![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/b6/0710d31245b84e53975d55ab49d94486.jpg)
年間約3~4ヶ月程しか歩けない下の廊下の散歩。
黒部峡谷は黒部川が北アルプスの北部を立山連峰と後立山(うしろたてやま)連峰に二分して流れているため、その山頂と谷底の高度差は1500~2000mに及び、日本で最深の峡谷地帯であります。
黒部第四ダムの下流域を『下の廊下』
と呼び、その中心部には白竜峡、十字峡、S字峡などが有ります。
このルートは1935(昭和10)年ごろ当時の日本電力の調査ルートとして、黒部川の左岸に付けられた足下100mの断崖の登山ルートとなっています。
※この絵は 2010(H22)年10月に歩いた時のものです。
今迄、扇沢駅からトロリーバスで黒部ダムに入っていましたが、そのバスも2018年で54年間の運行終了、2019年よりトロリーと同様に環境を考慮した「電気バス」
に切り替わりました。
黒部ダム駅(地下)に到着すると観光客の方々はダム広場や展望台へ向かいますが、下の廊下に入る登山者はダム駅の右手にある坑道を抜け、約30分程でダムの下に降ります。
下から見上げる黒部第四ダムの大きさには圧倒されます。
そこに観光放水でもしていたら、黒部川の左岸に渡る手すりのない木橋の通過は、 台風
の中を歩くようなのです。
最初は黒部川の河原歩きから始まります。放水してないと水は、この程度です。
下流に進むにつれ河床との高度差が大きくなって行き、綺麗な滝や瀞(とろ)が見え足が止まる。
そして徐々に岩肌が多くみられるように、周りの景色が変化して来ます。
岩肌に刻まれた田の畔ほどの狭い道を慎重に進む。 このコースは、悪天候時の逃げ場がなく、雨は直ぐに側壁からの滝と変わり、沢筋からの鉄砲水も発生する。入山時の天候判断はとても重要です。
峡谷の谷間に落ち込んだ雪は10月でもこれほど残り、ほとんど万年雪の様です。
左岸の岸壁に横線のように刻まれている所が旧日電歩道(水平歩道)と言い、この様な道をワイヤーロープに手を掛けながら慎重に歩きます。
左岸の岩に刻まれた水平歩道は雪に埋もれてしまうと、雪のトンネルを抜けたり、時にはスノーブリッジの上を歩いたりします。
雪の重さで水平歩道が崩されてしまうと、関西電力で整備して下さった丸太3本の道へ、梯子で登下降し崩壊地を高巻きし更に狭い岩壁の水平歩道を進む。 この丸太道の下が白竜峡。
整備して下さった丸太の道は、その年の降雪量で崩れてしまうと、毎年変わってしまうのです。
両岩壁が迫り、滝が見えてきたところが白竜峡 である。 ザックや頭を岩にぶつけないよう注意が必要な所です。
白竜峡を過ぎると峡谷が少し広くなり、更に水平歩道を進む。
水平歩道の岸壁にはワイヤーロープが設置され、常にロープを軽く握りながら歩くので、サビが手に付くため軍手などがあると助かります。
峡谷の両側には立山連峰と後立山連峰の標高の高い山々が連なり、春先の雪解けが始まると、この狭い峡谷に雪が落ち込んでくるのです。
早いと10月下旬には 雪が降り始めます。 十字峡に近くなると高度感を感じ、ワイヤーロープをしっかり手にして慎重に通過。
川面から50mほどの高さをたどる道は、狭い上に高度感があり、転落は致命的です。
十字峡の手前に休憩に丁度良い広場があり、そこで緊張感を解く。 気持ちを落ち着けてから十字峡
の吊橋に向かう。
十字峡吊橋の下には剱沢が、そして右岸からは棒小屋沢の流れ
が黒部川に合流している。
遥か下方にコバルトブルーの水を湛えたS字峡を俯瞰する。 近くに見えますが、実際は遥か深い峡谷の底であります。
水平歩道が終わり、東谷吊り橋へ下る途中から見た黒四地下発電所の送電口。 山奥でこんな人工的なものが、急に現れると異様である。
東谷吊り橋を渡り、初めて黒部川の右岸の道へと移る。
そして現れた仙人ダムの上を通り、再び左岸に戻る。ダムの上から下流を覗いた景色である。
初めて単独でこの下の廊下を歩いた時は、ダムから先の道が消えてしまいビックリしました。 ダムの上を行ったり来たりしても、こんな山奥に誰もいない
仕方なくダムの事務所に誰かいるかと思い、声掛けしドアを引いたら開いてビックリ。
中を覗いたが人の気配は無かった。
開けた正面の壁に「登山道
」の表示があり、「何だ
外に表示板を出しといてよ。」と一寸「ムッ
」とした。
ダムの事務所に入り、案内に沿って進むと直ぐ右折、20m位だろうか? 狭い高熱隧道を通過。 この高熱隧道には、ガス抜き用なのか、幾つかの横穴があり蒸気
が吹き出し先が見えずに怖い思いをした。
高熱隧道を抜けると、やっと安心して歩ける広場に出た。でもまたビックリ。 目の前に白亜の大きな建物(人見平宿舎)が現れた。人が居るのだろうかと声掛けするも返事なく気味悪し。
白亜の建物を右に回り込み、再び水平歩道への急坂に取り付く。
水平歩道に登ってから約1時間ほど歩いてプレハブの阿曽原温泉小屋に到着し、ホッ
とした。
露天風呂に浸かりながら危険な峡谷に道を作り、ダムを造った先人の努力に思いを馳せ、ノンビリ疲れと緊張感を解きほぐした。
※ ご訪問、ありがとうございます。