シリーズ「ホタルの写真を撮る」その4
日本のホタル科(Lampyridae)49種類の内、幼虫が水中で過ごすホタルは、ゲンジボタル、ヘイケボタル、クメジマボタルの3種類のみで、46種類は、ヒメボタルを代表するように、一生を陸地で生活する陸生ホタルである。(尚、スジグロボタルは、半水生)
本記事では、陸生ホタルであるマドボタル属(Pyrocoelia)のクロマドボタル(Pyrocoelia fumosa Gorham,1883)について紹介したい。
日本国内には、以下の9種1亜種が生息しているが、クロマドボタルとオオマドボタルを除いては、南西諸島(アキマドボタルは対馬)に生息しており、ほとんどが各島々の地域固有種である。
ホタル科(Family Lampyridae)/マドボタル亜科(Subfamily Lampyrinae) クロマドボタルは、本州の東海、近畿以東に分布し、それより西では、同属のオオマドボタル(形態が異なるが同一種という説もある)が分布し、伊豆半島では混生している地域もある。主に低山地にある水田や湿地に隣接した雑木林の林縁に生息しており、東京都においては、八王子市、あきる野市、青梅市の谷戸で見られ、成虫は6月下旬頃に発生する。 参照:オオマドボタル 以下の掲載写真は、1024*683 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved. ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
オスの成虫が黒色で前胸背板の前縁に2つの透明な窓があることが和名の由来であるが、メスは黒色ではなく淡黄色で上翅、下翅ともに退化している。これはマドボタル属特有のメスの特徴で、世界中に生息するマドボタル属のメスは、すべて同じような形態である。ホタル科の多くが、前胸部が赤で前翅が黒色という典型的な「ホタル」の形態色であるが、本種は、全身が黒色というのも
興味深い。
南西諸島に生息するマドボタル属の成虫は、夜行性でゲンジボタルのようによく発光するが、クロマドボタルのオスの成虫は昼行性で、天気の良い日は午前9時頃から活動を始め、林縁の草むら上をよく飛んでいる。また、夜間には微弱な発光をし、メスに近づくと強く発光するが、配偶行動は光によるコミュニケーションではなくフェロモンによると考えられている。メスは、飛ぶことができないため、木の切り株や葉上に這い上がってフェロモンを発し、オスの飛来を待つようだが、その目撃例はなく、落葉の下でじっとしているところが稀に見つかる程度である。写真のメスは、人工飼育により羽化させて撮影したものである。
幼虫は夜行性で、草の葉上や木の枝を這い回り、カタツムリの一種であるウスカワマイマイ(Acusta despecta sieboldiana Pfeiffer,1850)等の陸生貝類や小さなクモ等を食べて生活しているが、樹液を吸う様子も観察(水分やミネラル類を補給していると思われる。)されている。また、人工飼育では、バナナやリンゴ等の果実、カブトムシの人工的な餌であるゼリーも食することが分かっている。幼虫は、冬季を除く期間よく発光し、秋になっても発光している様子が見られることから、地域によっては秋蛍、または土ボタルとも呼ばれている。尚、幼虫の光は明滅することなく連続光であることから、コミュニケーション・サインではないと思われる。
幼虫は前蛹を経て蛹になるが、土中に潜って土まゆを造ることはなく、地表に横たわって蛹になり、蛹の期間はおよそ10日間である。(尚、卵も蛹も連続発光する。)
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