日本列島全体を「地震に強い国土」にしていくことが焦眉の急

2005年12月26日 21時42分25秒 | 社会
 建築設計士の間でいま、「パンドラの箱が開けられたら大変なことになる」と囁かれている。
 耐震強度偽装事件が拡大し、建築物の耐震構造が強化された1981年(昭和56年)以前に立てられたビルやマンション約20万棟の大半が、「震度5」の地震に耐えられず、万が一、大地震が発生した場合、ほとんどが崩壊する危険があるからで、このことは国土交通省をはじめ建設・建設業界では、「公然の秘密」とされているという。なかでも、東京オリンピック開催(昭和39年10月10日)直前に突貫工事で建設されたビルのなかには「海砂利」を使用した粗悪なビルも含まれており、倒壊が確実視されている。
 今回、ヒューザーが建築主となったマンションが、「震度5」の地震に耐えられないということが判明して、地方自治体が居住者に「退去命令」を発して大騒ぎになっているが、これを基準すると、約20万棟の大半の居住者に「退去命令」を発令しなくてはならなくなってしまい、国土行政は、「前門の虎、後門の狼」の如く、自己矛盾を起こして立ち往生している。このピンチをどう切り抜けるかが、政府・与党の最大の難問となっている。いずれにしても、地震国・日本の耐震意識の低さが、今回の事件を生み出した元凶になっており、今後20年から25年の間に大地震が起きる可能性が高いと予測されているだけに、日本列島全体を「地震に強い国土」にしていくことが焦眉の急である。
 一方、全国建築設計事務所協会では今回、耐震強度偽装事件を引き起こした姉歯秀次・元一級建築士が、都道府県建築設計事務所協会ばかりでなく、建築士協会など業界団体のどこにも加入していなかったことを重視し、「もし業界団体に加入して研修を受けたり人脈を広げていたりしていれば、だれかが相談に乗ることができ、大事件にはならなかったのではないか」として「会員制度」の見直しを始めている。とくに建築設計事務所協会が、いま一級建築士の有資格者が「任意加入」となっているため、これを改め、一級建築士を「強制加入」してもらうことを目的とした法律改正を検討し始めている。現在は、任意加入であり、全国31万人の一級建築士のうち、都道府県の建築設計事務所協会に加入しているのは、約3割に止まっている。
 また、建築設計の業務のなかでは、「デザイン設計担当者」が主力で、「耐震構造」などにかかわる「構造設計担当者」の地位が低く、いわば「下請け的な存在」になっていることも、今回の事件の背景にあるとみて、「構造設計担当者」の地位の向上を図る必要があるとして、見直し作業を進めているという。
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