世相を斬る あいば達也

民主主義や資本主義及びグローバル経済や金融資本主義の異様さについて
定常で質実な国家像を考える

●隷属と云うぬるま湯 米国よりも早く沈むわらい話

2019年05月28日 | 報道

●隷属と云うぬるま湯 米国よりも早く沈むわらい話

此処ここに至って、今さら、日本の経済を好転換するとか、更なる経済成長を目指すとか、そのような言辞に政治が明け暮れているようでは、根本的に自国の問題を捉えていない、いわば、為にするキャッチコピー政治なのである。


最近、コラムの執筆が途絶え気味なのは、激動の世界情勢から隔離された自民安倍のファンタジー政治が、善かれ悪しかれ、何の意味もない政治だと判っていながら、その政治に“NO”を突きつけない主権者が多数を占めていると現実を知った所為かもしれない。



安倍晋三が、どれほどの悪政を行おうと、或いは、善政に気づいたとしても、現在の日本の構造的根本問題に与える影響は軽微と見ている。そう思うと、今さら、安倍の悪口を書いても、徒労だと気づいたからである。



やはり、日本が変わるには、誰が何と言おうと、対米従属な濃密な不貞関係を清算しない限り、永遠に意味のない政治は繰り返されるだろう。



令和に入り、初の国賓として、日本のメディア界が大フィーバーして歓迎している米国大統領ドナルド・トランプ報道だ。共同声明も何もなく、ただ、宗主国の大統領が、支配国の象徴天皇に会いに来た、それだけのことに、あんな馬鹿げた警備を敷いたのである。



無論、第二次大戦の敗戦国から立ち直る方法として、米国追随は、歴史的に必然だった面が大きいのは事実だ。



東西冷戦という世界的構図においても、西側の一員として、対米従属には“理と利”があったと言えるだろう。



しかし、東西冷戦の崩壊と云うターニングポイントにおいて、日本では、東西冷戦の崩壊後の世界秩序などについて、本気で議論された痕跡が見られない。



つまり、東西冷戦時に出来上がった、日本国中に“隷米マインド”が充満していて、対米独立など、意味のない議論だと思い込まれてきたわけである。



しかし、世界全体を見まわしたとき、英国を含むEU諸国、ロシア、中国、アフリカ、中東、南米諸国では、米国追随に関して多くの議論が交わされていた。



韓国、北朝鮮、ASEAN諸国においても、対米関係に関して、それなりの議論がなされた。



しかし、唯一、日本と云う国だけは、対米関係の距離感など考える余地もなく追随した歴史的経緯がある。



政界も、官界、経済界も、国民の末端に至るまで、パックスアメリカが永遠と云う幻想の中で思考停止していた。



当然だが、そのような思考停止の中で、ポジションの獲得競争がなされていたわけだから、日本と云う国は、時間を追うごとに、病的なまでに“親米国家”の道まっしぐらになったわけである。



そんな中でも、対米従属関係に抵抗した政治家はいる。石橋湛山、鳩山一郎、田中角栄、鳩山由紀夫等々だが、田中角栄を除けば、明確な政治的足跡を残すことは出来なかった。



今の日本は、対米従属の中でのポジション争いが行われ、その勝者が、支配層に、然るべくポジションを得ているので、対米自立を目標にしても、何ひとつ得るものがない世界が出来上がっている。



つまり、政治における環境が、岩盤に近い強靭さがあるため、だれ一人、手も足も出せない状況になっている。



このような状況では、“嫌米主義”の筆者といえども、手も足も出せないのが現実だ。



おそらく、お利巧な国民の多くは、“嫌米”な態度を取ること自体、自分や自分の家族にマイナスな影響が及ぶと考え、仮にそのような気持ちがあっても、押しとどめているのだろう。



このような状態になると、自力で、対米従属な日本の状況を変えることは不可能になってしまう。



どこかの国が、米国を滅ぼしてくれるか、連邦制が崩れて米国が消滅するか、米国にだけ隕石が落ちるなど、SFな想像の世界で愉しむしかなくなることになる。



我が国の三権が、対米従属を続け、重要な自己決定権を失っている限り、国民が、疑似主権者として、疑似的主権を行使しても、国の仕組みが変わらないことを自覚している国家では、選挙にどれ程の意味があるのか、甚だ疑問だ。



このように考えていくと、正直、身もふたもないのだが、本気で、自分の国を考えれば考えるほど、対米従属、隷属が、国を腐らせていると思わざるを得ないのだ。



無論、対米従属によって70点や80点と云う合格点を貰える世界情勢であれば、それも良いだろう。しかし、今後の対米従属・隷属はリスキーなものであり、30点、40点と落第点を取る可能性が濃厚になっているのだから、思考停止の呪縛から解き放たれて貰いたいものだが……。


●否応なく近づくファシズム 政治が機能しない恐怖社会(追記)

2019年05月27日 | 報道

●否応なく近づくファシズム 政治が機能しない恐怖社会(追記)

結局、今の日本の流れは、片山教授が指摘する社会に雪崩を打って突き進んでいる。

その答えは、必ずしも安倍政権が目指すようなものではないだろうが、似たり寄ったりの社会が、日本と云う国に現れるのは避けられないかもしれない。

なかには、こういうファシズムと云うか、全体主義に馴染みそうな世相だから、国家主義が実現できるのではないかと云う幻想を抱くイデオロギー層もいるだろうが、彼らの思い通りになるなるとも言えない。

引用の片山教授インタビュー記事の冒頭、日刊ゲンダイ編集部が語った『権力によって民衆が「束ねられている」状態を指すという。7年に迫ろうとする安倍1強政治の下、この国はどう変わっていったのか。』と、安倍政権の力でどうこうされた部分は少ないと筆者は考える。

