ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

秋の里山の虫たち

2020-10-06 21:22:07 | その他昆虫と話題

 この春に新型コロナウイルス感染拡大による非常事態宣言が出された頃、本ブログに「春の里山の虫たち」という記事を投稿した。外出自粛から撮影や観察に出かけることができず、外付ハードディスクに保存している膨大なRAWデータから、過去に撮影した写真セレクトし再現像して投稿したものである。
 それからおよそ半年が過ぎ、新型コロナウイルスの感染は終息してはいないものの、経済活動は平常に戻りつつあり、私自身の活動も「ホタルの会」の活動を除いては、6月以降はほぼ予定通りに遠征も行ってきた。この10月は、月末に「サツマシジミ」撮影の大遠征を予定しているが、紅葉などの風景には、まだ少し早いため投稿する写真に新しいものがない。そこで、今回は「秋の里山の虫たち」と題して、過去に撮影した写真から、この時期に見られるものを幾つか選び再現像して並べてみた。

 私のデジタル一眼レフでの撮影は、すべてRAWで撮影し、のちにパソコンでLightroomというソフトを用いてRAW現像している。人によっては、RAW現像が面倒くさいという理由から、jpegで撮影しそのままSNS等に投稿するいわゆる「撮って出し」の方も大勢いらっしゃるようだが、私は、撮影時のPicture Style設定(Canon)を階調優先の「ニュートラル」にしてRAWで撮影し現像している。
 この「ニュートラル」は、明暗差が大きい被写体でも繊細な質感を残したい時、鮮やかな色彩の中の微妙なニュアンスを表現したい場合に適している。コントラストは控えめに、彩度は強調を行わないため、他のスタイルに比べて白飛びや色の飽和が起きにくく、抑制のきいたしっとりとした表現となる。より豊富なディテールが情報として残っているため、後のPCでの現像に適した画質が撮影できるのである。
 私の写真の根本理念は「美」を追求し「美しいものを 一番美しい時に 美しく写す。」である。30年以上もフィルムで撮影してきたが、デジタルに変わった今でも、その理念に基づき撮影を行っている。RAW現像については本ブログ記事「デジタル写真~現像とフォトレタッチ」で記述したように、自然風景写真においても昆虫写真においても、元になるRAWデータとかけ離れるような画像調整やレタッチは施してはいないが、前々回の記事「エゾトンボの静止飛翔」では、ご存知のように次のようなコメントを頂いた。

「どの写真も彩度上げすぎなのか色合いが不自然に感じる。見たままの再現にもこだわった方がいいのではないか」

 写真をご覧いただいた方からの有難いご指摘であるが、先に記したようにRAWデータとかけ離れるような画像調整やレタッチはしていない。具体的には、コントラストを少し下げ、シャドウ部を少し持ち上げ、明瞭度を若干上げた程度である。色温度や彩度等のカラー部分はまったく調整していないが、コメントを頂いた方の眼には「色合いが不自然」と映ったようだ。
 それは、ある意味当然かもしれない。明るい背景で、しかも半逆光で被写体を撮る場合は、被写体が黒く潰れてしまうのを防ぐためにストロボを補助光として発光させ、適正露出を得たが、写った写真は見ままとは異なっている。色合いも違う。トンボの細部まで2方向からの光が回っており、更には1000分の1秒という一瞬である。カメラのセンサーの特性やレンズ特性もあるから見た目と違うのは当然である。このRAWデータを最小限に調整しながら現像すれば、肉眼では決して見ることのできない「色あい」が表れるのである。
 「見たままの再現にもこだわった方がいい」このコメントは「見たままの色合いが自然である」ということを意味していると思う。写真は絵画ではなく実写であるから、これも当然であろう。しかしながら、カメラメーカーやイメージセンサー、そしてレンズによっても色再現性は異なるし、特にヒガンバナのような赤色の再現は難しいと言われている。またフィルムでもベルビアやプロビア、かつてのコダクロームでも色合いは全く違う。更には、撮影時の天候でも異なる。ギラギラの太陽光が降り注ぐ日中と曇り空では、同じ色も違って見えることも理解しなければならない。

 本記事の最初の写真は「カトリヤンマ」を掲載した。これは秋の日の曇天の午後14時頃の撮影である。背景は、稲刈りが終わった田んぼで、枯れた稲とわずかな緑だけ。この単純な色彩がカトリヤンマの美しさを引き立てている。最後には、参考までにご指摘をいただいたエゾトンボの写真において、元のRAWデータをまったく画像調整を行わずjpegに変換した写真とブログに掲載した写真を並べてみた。これら全ての写真を比較しながら、今一度コメントの意味を考えたいと思うが、これからも「美」を追求し「美しいものを 一番美しい時に 美しく写す。」ことに拘っていくことに変わりはない。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

カトリヤンマの写真

カトリヤンマ
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / 絞り優先AE F5.6 1/500秒 ISO 800 +1EV(撮影地:神奈川県 2016.10.23)

アキアカネの写真

アキアカネ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/400秒 ISO 200 -1EV(撮影地:神奈川県 2016.10.29)

アキアカネの写真

アキアカネ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F5.6 1/250秒 ISO 500 +1EV(撮影地:福島県 2011.10.08)

秋の野の写真

秋の野

スカシバの写真

スカシバ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/1600秒 ISO 200(撮影地:東京都 2010.10.02)

秋の野の写真

秋の野

モンシロチョウの写真

モンシロチョウ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO / 絞り優先AE F2.8 1/3200秒 ISO 200(撮影地:東京都 2010.10.02)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(未調整のRAWデータをjpegに変換)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.9.12)

エゾトンボの写真

エゾトンボ(LightroomeでRAW現像)
Canon EOS 7D / Tokina AT-X 304AF 300mm F4 / Speedlite 550EX / 絞り優先AE F8.0 1/1000秒 ISO 1250(撮影地:長野県 2020.9.12)

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