ベーカー米国務長官が打電した秘密公電についての報道で、朝日新聞の「偏向報道」を見つけた

2005年12月16日 17時36分30秒 | 政治
歴史問題「日韓協調妨げる」 91年、米国務長官が分析 (朝日新聞) - goo ニュース

 朝日新聞12月15日付夕刊の2面に奇妙な記事が掲載されている。ワシントン支局の渡辺勉特派員発で、「歴史、日韓協調妨げる-91年、米国務長官が分析」という見出しがついている。一瞬、「今の話」かと思ったら、「91年」の話である。
 どうも「小泉首相はじめ日本の指導者の歴史認識」と「日韓首脳会談ができない」状況を結びつけて、「91年ごろの米国務長官の予測が当たっていた」と言わんばかりの記事の作り方である。
 まず、記事を読んでみよう。

「北朝鮮の核兵器開発疑惑が浮上していた91年当時、北朝鮮の核兵器開発を阻止するため米国が日本の経済力に期待を示しながらも歴史問題が日韓協調の妨げになることを懸念していたことが、ベーカー米国務長官が国防総省あてに送った電報でわかった。

 ベーカー国務長官は、91年当時、いまのジョージ・W・ブッシュ大統領の父、ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュ大統領(第十一代、共和党)時代の閣僚だった。韓国と北朝鮮は、この年の9月17日、国連に同時加盟していた。記事は、続けて、こう書いている。

「北朝鮮の核兵器開発疑惑が浮上していた91年当時、北朝鮮の核兵器開発を阻止するため米国が日本の経済力に期待を示しながらも歴史問題が日韓協調の妨げになることを懸念していたことが、ベーカー米国務長官が国防総省あてに送った電報でわかった。

 朝日新聞のこの記事にある「国防総省あて」とは、具体的には、チェイニー国防長官である。現在のブッシュ政権では副大統領に就任している。朝日新聞は、どういうわけか「チェイニー国防長官」の名前を書いていない。問題は、ベーカー長官が国防総省に打電した電報(秘密公電)の中身である。

「電報によると、韓国の金宗輝・大統領外交安保補佐官は南北対話を進めるうえで日本とソ連には加わってほしくないと明言し、米国と中国が最も積極的な役割を演じることに期待した。このため、長官は『日韓の仲立ちをするため我々は重大な役割を担うだろう。日本は重要な経済のテコを持っている。悲痛な歴史が政策協調を妨げるだろう』と予測した」

 しかし、この電文においては、ベーカー国務長官が「悲痛な歴史」をどう受け止めいたかが、定かではない。おそらくは、「36年間の日韓併合の歴史」を意味しているものと思われる。
 金宗輝・大統領外交安保補佐官とは、盧泰愚大統領時代のスタッフであった。
 ベーカー国務長官の「悲痛な歴史が政策協調を妨げるだろう』との予測は、「2005年」現在起きている「歴史認識めぐる日韓問題」を予測していたとまでは、即断できない。
 現在の韓国の盧武鉉政権が、「歴史認識」を取り上げて日本政府に突きつけているのは、「日韓併合条約の無効」であり、「不平等な日韓基本条約の是正」であり、そのうえでの「金銭の要求」である。その言いがかりを強調するために、「日本の歴史教科書」と「靖国神社」をからめて対日を攻撃しているのである。
 朝日新聞のこの記事を読むと、韓国が「日韓併合条約の無効」「日韓基本条約の不平等」をめぐって、対立し、協調できなくなるだろうと、いかにもベーカー国務長官が予測していたかのような錯覚に陥らされてしまう。忘れてはならない。盧泰愚政権は、保守政権であり、いまの左翼政権とは違うのである。
 そもそも日韓併合が、アメリカのタフト国務長官(後の大統領)と桂太郎総理大臣との「密約」により行われた歴史的事実を無視してはならない。日本の立場で言えば、「フィリピンの暴動に手を焼いていたアメリカに頼まれて併合した」のである。このことは、韓国の高校の歴史教科書にも「明記」されて、高校生たちに教えられている。
 セオドア・ルーズベルト大統領は当時、演説のなかで、「日本による野蛮国朝鮮の解放は人類にとって幸福になるばかりか、それはWhite burden ならぬYellow burden を担う日本の明らかな運命・Minifest Destinyではないのか、ましてこれに対する一撃すら与えることのできない無能で野蛮な民族、集まれば争い分裂することを事にしている朝鮮人、かりに統一国家が形成できたにせよ、朝鮮がアジアにおいて何の脅威にもならないと、判断した」と述べている。
 北の方からは、ロシア帝国が「南下政策」により、旧満州から朝鮮半島へ侵略の牙を剥き、日本海から太平洋に進出しようとしてい時期だっただけに、アメリカは、ロシア阻止の上からも、日本の軍事力を利用せざるを得なかったのである。「日韓併合」は、アメリカの戦略の一環であり、日本独自で成しえたものではなかった。これが、「正しい歴史的事実」であり、「この事実を正しく認識」することが、「正しい歴史認識」なのである。いまさら「日韓併合条約が無効」と言っても、国際法上は、認められない。「日韓基本条約」についても、然りである。
 ベーカー国務長官が、「36年の日韓併合の歴史」について、「悲痛な歴史」というのなら、その原因をつくったのが、アメリカ政府自身であることを大前提に予測すべきである。また韓国は、まず、アメリカ政府にも謝罪を求めるのが筋であろう。その当時国であるアメリカのベーカー国務長官が、「朝鮮半島問題」を他人事のように取り扱うのは、「正しい歴史認識」とは言えない。
 朝日新聞の記事が、いかに奇妙奇天烈であるかは、ほかの新聞の記事と比較してみれば、歴然としている。
 たとえば共同通信の記事は

韓国が日本の関与に難色 14年前の6カ国協議構想 (共同通信) - goo ニュース

 「北朝鮮、韓国に当時、日本、中国、ソ連を加えた現在の6か国協議と同様の枠組みでの問題解決を構想した当時のベーカー米国務長官に対し、韓国が日本の関与に強い難色を表明していたことが14日、解禁された米公文書から明らかになった」「ベーカー長官と韓国の盧泰愚大統領との会談で、金宗輝・大統領外交安保首席秘書官が日ソ両国には『朝鮮半島の政治に首を突っ込まないでほしい』と発言したことが明記されている」

と報じている。
 この記事を読む限り、当時の韓国政府が、「日韓併合条約が無効」などを要求して「歴史認識」を問題にしようとしていたとは、とても受け取れないのである。「悲痛な歴史」を今日の「歴史認識」と無理矢理、重ね合わせて報道する姿勢は、まさに「歴史的事実」を捩じ曲げる「偏向報道」と断罪してよい。

コメント (1)
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