片山氏の論も、時代によるファシズム化が主体であり、あくまで安倍政権は、そこにいろどりを添えているに過ぎないと云うことだろう。

 いま現在、安倍政権が一強状態で権力を掌握しているように見える状態も、謂わば時代の要請(あだ花)であり、安倍政権も時代が求めた変化のための通過儀礼に過ぎない、一時のモラトリアム政権なのだと云うことだ。

つまり、いずれは崩壊する安倍一強であり、蜃気楼のような政権だったと気づく日は、それほど遠いものではないと考える。

ここから以下は、片山教授のインタビューを参考にして、筆者の考えをまとめさせて貰おうかと思う。

安倍自民党政権は、現時点で独裁政権のように見えているが、有権者の25%程度の支持の上に乗っかった危うい政権でもあるのだ。有権者、つまり主権者と言われる人々の多くが、その主権の行使を放棄している時代の権力なのだ。

つまり、有権者の25%が反政権政党に投票する行動を、何らかのキッカケで起こせば、改憲の発議どころか、政権の座を追われる可能性もあるわけだから、独裁政権とまでは言えない。

無論、その何らかのキッカケが中々起きず、一時のあいだファシズム体制が構築されたように思える時期が来ることもあるが、歴史から見れば、瞬間的現象だと言えるだろう。

片山氏が言うように、政治が、現実を無視して、維持が不可能になっている自由主義経済と民主主義と福祉国家の接続可能性を主張して政党のベースを作っている限り、その政党はフェイクなのである。

そういう意味では、将来の日本の姿を包含したイデオロギーを持ち合わせている政党は日本共産党だろうが、現時点ではなまくらな印象だ。

これからの時代は、不幸の負担をどのように分配するか、そういうニヒルな政治が求められるわけだが、国民の空気が、それを言ったら、即座に“否定”するもののようだ。

国民の間に階級らしきものが出来つつある現状では、真実をどのように捉え、愚かな国民を騙しながら誘導する、神の手のようなものが必要になる。

金持ちではないが、貧困と云うほどでもない幸福だと思える社会。このイメージを訴える政党が出てくるまで、日本の政治は、国民の心から乖離するに違いない。

 市場原理主義で、経済成長を謳う政党であるなら、それらの幻想につきあう国民だけの政治の時代が続くのだ。

また、加えて言うならば、世界がそっぽを向き始めた米国と云う国との距離を、どのようにマネージメントするかと云う問題にも向き合わざるを得ない。

しかし、現状では、日本共産党といえども、対米自立の旗幟を鮮明にしているとは言えないのが現状だ。


≪片山杜秀氏 日本は“束ねられる”ファシズム化が進んでいる

この国は再びファシズムに侵されている――。現実を鋭く分析した思想史研究者の対談集「現代に生きるファシズム 」(小学館新書)が話題だ。第1次世界大戦後のイタリアで生まれたファシズムはヒトラーのナチズムとも、中国や北朝鮮の全体主義とも、ロシアのそれとも違う。権力によって民衆が「束ねられている」状態を指すという。7年に迫ろうとする安倍1強政治の下、この国はどう変わっていったのか。






◇  ◇  ◇  

 ――ファシズムはどの程度まで進んでいますか。

 数字で示すのは難しいですが、かなりファシズム的状況にあると言っていいと思います。独裁政党こそありませんが、野党は与党に似たり寄ったり。保守主義的で、資本主義の延長線上に立って「この国をもう一度豊かにします」と幻想をうたっている点では、共産党以外の野党は与党と変わらない。

 ――国民に選択肢がないと?

 自動的に大政翼賛会化しています。55年体制のような与野党のイデオロギーの差異がない。思想や政策に十分な相違がないとすれば、有権者は同じことをやるなら経験を積んでいる政党の方が安全と考える。だから、安倍首相が面目を失うことがあっても、「悪夢のような民主党政権」とリフレインすると、一定数の国民がリセットされてしまう。現政権の方がマシだと考えて、失敗が棒引きになる。左派が警戒する憲法改正などしなくても、戦後民主主義の常識とは異なるフェーズに入っていることを深刻に認識する必要があります。

■没落する中間層が“希望の星”にすがりつく  

 ――ファシズムは全体主義と混同されやすいですが、「特定の政治や経済の体制を呼びならわす言葉ではないと考えるべき」「体制論ではなく情況論の用語」と指摘されています。

 個を原則的に認めないのが全体主義で、個のスペースが幾分なりとも保障されているかのような幻想を与えるのがファシズムと言えばわかりやすいでしょうか。みなさんを自由にするため、夢を取り戻すため。いっとき不自由になっても我慢して下さい。これがファシズムのやり方です。しばしば不自由のままで終わるのですが。同質化までは至らず、「束ねる・束ねられる」ことをたくさん感じているときがファシズム的状況と言えるでしょう。ファシズムは社会主義か自由主義かで割り切れない。変幻自在に形を変える。精神論や右翼的な旗印が有効であれば、それをトコトンやる。国民の団結を保つために社会主義的施策が有用であれば臆面もなくやる。理屈は抜き、束ねられれば手段を問わないのがファシズムです。  

 ――右派に支えられる安倍政権が教育無償化などの福祉政策に走るわけですね。一方、国民が「束ねられてもいい」と考えるのはどういう背景が?

