ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

杜に舞うヒメボタル

2023-06-12 21:14:25 | ヒメボタル

 杜に舞うヒメボタルを観察し撮影してきた。

 杜に舞うヒメボタルは、日本各地で見ることができ、関東周辺では静岡県御殿場市の二岡神社(未訪問)が有名であるが、今回の撮影場所は違う所である。
 撮影した地域は、ヒメボタルの分布的に貴重な地域であり、2010年からヒメボタルの観察と撮影に行っている。しかしながら、写真には、いつも1~2頭が飛んでいる様子しか収められていなかった。古くからの親友の調査では、この地域ではかなり広範囲にヒメボタルが生息していると聞いており、また、知人は昨年にこの地域内のある場所でヒメボタルが乱舞しており、写真に収めたとの連絡を頂いていた。それが杜に舞うヒメボタルであり、そこで今年は、その場所に行ってみることにした。
 10日土曜日は仕事の為、翌11日、小雨降る自宅を午後12時に出発。現地には14時過ぎに到着した。これまで観察をしてきた場所の近くであり、やはり広範囲に生息している証拠である。その場所は、神社の参道であり、常緑照葉樹が多い地域にも関わらず、鳥居をくぐると両脇は杉林になっている。その杜にヒメボタルが舞うのである。
 この地域のヒメボタルは深夜型で、23時からが活発に活動する。しかし到着時刻は14時過ぎ。周辺の環境を入念に調査し、16時に撮影のための三脚をセットし、後は待機である。19時からはカメラもセットし、その場で待機して活動の様子を伺った。気温23℃で無風。曇りで、時々日が差す天気で、将にホタル日和である。
 徐々に日が暮れ、19時45分。1頭のヒメボタルが下草で発光を始めた。規則的は明滅はしない。20時になると発光飛翔する個体も現れた。V字谷という物理的環境なのだろうか?長く光りながら、不思議なことに地上10mの高さまで舞い上がっていく個体が多い。また、あちらこちらで数頭が発光をしているが、発光は長くは続かない。準備運動なのだろうか?21時を過ぎても、あちらこちらで数頭が時々光るだけで、、一向に発光数は増えない。
 この場所は、人口の明かりは一切ない杜である。一種独特の緊張感を感じる。しかも私一人であり、若干の恐怖を感じながらの待機であったが、22時頃にカメラマン一人がやってきた。独占ではなくなったが、こんな環境では心強い。話を聞くと、昨日はとてもヒメボタルもカメラマンも多く、ヒメボタルは22時過ぎで、かなり乱舞していたという。今日は、昨日よりも気象条件は良いが、なかなか発光飛翔の数が増えない。
 時刻は23時。やはり体内時計があるのだろう、ようやく発光飛翔するヒメボタルが植えてきた。これまでは、参道両脇の杉林の中を飛んでいた個体も、参道に出てくるようになった。参道の隅では、メスのヒメボタルが独特な発光をしているが、参道は谷の傾斜の部にあり、オスは高い所を飛翔して一向に気づく様子はなかった。
 この夜、見渡せる範囲で50頭以上が発光していたが、居合わせたカメラマンの話では、昨日の方が発光飛翔する数が多いようであった。メスも発生していることから、発生のピークは昨日今日あたりではないかと思われる。

 今回撮影した場所は、鳥居もあって写真映えがし、更にはこの地域で唯一まとまったヒメボタルの写真が撮れる場所であろう。しかし、都道府県が発行するレッドリスト(2019年改訂版)では、最重要保護生物(特に留意が必要な種)として記載されている。埼玉県のヒメボタル生息地のように、足元にいるヒメボタルを踏みつけても何とも思わない、単にインスタ映えする写真を撮りたいというだけのカメラマンが押し寄せることを防ぎ、ヒメボタルと自然環境を保全する観点から、今回は撮影場所を都道府県名さえも記載しないことにした。貴重な記録として、以下には、横構図の写真2点、飛翔の様子が分かるものと見栄え重視のものと、同じ位置から撮影した縦構図の写真、そしてフルハイビジョンの映像を掲載した。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 10秒×27 ISO 1600~3200(2023.6.11)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 10秒×110 ISO 1600~3200(2023.6.11 22:05~23:53)
ヒメボタルの写真
ヒメボタル
Canon EOS 7D / Canon EF17-35mm f/2.8L USM(焦点距離26mm) / マニュアル露出 F2.8 15秒×56 ISO 2500~3200(2023.6.11 21:46~23:47)
杜に舞うヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
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