避難前は福島県田村市都路に住み、現在石川県金沢市に避難中の浅田正文さん(「みどりの未来」会員)が6月28日東京電力株主総会で株主を代表して提案説明を行いました。浅田さんから資料を頂きましたので、みなさまにお知らせいたします。
(2011-7-02 メモ追加)・転載・転送可。
・与えられた時間は3分だが10分を要した。制止されなかった。ヤジもほとんど無く、株主には真剣に聞いていただいたと思う。
・ガードマンに制止されたが振り切って、自分の席ではなくステージぎりぎりまで前へ出て、株主の方に向き趣旨説明した。時には振り返り役員に語りかけた。
・項目名は、趣旨説明の時の段落(一息つく)のためのもの。読み上げてはいない。
・原稿と発言は必ずしも一致していない。その時の気持ちで一部言い回しを変えた。
1、はじめに
入場整理番号 0000-0000番 私は、原発大惨事により、福島県から石川県へ避難を余儀なくされました。原発から20Km 余りの避難指示区域に住んでいました。第3号議案 定款一部変更の件につきまして、補足説明致します。株主総会開催通知9ページです。
2、誠意
6月11日のことです。この日は雨でした。母親を中心とするグループが福島から我が社へ、「学校グランドの汚された土の処分等を求める申し入れ」に来ました。事前に約束をしていたにも拘わらず、雨の降りしきる中、玄関はおろかひさしのある場所にも入れてもらえませんでした。詫びるどころか被害者である福島県民を門前払いにしたのです。 社長さんは避難所で土下座して「誠意をもって対処したい」旨の発言をされていました。社長さんの言う誠意とはどのようなことでしょうか。
3、第二の故郷・販売農家・自殺
さて、私は17年前に、自給自足を目指し、東京から福島に移り住みました。その生活が一瞬のうちに奪われてしまいました。第二の人生と第二の故郷が奪われてしまったのです。ましてや、農業・酪農・漁業で生活を立てていた方々は、何もかも総てを奪われてしまったのです。将来を悲観して自ら命を絶った方もあります。強制移住させられた飯館村の酪農家の牛との別れのニュースには涙を禁じえません。 対して、東電役員の方々は、報酬をもらっていますが、返上して被災地へ廻すことは考えないのでしょうか。
4、誠意を形に
誠意を形にして欲しいのです。 南相馬市の病院では、お医者さんが一人で1日に170人もの患者を診察していると報じられました。東電病院から医師と看護師の半分を応援に出すことを考えましたか。東電病院は、7階建ての立派な病院です。風評被害に苦しんでいる福島と近隣の野菜を、社員食堂で 来る日も 来る日も 来る日も使い続けていますか。 福島の子どもたちは、屋外プールの使用を禁じられています。校庭での活動も制限されています。野原でも遊べない。育ち盛りなのです。株主の皆さん、役員の皆さん、皆さんの子どもや孫と、置き換えてみて下さい。
5、想定外・組織のひび割れ
そしてまたも聞いてしまいました。「想定外であった」と。本当にそうなのですか。貞観地震のことを知っていたのではありませんか。経済性のために安全性を犠牲にしたのではありませんか。 ところで、福島第一原発では1・2・3・4・5号炉のシュラウドのひび割れが相次ぎました。シュラウドは原子炉の要です。この地にもトラブルが多発しています。これは装置、即ちハードのひび割れです。 わが社のひび割れはハードばかりかソフトとしての組織にも及んでいます。数あるヒューマンエラーの中でも、昨年、第一原発6号炉の定期点検中に、誤って5号炉のECCSの制御ケーブルを抜くという重大なミスがありました。この時5号炉は運転中でした。そして2週間後に誤りにやっと気がついたのです。
6、原発は人智を超えたもの
わが社は、ハードもソフトもひび割れしています。原発を動かす資格はありません。 ましてや ①原発は人智を超えたものです。②使用済み核燃料無害化の技術を人類は持っていません。③作業員の被曝という犠牲に立った電気です。 ④CO2発生を抑制できないし、⑤定常時でも冷却に大量に使う水を海へ温かいまま戻しています。 人智を超えたものをつくってはいけないのです。動かしてはいけないのです。子どもたち、孫たちにこれ以上ツケを廻してはなりません。
7、おわりに
福島に帰りたい。でも帰れない。少し大袈裟にいえば私たちは流浪の民となりました。やるせない、無念、悔しい、どんなに言葉を並べてもこの気持ちは言い尽くせません。このような経験は私たちだけで十分です。株主の皆さん、全国の皆さんに経験して欲しくはありません。
株主の皆さん!! 「さようなら原発」「脱原発」を高らかに議決して下さるようお願い致します。
この“折バラ”は放射能から福島の子どもたちを守る市民グループのために祈りを込めて折ったものです。この祈りを会長さん、社長さん、共にして下さい。(“折バラ”を1本ずつ渡す) 以上(修正2011-07-02)