 資本主義の危機の時代に没落する中間層の“希望の星”としてファシズムが現れるからです。典型例はワイマール共和国時代のナチス支持者、トランプ米大統領に熱狂するラストベルトの白人労働者。もっと豊かになるはずだったのにどうもおかしい、社会のせいでうまくいかない、と感じている階層です。日本も似たような状況です。就職先は終身雇用で、何歳で結婚して子供を何人つくって、何歳までにマイホームを持って……といった従来の生活モデルが崩れた。そうすると、自由を少しばかり差し出しても、みんなで束ねられることで助け合い、危機的状況を乗り切ろうという発想になる。自由を取り戻すステップとして、束ねられることが必要だという思考に入っていきます。

■3・11でフェーズが変わった  

 ――ターニングポイントはいつですか。

 3・11でしょう。冷戦構造崩壊後、そういうフェーズに入っていく流れはありましたが、3・11が決定的だと思います。この経験でフェーズが変わってしまった。日本が災害大国だという認識は共有されていましたが、政府は対応可能な防災計画を立て得ると説明し、国民の不安を打ち消してきた。ところが、東日本大震災では日本列島全体が揺れ動き、原発事故はいまだに収束しない。その後も各地で地震が頻発している。南海トラフ地震のリスクもある。いつ巨大災害に襲われても不思議ではない状況をウソとは言えない。地震予知は不可能だとオフィシャルに認めている状況下で、われわれは明日をも知れぬ身で生きている。2011年以降、日本人は刹那主義と虚無主義に陥ってしまいました。真面目に考えても対応できない災害と隣り合わせで暮らしているわけですから。

 ――危機感の点で言うと、安倍政権は一時は中国包囲網に躍起になり、核・ミサイル開発に猛進する北朝鮮を“国難”と呼び、足元では韓国と対立を深めています。

 内政で国民に対する訴えかけが弱くなると、外に向かうのは歴史が物語っています。富の再分配といった社会主義的政策で国民のガス抜きをするには、経済成長が必須。それができない場合は非常時の持続が有効に働く。北朝鮮がミサイルを発射するたびにJアラートを作動させれば、5年や10年は簡単にもってしまう。  

 ――刹那主義、虚無主義、対外的緊張が重なればますます思考停止です。

 リアルに考えれば、この国は経済成長しないかもしれない、貧富の格差が拡大するかもしれない、社会保障はますます削られていきそうだ……。安倍政権が夢物語を喧伝しても、不安は払拭されない。さらに、AI社会になれば人間は不要とされかねない。しかし、こうした問題が国民的議論に結びつかないのは、安倍政権がだましているからというよりも、国民が厳しい現実から目をそむけているからです。国民の気分も問題なのです。なぜかというと、現実を直視しても解決のしようがないから。こうして刹那主義や虚無主義が増幅され、便乗したファシズムのオポチュニスト(ご都合主義者)的な部分がかぶさってくる。世論ウケのいい政策を次々に打ち上げ、中途半端なまま別のテーマに移っていく。  

 ――本来は、いい加減な政治に対する国民の怒りが爆発する局面です。

 声を上げ続ける人は少数派。「実現不可能なことでも言ってくれるだけでうれしい」というレベルまで国民の思想が劣化していると思います。お上はうまく統制するため、下から文句が噴き出ないようおべんちゃらを言う。それを期待する国民感情がある。上下の平仄が合っている怖さがある。「おかしい」と訴える人の声は、「平仄が合っているんだからしょうがない」と考える人のニヒリズムにかき消される。原発事故への対応、反応もそうです。嫌な話を聞いても解決できないし、東京五輪の話題で盛り上がった方がいいという雰囲気でしょう。元号が変わった、新しい時代を迎えた、お札も変わる、それぞれの花を大きく咲かせることができる……。そんなことで内閣支持率が上がる。政府の考えと国民の求めが無限にかみ合っている。終末的ですね。

■サンダース目線の民主社会主義的発想が必要

 ――流れを変える手だてはないのでしょうか。

 仮に安倍政権が倒れても、世の中がガラリと変わることはないと思います。「決められない政治」を否定した結果、政治主導の名の下に内閣人事局が設置されて官僚は生殺与奪権を握られ、官邸は霞が関の情報を吸い上げて権力を肥大化させ、戦前・戦中にはなかった強力なファシズム体制を敷いた。「決められる政治」の究極の形態を実現したのです。唯一可能性があるとしたら、来年の米大統領選に再挑戦するバーニー・サンダース上院議員のような民主社会主義的な発想を広げることでしょう。人権を擁護し、ファシズム的なキレイごととは一線を画す社会を目指すのです。最大多数の国民がなるべく束ねられずに、しかし助け合って生きていく。人間社会の当たり前の理想を思想的にハッキリ表明する政党が大きな形をなさないとまずいでしょう。難しいですが。  

 ――民主社会主義的なプランを掲げる政治勢力が必要だと。

 高度成長が再現できれば、新たな政策実行にいくらでも予算が付き、昔ながらのパイの奪い合い政治でも結果オーライでうまくいく。しかし、もはやそこには戻れないでしょう。戻れるかのような甘言に何となくごまかされているうちに、残された貯金すら減らしているのが今の日本ではないですか。この現実認識を持てるか持てないかです。本当の現実を思い知れば、民主社会主義的な目線で考えるしかないのではないですか。最大多数の国民の人権と暮らしが守られ、人間を見捨てない国を目指すサンダース目線の政治が必要でしょう。  (聞き手=坂本千晶/日刊ゲンダイ)

 ▽かたやま・もりひで 1963年、宮城県生まれ。慶大大学院法学研究科博士課程単位取得退学。慶大法学部教授、教養研究センター副所長。音楽評論家としても活躍。著書「未完のファシズム 」で司馬遼太郎賞受賞。元外務省主任分析官の佐藤優氏との対談シリーズ「平成史 」「現代に生きるファシズム 」の刊行を記念し、6月24日午後7時から、東京・紀伊國屋ホールでトークショー開催。問い合わせは℡03・3354・0141へ。
 ≫(日刊ゲンダイ)


●米大統領二期目に向けて 強硬策は経済政策に留まるのか?

2019年05月15日 | 報道

 

日本人の知らないトランプ再選のシナリオ―奇妙な権力基盤を読み解く
渡瀬 裕哉
産学社


●米大統領二期目に向けて 強硬策は経済政策に留まるのか?


