私の両親はちっぽけな町工場(こうば)を運営していた。夫婦二人で。
はっきり言って裕福ではなかったけど、病弱な身で無理を重ね、土曜も日曜も休むことなく働いていた両親だった。
工場には今は使われることがほとんどないカム式の旋盤が並ぶ。
実家の隣が工場だったので、私も小学生から多少は手伝い、またこういった工作機械を見て育ったことが、今の人生に大きく影響していると思う。
その旋盤がこの週末に家からいなくなった。
両親ともに健在ではあるが、父親の脳梗塞をきっかけに廃業。工場の中ではそのときから時間が止まっていた。
さすがにこのままでは良くないので、もろもろの事情によりようやく設備を引き取ってっもらえることになった。
今旋盤の主流はNC(コンピュータによる数値制御)式。
この設備のメーカはすでに存在しないが、部品供給を引き受けている方がおり、設備を引き取りに来られた方もその関係者
引き取りにこられた方も高齢で、「今の機械はよう扱わん。神様がわしの引退にカム式の時代が終わるのをあわせてくれたんかなぁ」と言っていたのが印象に残った。
私をメカ好きにしてくれた原点。ありがとう。