ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ムカシヤンマのヤゴと羽化

2017-05-06 18:54:13 | トンボ/ムカシヤンマ科

 ムカシヤンマ Tanypteryx pryeri (Selys, 1889)は、ヤンマと名がついているが、ヤンマ科ではなくムカシヤンマ科に分類されている日本固有種のトンボで、ムカシトンボと同じく、形態に原始的な特性を持つ種である。(本種は「生きた化石」とは言われていない。)体長は80mmほどあり、止まり方は、翅を広げたまま張り付いた格好で止まる事が多い。

 ムカシヤンマの幼虫(ヤゴ)の生態と生息環境は、一般的なヤゴとは大きく異なり、水が滴り落ちてゼニゴケなどが茂っているような土の崖にトンネルを掘って棲んでいる。また、地面の落ち葉の下に穴を作り潜んでいることもある。穴の中には水が少したまっていることが多い。幼虫は水に入ることはほとんどなく、昼間は半身をのり出し穴の入り口近くを通る小動物を補食する。成虫になるまでに約3年かかると言われている。
 東北以南の本州と九州に分布しているが、生息場所は極めて局所的である。環境省RDBに記載はないが、東京都、群馬県、長崎県では絶滅危惧Ⅰ類、神奈川県、兵庫県、熊本県で絶滅危惧Ⅱ類、 その他、多くの自治体において準絶滅危惧種として選定している。

 ムカシヤンマの成虫は、都内において撮影してはいるが、ヤゴの生息場所が不明のままである。今回、知人に茨城県内の生息場所をご案内頂き、生息環境の確認、ヤゴの撮影、そして羽化の様子を撮影することができた。崖の穴で生活するヤゴは、小学生の時に本で知って以来ずっと見てみたい存在であったが、40年以上の時を経てようやくその姿をみることができた。
 今年は、他の昆虫でもそうであるように、羽化が一週間から10日ほど遅く、この地のムカシヤンマも遅れているようである。生息地三か所をご案内頂いたが、一ケ所目では羽化殻はあったものの、この日は羽化はなし。二か所目はまったく羽化する様子もなく、三か所目でようやく3頭の羽化を確認できた。茨城県在住の知人S氏に感謝したい。

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ムカシヤンマのヤゴの写真

穴から顔をのぞかせるムカシヤンマのヤゴ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 2000(撮影地:茨城県 2017.5.03)

ムカシヤンマのヤゴの写真

穴から出てきたムカシヤンマのヤゴ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/100秒 ISO 3200 +1EV(撮影地:茨城県 2017.5.03)

ムカシヤンマのヤゴの生息環境

ムカシヤンマ(ヤゴ)の生息環境/水が滴る泥の崖に掘られた無数の穴にヤゴが入っている。
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 12500 +1EV(撮影地:茨城県 2017.5.03)

ムカシヤンマの羽化の写真

ムカシヤンマの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200(撮影地:茨城県 2017.5.03)

ムカシヤンマの羽化の写真

ムカシヤンマの羽化
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 200(撮影地:茨城県 2017.5.03)

ムカシヤンマの写真

ムカシヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 1250 +1EV(撮影地:東京都 2013.6.02)

ムカシヤンマの写真

ムカシヤンマ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 400 +1/3EV(撮影地:東京都 2012.6.17)

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