NY市場が600ドル下げても、東京市場が124円しか下げなかったのは、おそらくドルが売られなかった現象があったからだろう。

為替の安心感が株式市場の精神安定剤となった模様だが、“トランプライザー”と云う世界恐慌のひきがねは、常に腰だめ状態なので、安心と云う期待は、常に裏切られている。

トランプを大統領選の泡沫候補と認定した時点から、過去の知恵や知識の多くが使い物にならないと云う証明がなされている。

英フィナンシャル紙がコラムニストの名を借りて、今後のトランプによる、米中経済摩擦について語っているが、彼らが使った写真では、米中ロのロシアの国旗に焦点があっているのが気になった。

気になったと云うか、今回のトランプ関税戦争は、そのまま、現実の物理的戦争にまで繋がるリスクがあることを頭の片隅に置いておくのが、21世紀の大人の常識かもしれない。

トランプさんにしてみれば、世の中人々があり得ないと思うことを、ちゃぶ台返しする快感に酔いしれているわけだから、絶対に再選を成功させようとしている。

その第一弾が、世界中を巻き込む“大関税戦争”なのだが、この経済戦争だけでは不十分であれば、ホンマモンの戦争も再選戦略リストにと、含ませているのは確実だ。

これは、筆者だけの想像ではないだろう。正常に想像力が養われた人々なら、僅かな杞憂としてでもお腹の底の方に持っているに違いない。

米中や日米の通商問題で、トランプ大統領の再選に目途が立てばいいのだが、そう思うようにはいかないと考えておくべきだ。

そうなると、トランプ大統領に残された手は、歴然たる米軍の戦争状態の設定である。

おそらく、米国本土への、ICBMによる核攻撃の不安がない国が相手の戦争だ。 直接、米軍がメインの戦闘である必要はないが、米軍が出動している事実が必要だ。

 一番可能性があるのはベネズエラだが、大統領再選への影響が大きい戦闘とはいえない。

中露と米軍が戦うことは想像しがたいので、イラン、シリア、ゴラン高原辺りが、最も候補として有力だが、シリアやウクライナにも火種は残っている。

朝鮮戦争と自衛隊という構図も、無理すれば危機的戦場候補になる。

たかが、大統領の再選のための戦争相手に選ばれる、多くの国々も、いい面の皮だが、しばらくはつきあう以外選択肢がない。

まぁ、取りあえず、英フィナンシャルの常識的経済見通しを読んでおこう。


≪[FT]勢いづく米通商タカ派、最悪のシナリオは?
トランプ米大統領が10日、2000億ドル(約22兆円)分の中国製品に追加関税の発動を決定し、中国も13日に報復措置を発表したことで、その影響を注視するのは米中両国だけではなくなっている。 トランプ政権の発足以降2年4カ月にわたり、世界各国の経済外交当局者は米国との通商関係の管理に苦慮し、米国が中国との摩擦を強めるなかで次は自国が標的になるのではないかと不安を募らせてきた。


 


米政権内外のタカ派が通商政策に関して勢いづいていることは明らかだ。

トランプ政権が米国と最も近い関係にある同盟国や多国間貿易体制を犠牲にすることもいとわず、中国以外の国々にも攻撃的な姿勢を取る事態が危惧されている。

これまでは、脅しをかけて交渉で優位に立とうとするのがトランプ流だという楽観的な受け止め方があったが、現実にはごり押しの姿勢を強める一方だ。25%の対中関税はトランプ氏でもリスクが大きすぎるとみていた多くの人々も、ここにきて他国との貿易摩擦についても見方を改めるようになっている。

最も注目される3分野それぞれに関して、排除できない可能性を盛り込んだ最悪のシナリオをまとめてみた。

(1)自動車関税の発動 トランプ大統領は16日、米商務省が提出した報告書に関する判断の期限を迎える。報告書は未公表だが、自動車の輸入は米国の安全保障上の脅威であるとしているとみられる。これが、トランプ氏には関税発動の法的根拠となる。 この可能性を受けて、自動車メーカーへの影響が最も大きい欧州連合(EU)や日本、韓国を中心に懸念が高まっている。

これまでは、そうした措置は経済的影響があまりにも大きく、(米国内にも自動車関税への政治的支持はほとんどないため)トランプ氏も実行には移さないものと思われていた。 トランプ氏は判断の期限を6カ月延ばし、この問題について各国と協議に入ることが可能だ。だが、もっと攻撃的な措置として、関税を発動した上で実施を一時的に凍結し、EUと日韓に剣を振りかざすというやり方がある。ただちに自動車関税を課すという「最後の手段」は現時点でも予想されていないものの、「ダモクレスの剣」のような一触即発の事態となる可能性も、排除できなくなっている。

(2)北米自由貿易協定(NAFTA)の破棄 2018年12月にアルゼンチンで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議に先立ち、トランプ氏は鳴り物入りでカナダのトルドー首相、メキシコのペニャニエト大統領(当時)と共に、NAFTAを改訂した「USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)」に署名した。

だが、米議会民主党と一部の共和党議員の抵抗で、協定の批准は難航している。通常であれば、トランプ氏が議会に譲歩し、メキシコとカナダ両国の鉄鋼・アルミニウム製品に対する関税撤廃などの要求に応じることが見込めるかもしれない。だが、中国との摩擦がさらに激化したことから、トランプ氏がごり押しの姿勢を一気に強め、言い分が通らなければ、米国に重い代償を伴う現行NAFTAからの離脱を言い出すのではないかとの懸念が高まっている。

