃止し、代わりにホワイトボードに板書したものを共有することにしたとのことでした。

確かに労働時間を削減するためには、ムダを徹底的に排除することが必要になりますが、私は板書したものを共有したとしても、それを議事録の代わりとするには十分ではないと考えています。

ここで、議事録がなぜ大切なのかを考えるために、改めて議事録を作成する目的を考えてみましょう。

議事録は、議論の経緯(決定事項、未決事項、保留事項)を明確にし、後で関係者の曖昧な記憶で混乱を引き起こすことがないようにするためのものです。

具体的に記載することによって、誰が、何を、いつまでにしなければならないかが明確になり、次の行動につながるとともに、責任の所在も明らかになります。

そして、会議で決まったことを出席者や欠席者、その他の関係者に徹底することによって、情報を共有することができるわけです。

では、なぜ板書では議事録の代わりにはならないのでしょうか。板書では記入スペースに限りがあるために、どうしても箇条書きにならざるを得ません。行間の言葉が不足してしまったりすることによって、個々が自分の都合の良いように解釈してしまうことが起こりえます。

反対に考えると、議事録がなければ、会議で決定された事柄であっても誰も手を付けず先延ばしにしてしまったり、「上の人がやるだろう」というように責任放棄をしてしまったりすることにもなりえます。

冒頭の「歴史的緊急事態」の時であっても、その対応が議事録に記してあれば、それは後世の人たちへの貴重な情報の財産になります。

議事録は「今、ここ」で使うだけのものではなく、未来においても大切な意味を持つものですから、作成の労を惜しんではいけないということです。

働き方改革の推進に当たり、ムダを排除することはもちろん重要なことです。しかし何がムダであるかをきちんと見極め、くれぐれも議事録のように大切なものを排除することのないようにご注意いただきたいと考えています。

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