(3)世界貿易機関(WTO)との決別 米国はWTOから離脱すべきだというトランプ氏の主張は、しばらく鳴りを潜めていた。だが、中国との協議の失速で再び現実味を帯びるかもしれない。関税が高まり、中国を抑制するものが少なくなった現在の世界において、WTOは2大経済国を対話に引き戻し、ルールに従って行動させるための理想的な場になりうる。 だが、米国がそう考える可能性は低い。トランプ氏は、WTOを中国との商業的戦争を邪魔する存在とみなし、米国はWTOの改革を求めるのではなく、WTOに対する支持を完全に取り下げることになるかもしれない。

このような状況下、同じく貿易大国のEUと日本は身を潜め、米中の交戦に巻き込まれないようにしてきた。 先週来の米中間での報復関税の応酬合戦の後でも、EU当局者は依然として、トランプ氏が今週に判断期限を迎える欧州車への関税発動を延期し、昨夏に開始が合意され間もなく正式に始まるEUとの通商協議の結果を見極めようしているとの見方を崩していない。 それでも、協議で取り上げる内容について(農業問題を含めたい米国と、除外したいEUの)双方の意見には大きな隔たりがある。

トランプ氏がけんか腰になるようだと、大西洋をはさんだ米EU間の停戦協定は、EUが見込んでいるよりも早期に破棄される可能性もあるのだ。

By James Politi & Alan Beattie (2019年5月13日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/) (c) The Financial Times Limited 2019. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.  ≫(日経新聞)

参考世界の動き
■激動必至 令和日本、世界どう動く 安全保障で迫られる乏しい3択のリセットが日本の起点に
■米国が仕掛ける「通商椅子取りゲーム」の五里霧中
■不気味な上昇を続ける株式市場…これは「不景気の株高」か?(「令和」後は流石に下がっているが・・・。)
■「同時崩壊」もありえぬ事ではない韓国・北朝鮮の苦しい現状
■米朝決裂が中東に飛び火し「第3次世界大戦」を招く可能性
■米中露で拡大する「軍隊の民営化」その語られざる実態
etc

【中東大混迷を解く】 シーア派とスンニ派 (新潮選書)
池内 恵
新潮社

 

中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌 (NHK出版新書)
高橋 和夫
NHK出版

 

GAFA×BATH 米中メガテックの競争戦略
田中 道昭
日本経済新聞出版社

 


●世界同時多発戦争 巻き込まれる自衛隊、米国は一枚岩なのか?

2019年05月10日 | 報道

●世界同時多発戦争 巻き込まれる自衛隊、米国は一枚岩なのか?

見出しを書くだけで疲れてしまった。

安倍晋三では乗り切れない、世界の現状。

菅官房長官の人物査定が実行されつつあるのか。

つまりは、地検特捜により、国会閉会後の内閣上層部の逮捕も視野か?

すべて、あまりにも荒唐無稽なので、すべて、筆者の妄想の範囲での話にしておこう。

今夜は、状況を分析できる、幾つか目についた記事の“見出し”を並べておこう。

検索すれば、その記事にヒットするはずだ。

これ以上の話は、明日?明後日?。

■激動必至 令和日本、世界どう動く 安全保障で迫られる乏しい3択のリセットが日本の起点に

■米国が仕掛ける「通商椅子取りゲーム」の五里霧中

■不気味な上昇を続ける株式市場…これは「不景気の株高」か?(「令和」後は流石に下がっているが・・・。)

■「同時崩壊」もありえぬ事ではない韓国・北朝鮮の苦しい現状

■米朝決裂が中東に飛び火し「第3次世界大戦」を招く可能性

■米中露で拡大する「軍隊の民営化」その語られざる実態

5月10日は以上まで。


●夏前に起きる改憲のリスク? 安倍はW選でも勝てない

2019年05月08日 | 報道

●夏前に起きる改憲のリスク? 安倍はW選でも勝てない

10連休で、頭、身体、そして財布もズタズタだ。おそらく、多くの日本人の大人はいい迷惑の日々を送っていたに違いない。

当然のように、ブログも2週間ほど手つかずだったが、一応、ニュースは見聞きしていたので、浦島太郎にはなっていない。

今夜は疲労困憊なので、いま一番気になることに関するコラムと特集記事をピックアップしたので、通読願いたい。

最近は、衆参同日選云々で政治ニュースは騒がしいが、安倍自民が、この夏に、衆参同日選を行ったとして、現在の改憲勢力、衆参2/3議席以上の議席を確保することは、相当困難と考えている。

つまり、参議院選単独であろうが、衆参同日選であろうが、衆参2/3議席確保は、あまりにも不確実だと思う。 :現在の衆参2/3議席確保は奇跡のような偶然であり、もう二度と、日本の政治シーンに現れない現象だとも考えられる。

と、いうことは、安倍官邸が、確実に「改憲」をしたいのであれば、現在の衆参2/3議席がある6月下旬までに、衆参本会議で議決できるよう、現行法の解釈を“閣議決定”等々の手を使い、捻じ曲げてでも強行採決する可能性があるのではないかと危惧している。

少なくとも、上記のような強硬手段を選択しないと、日本会議等改憲宗教右派勢力を見え見えで裏切ることになり、安倍晋三の命運は、心身ともに抹消される危険すらあるのではないのか。

「憲法審査会」云々の決まりごとが明確ではないだけに、一気呵成、一夜にして「改憲」が姿を表すリスクがあることを、頭も片隅に置くべきだろう。

参議院選単独でも、衆参W選挙でも、現在の衆参2/3議席以上の結果は望めないわけで、八百長が得意な政権なのだから、必ず何か仕掛けてくると考えておくべきだ。


≪「いまの改憲論はフェイク」憲法学者・樋口陽一氏の危惧
 新天皇の即位から3日目で迎えた憲法記念日。日本国憲法の第1章が定めた象徴天皇制とは、政府と国民にどのような態度を求める制度なのか。また、9条に自衛隊を明記する憲法改正が必要だと訴えている安倍晋三首相の問題提起は妥当なのか。憲法が直面する課題について、日本を代表する憲法学者・樋口陽一さんに聞いた。    
  ◇  
――この国では今、憲法改正にこだわる首相が長期政権を維持しています。安倍晋三首相は今度は、自衛隊を憲法に明記する改憲が必要だと訴え始めました。

 「今ある自衛隊の存在を書き加えるだけなら大きな変更ではないのではないかという意見も聞きます。書き加えるという行為の持つ法的な意味について理解が足りないと感じますね。基本的な法原則の一つに『後(のち)の法は先の法を破る』があります。ある法規範にそれまでと違うことを書き加えたら、前からあるルールは失効するか意味を変えるという原則です」

 「憲法9条の条文は削らないまま単純に自衛隊の存在を書き足したら、場合によっては残った現在の条項は失効する恐れがあるのです。戦争放棄をうたった1項と、戦力不保持を定めた2項です」  

――今ある平和憲法の原則を手放す改憲をするのと、同様の行為になりかねないのですか。

 「そうです。軍備拡大への歯止めがなくなり、あらゆる戦争を遂行できることになりかねません。そういう認識をきちんと共有しないまま提起されている今回の改憲論は『政治的な主張』と呼べるレベルのものではありません。フェイク(虚偽)です」  

――自衛隊を書き込むタイプの改憲案が、もしフェイクでなく、政治的な主張になりえるとしたら、その条件とは何でしょう。

 「たとえば、専守防衛を原則として集団的自衛権の行使には厳格な制限をかけた自衛隊であることをきちんと明示する。そんな改憲案を提示すれば、私自身は賛成しませんが、一応フェイクではなく一つの政治的主張にはなるでしょう。しかしそんなことを書き込もうという姿勢はうかがえません」  

――自衛隊を書き込む改正について国民投票が行われたら、賛否はどうなると見ますか。

 「予測はしませんが、単なる個人的な見方を言うならば、現政権の下、安倍晋三氏とその周辺が旗を振る形での改憲ということであれば、幅広い支持には至らず挫折するでしょうね。言葉を積み重ねることで公共社会に共通の枠組みを築き続けていく――そういった文明社会の約束事をあまりに軽んじる政治家たちだからです」  

――日本社会は新しい天皇を迎えました。国民主権の日本国憲法下では2回目の経験になります。憲法と天皇制についていま気になっていることは何ですか。

 「元号は元々は中国の伝統ですね。帝王が時間を支配し、歴史を支配するという意味が元にあります。それを国民主権の今の日本の状況に当てはめるとどうなるでしょう。仮に国民主権が時間を支配し、歴史を支配するとして、その際の国民主権とは具体的には何か。制度的に言えば有権者・国会・内閣ということでしょう」

 「そう考えると、今回のように内閣の長が元号の決定過程で非常に目立ったことをしても、国民主権の論理から外れているというわけではありません。しかし、それで本当によいのか」

 「日本国憲法は天皇を国民の統合の象徴と定めています。新天皇は後世『令和天皇』と呼ばれる存在であり、元号とは、国民がその名で天皇を歴史の中に記憶することになるものです。そうした場面に無遠慮な介入はしないよう、政権はもっと自覚すべきだったと私は考えます。『安倍さんが決めた元号だから私は使わない』という人が現れてはいけないのです」

 「もし『国民の支持で首相になったのだから、私がすべてを決めて何が悪いのか』という首相がいたとすれば、それはあしき国民主権です。ヒトラーが権力を掌握していく際の論理だったのですから。国民主権という言葉を使うときにはそういうリスクがあることを知っておくべきでしょう」  

――樋口さんは長年、「個人の尊厳」の大事さを説いてきました。個人の尊厳という考えは日本社会に根づいたでしょうか。

 「もともと根づくのは難しいものだと思います。自分自身の考えを基準にして生きるというのは、生きにくいことだからです。周囲から浮いてしまうことは避けた方が暮らしやすいと人間は考えがちです。社会の心性で見ても日本は、個人というものを表に出すことが難しい社会の一つです」  

――国民は「個人として尊重される」と憲法13条は規定しています。他方、2012年に発表された自民党の憲法改正草案はその部分を「人として尊重される」に変えました。樋口さんはなぜ、「人」ではなく「個人」と書くことが大事だと考えるのですか。

 「集団のために自分の意見を殺して犠牲になることを『人として価値がある』とみなす傾向があるからです。日本の歴史を振り返っても、その傾向は強く見られます。『個人』を尊重することの大事さは失われていません」  

――第2次世界大戦での敗戦を機に現憲法が施行されて、3日で72年になります。日本国憲法は戦後日本に根づいたでしょうか。

 「ほかの政治課題より憲法改正の方を先にして進めてほしいという意識は国民の間にはない、と私は見ています。その傾向は戦後という時代を通じて大筋では変わっていないでしょう」

 「政治の世界を見ても、55年体制と呼ばれる時代は日本国憲法が根づきつつあった時期だと思います。リベラルデモクラシー(自由民主主義)が大事だという認識を基盤に、日本国憲法へのコンセンサス(合意)が緩やかに共有されていました」  

――55年体制は1955年に始まり、89年の冷戦終結を経て90年代に終わっています。憲法が社会に根づきつつある傾向は20世紀で終わってしまったのですか。

 「いえ、違います。たとえば11年に起きた東日本大震災という悲劇的な危機状況の下で、そのことは確認できたと思います」

 「一つ目はボランティア活動として、組織に依存しない『個』の連帯が見られたことです。憲法13条にうたわれる『個人』が、誰にも命令されずに実践しました」

 「二つ目は、明仁天皇と美智子皇后(当時)の一連の言動が、象徴天皇制を定めた憲法第1章の一つの表れとして人々の記憶に刻まれたことです。三つ目は、泥まみれで救助にあたる自衛隊員を被災者のおばあちゃんが拝んでいたという話です。専守防衛の枠の中で、外に攻めていくことも内に銃を向けることもせず、国民の生活防衛を果たしてきた。そんな自衛隊の長年の積み重ねが背景にあります。憲法9条の定着です」

 「危機的な局面であるからこそ、そこにある憲法コンセンサスが見えてきたのです。憲法が根づきつつある状況は決して失われてはいません。もちろんこれは希望ではあるけれど、希望を超えた現実でもあると思っています」  

――3・11の翌年に誕生したのが今の安倍政権です。樋口さんはこの間、国会周辺にも出て近代立憲主義の大事さを訴えましたね。

 「憲法改正草案を出した12年以降、自民党は5回の国政選挙で勝利し、それを正当化の根拠にしています。そうした状況だからこそ、それでも権力は抑制的に使われるべきだという近代立憲主義が存在意義を強めたのです。たとえ時の民意が圧倒的に支持した場合であっても、権力が自己抑制しなければいけない局面はあります」  

――世界で今、日本国憲法はどういう位置にいるのでしょうか。

 「憲法から『先輩国が逃げ出す』風潮に直面していると思います。明治以降の日本が憲法を考える際のお手本にしてきた欧米で、憲法から逃げ去る傾向が見られる現象です。典型はトランプ大統領の米国でしょう。ほかならぬ西欧デモクラシーの総本山で、反リベラル化が進んでいるのです」  

――日本がお手本になる時代がやって来たのでしょうか。

 「逆でしょう。米国には、日本よりはるかに強靱(きょうじん)な『政権への抵抗の岩盤』が形作られてもいます。強権政治が台頭したとされるポーランドやハンガリーにも反発する力は現れている。政権の金権腐敗を追及するジャーナリストが暗殺された東欧スロバキアでは、抗議する人たちの中から、45歳の政治家としては素人に近い女性が大統領選挙で当選しました」

 「日本では、遠くから見れば表面的には大きな波風が立っていないように見えるのかもしれませんが、フェイクが横行し、すべての議論の前提である『言葉が持つはずの意味』が失われています。深層で何かが溶解し始めた状況、頑丈だと思われてきたものが崩れ去り始めている感覚があります」

 「人口の減少、財政の破綻(はたん)、国としての友人がいない日本の姿……。ぼけっとしていていいのか、と言いたくなります。これは決して自虐ではありません」(聞き手 編集委員・塩倉裕)
     ◇  
〈ひぐち・よういち〉 1934年生まれ。東京大学名誉教授。「いま、『憲法改正』をどう考えるか」など著書多数。「立憲デモクラシーの会」の共同代表にも。
 ≫(朝日新聞)


≪憲法改正を訴える日本会議の「危ない」正体
「宗教右派の統一戦線」が目指すもの

政権と密接な関係を持ちつつ、憲法改正を訴える任意団体「日本会議」。取材を続けるジャーナリストが、近著でその危険性を明らかにした。

安倍政権のコアな応援団となっている日本最大の右派組織、日本会議を端的にどう評すべきか。先ごろ上梓した『日本会議の正体』(平凡社新書)を取材・執筆しつつ考えたのだが、ある雑誌で対談した先輩記者・魚住昭さんの言葉に膝を打った。「宗教右派の統一戦線」。魚住さんはそう評した。そのとおりだと私も思う。

1997年5月、当時の2大右派組織──日本を守る会と日本を守る国民会議が合併する形で日本会議は発足した。現会員は約3万8千人、日本会議に呼応する日本会議国会議員懇談会に名を連ねる衆参両院議員も約280人を数えるに至り、組織の役職などには右派系の著名文化人、学者、財界人らが就いてきた。初代会長はワコール会長だった塚本幸一氏。2代目会長は石川島播磨重工業会長だった稲葉興作氏。3代目会長は元最高裁長官の三好達氏。現会長は杏林大学名誉教授の田久保忠衛氏。

しかし、組織運営の中枢を担うのは新興宗教団体・生長の家に出自を持つ元活動家の面々である。

■地道で執拗な右派運動
強調しておかねばならないが、現在の生長の家は政治とのかかわりを絶っており、日本会議となんの関係もない。だが、戦前に谷口雅春が創始した生長の家は、右派色の強い新興宗教として知られ、戦中は軍部の戦争遂行を賛美して教勢を拡大した。戦後もその姿勢は長く変わらず、60年代には生長の家政治連合(生政連)を結成して政界進出を果たす一方、右派の学生組織として生長の家学生会全国総連合(生学連)も立ち上げ、全国の大学を席巻した全共闘運動に対峙させた。

ここに集った元活動家がいま、日本会議の中枢を牛耳っている。事務総長として組織実務を取り仕切る椛島有三氏。政策委員として理論構築などを担う百地章(日本大学教授)、伊藤哲夫(政治評論家)、高橋史朗(明星大学特別教授)の各氏。伊藤氏は安倍首相のブレーンに数えられ、現在は首相補佐官に就く衛藤晟一参院議員もかつては生学連の活動家だった。

同じく生学連の元活動家で、現在は評論家、作家として幅広く活動する鈴木邦男氏はこう断言した。

「日本会議の大もとは、生長の家だと僕も思います」

彼らは全共闘運動と対峙する中で組織運動のノウハウを身につけ、ある種の「宗教心」に突き動かされて地道な、そして執拗な右派運動をつづけてきた。とはいえ、彼らに巨大な資金力や動員力があるわけではなく、強力に下支えしているのが神社本庁を筆頭とする神社界と、数々の右派系の新興宗教団体である。なかでも全国に8万以上の神社を擁する神社界のパワーは圧倒的だ。しかも戦前・戦中期、国家神道にもとづいて厚く庇護された神社界には、戦前回帰願望に似た復古思想がくすぶっている。

■「武道館一杯」の動員力

その頂点に君臨する神社本庁は、自らの政治団体である神道政治連盟(神政連)などを通じて右派政治家や日本会議を支援している。私の取材に応じてくれた神政連神奈川県本部長で、師岡熊野神社(横浜市港北区)の宮司・石川正人氏は、日本会議などが主催する集会の費用などを神政連が応分負担していると明かし、その動員力を次のように語っている。

「例えば『武道館を一杯にしましょう』というなら、それはすぐにできることだと思います」 ──つまり1万とか2万とか?

「その単位なら普通に(動員)できると思います」

読者の多くは奇妙に思うかもしれない。いったいなぜ、神社本庁を筆頭とする神社界は、新興宗教などとタッグを組んで日本会議を支えるのか、と。これについても石川氏はこう明かしてくれた。

「多くの(新興宗教の)教祖は、ありがたいことにお伊勢さん(伊勢神宮)を大事にするし、地域のお宮さんを大事にしましょうとおっしゃってくれている」 ──そうした新興宗教も日本会議や神政連の活動を下支えしていると。
 
「下支えしていますよ。日本会議の活動も、いろいろな宗教団体とか、あとは自衛隊のOB会や日本遺族会などが力になっている。動員面では、まさに神社界と宗教教団です」

実をいうと、こうした宗教右派の内部には従来、改憲論ひとつをとっても、「教理問答=カテキズム」と称される主張の相違があった。例えば生長の家の開祖・谷口雅春は、占領下につくられた現憲法は「無効」であり、明治憲法を「復元」すべきだと訴えた。その主張を絶対視する者には、現憲法の「改正」など許し難いものに映る。こうした小異を措(お)いて大同に就こうと結成されたのが日本会議だった。まさに“宗教右派の統一戦線”というにふさわしい。

もちろん、宗教団体や宗教家が政治運動をしてはならないわけではない。しかし、宗教団体や宗教家の政治活動は政教分離を侵しかねず、「宗教心」に駆動された日本会議の運動と主張は、実際に近代民主主義社会の大原則を容易に踏みにじる。

その兆候は、事務総長・椛島氏の主張にも端的に見てとれる。長年にわたって椛島氏が率いた右派組織、日本協議会・日本青年協議会の機関誌「祖国と青年」には、こんな“アジ文”がいくつも掲載されてきた。
 
< 今日の日本は、祭政一致の日本の国家哲学を政教分離の思想によって否定する思想風潮がある。(略)政教分離思想によって、祭政一致の国家哲学を否定することは(略)、まさに歴史を冒涜する愚挙と言わねばならない >(同誌90年8月号)
 
< 天皇が国民に政治を委任されてきたというのが日本の政治システムであり(略)、主権がどちらにあるかとの西洋的二者択一論を無造作に導入すれば、日本の政治システムは解体する。現憲法の国民主権思想はこの一点において否定されなければならない >(同誌93年4月号)
 
政教分離や国民主権の否定。さらには過大なまでの国家重視と人権の軽視。プンプンと漂う天皇中心主義と自民族優越主義=エスノセントリズム。宗教学者の島薗進氏(東京大学名誉教授)はこう警鐘を鳴らす。
 
「停滞期において不安になった人びとは、アイデンティティを支えてくれる宗教とナショナリズムに過剰に依拠するようになる。戦前の場合、国体論や天皇崇敬、皇道というようなものに集約されました」 ──それはやはり危ういと。
 
「ええ、非常に危ういと思います。かつては“危ない勢力”と認識された者たちが、いまや立派に見えてしまっている。これは驚くべきことです」

■各地の神社で改憲署名
そう、少し前まで日本会議に集うような宗教右派は、極論を唱える「危ない勢力」と認識されていた。だが、中国の経済成長などで日本の国際的地位が相対的に低下し、国内でも格差や貧困が広がり、不安や焦燥が社会を覆うなか、日本会議的な主張に共感する層はうっすら広がっている。何よりも安倍政権の存在が彼らを勢いづけている。
 
椛島氏は、安倍政権誕生後の運動について、こんなふうに語ったこともある。

「日本会議は阻止・反対の運動をする段階から、価値・方向性を提案する段階へと変化した」

その日本会議が現在、総力を挙げて取り組んでいるのが改憲に向けた運動である。戦後体制を憎悪する日本会議にとって、現憲法は唾棄すべき戦後体制の象徴であり、同じ方向を向く安倍政権下こそが改憲の最大チャンスと捉えている。フロント組織である「美しい日本の憲法をつくる国民の会」を立ち上げて発破をかけ、1千万人を目指して全国各地の神社の境内でも改憲賛成の署名集めが行われたほどだ。本稿執筆時点では参院選の結果は不明だが、その結果次第では改憲が具体的な政治スケジュールに上ってくる。戦後70年の歩みは、現政権と“宗教右派の統一戦線”によって突き崩されてしまうのか。時代の大きな分水嶺である。(ジャーナリスト・青木理)

【日本会議の役員を代表者などが務める宗教団体】
神社本庁 、伊勢神宮 、熱田神宮、 靖国神社、 明治神宮、 岩津天満宮 、黒住教 、大和教団、 天台宗 、延暦寺、 念法眞教、 佛所護念会教団 、霊友会、 国柱会、 新生佛教教団 、崇教真光 、解脱会

※アエラ編集部が2016年1月、日本会議との関係が取りざたされている宗教団体に取材・アンケートした。無回答でも、日本会議のホームページなどで確認できた団体は掲載した。
≫(東洋経済ONLAINE:本の紹介:AERA 2016年7月18日号)


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