ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

夏の天の川(開田高原)

2021-09-02 21:15:51 | 風景写真/星

 9月である。一年の2/3が過ぎてしまった。この間に撮った自然風景と言えば、栃木の桜を除くとすべてが夜間であり、ホタルの光跡以外は星空ばかりを撮ってきた。理由は3つある、1つは新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない中、ほとんど人と接しない時間帯と場所で活動すべきと考えた結果である。2つに星・宇宙に対する魅力である。小さな地球から際限のない広大な宇宙と星々を眺めた時に感じる思いは一言では表せない。3つ目の理由は、星空の写真を本格的に撮り始めてまだ4年。初心者の域を何とか脱したいと言う欲である。
 星空の写真には二通りある。星や星雲そのものを撮る天体写真と星空を自然風景写真の一つとして捉えた星景写真・星野写真だ。私は赤道儀を使わない固定撮影の星景写真である。現在所持するカメラとレンズの性能を最大限活かしながら、試行錯誤を繰り返しているが、撮影時の設定や現像方法のコツがようやく掴めてきたので、今回、開田高原で撮影した夏の天の川を掲載したいと思う。

 夏の夜空と言えば、南の空で明るい三つの星が形づくる「夏の大三角」と、南の空に赤く光る「サソリの心臓」アンタレスが挙げられるが、もっとも魅力的なのは、日没後に南の地平にまっすぐ立つように伸びる「天の川」であろう。その見え方は季節によって変わる。地球は太陽を中心に回転しているため、3月頃から9月頃は星の数が大変多い天の川銀河の中心を見ることができ、冬は星の少ない天の川銀河の端を見ることになる。天の川らしいのは、やはり3月頃から9月頃に見られる夏の天の川である。
 夏の天の川には、特に濃い部分がある。そこはいて座にあり、地球から約2万8000光年離れた天の川銀河の中心でグレートスタークラウドと呼ばれている。またその少し上のたて座の付近にも濃い部分があり、こちらはスモールスタークラウドと呼ばれている。いて座からたて座の辺りが、夏の天の川の一番綺麗な部分である。ちなみにグレートスタークラウドは、3月頃では午前2時過ぎに地平線からやっと昇ってくるが、今の時期は午前0時には沈んでしまう。沈む時間は月日と共に早くなるため、天気が良く月明りに邪魔されずグレートスタークラウドを写そうと思うと、チャンスは多くない。
 天の川を撮るには、月明りと街明かり等の光害のない、そして良く晴れた日と場所を選ぶことが必須であり、さらに天の川が昇ってくる時間や沈む時間と方向も調べてから臨むことになる。これまで富士山周辺と開田高原、乗鞍高原を撮影地に選んで何枚もの天の川を撮ってきたが、今回の写真は、開田高原の木曽馬の里にて、地上の一本のナラの木を生命の象徴とし、銀河と対比させた。
 この撮影は、月齢18.5の明るい月が21時過ぎには昇ってきてしまうため、西の空が暗くなった19時半から撮影を開始し、2時間ほど連続でシャッターを切った。写真の現像は、今回初めてDxO PureRAW を用いた。DxO PureRAWとはフランス パリのDxO社が開発した撮影したRAWファイルを高品質化してくれるソフトで、Lightroomでの現像の前段において、AIを使ってRAWファイルの様々なレンズ収差を補正し、ノイズを除去し、シャープにしてくれるのである。
 以下には、過去に撮影した3枚も掲載した。これらも、まずRAWデータを DxO PureRAW で処理した後 Lightroom で補正し、最後に解像度を2倍にする高品質化という処理を行っている。またタイムラプス動画は、今回の撮影分についてはフリーソフトのSequatorで5枚を加算平均合成し、過去に撮影した映像とともに編集した。

 夏の天の川は、今年は週末であと3回、10月2日がラストチャンスになる。今後の天候次第では、この写真が夏の天の川の今年の見納めになるかもしれない。その後は、東から冬の綺麗な星座が昇ってくるので、ソフトフィルターを付けて星空を楽しみたいと思う。また、この8月は残念ながら「ペルセウス座流星群」は天気が悪く見ることができなかったが、12月には「ふたご座流星群」がやってくるので期待したいと思う。

 9月と言えば関東大震災をはじめ、台風など自然災害が多い月である。天の川を撮影した開田高原からも見える御嶽山が噴火したのも今月。2014年9月27日。火口付近に居合わせた登山者ら58名が死亡し、現在も依然として5名が行方不明のままという日本における戦後最悪の火山災害となった。
 噴火からまもなく7年が経とうとしている。2019年7月1日からは山頂登山規制も解除され、現在の御嶽山は写真のようにすっかり噴火前の美しい姿を見せてくれているが、自然の猛威・脅威を忘れてはならない。撮影した九蔵峠には、駐車場の奥に展望台があり献花台もある。犠牲となった63名のご冥福を、心よりお祈りしたいと思う。

以下の掲載写真は、1920*1280 Pixels で投稿しています。写真をクリックしますと拡大表示されます。 また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

夏の天の川の写真

夏の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2021.8.27 19:36)

夏の天の川の写真

夏の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 1600(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2021.8.27 20:47)

夏の天の川の写真

夏の天の川(一番大きく輝いている星は、木星)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM/ PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 1600(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2019.5.05 0:32)

夏の天の川の写真

夏の天の川(一番大きく輝いている星は、木星)
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM / バルブ撮影 F2.8 30秒 ISO 1600(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2019.5.05 0:34)

夏の天の川の写真

夏の天の川
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Canon EF17-35mm f/2.8L USM/ PRO1D プロソフトン[A](W)使用 / マニュアル露出 F2.8 25秒 ISO 2000(撮影地:長野県木曽町開田高原/木曽馬の里 2021.5.04 0:56)

御嶽山の写真

御嶽山
Canon EOS 7D / SIGMA 15mm F2.8 EX DG DIAGONAL FISHEYE / 絞り優先AE F8.0 1/25秒 ISO 100(撮影地:長野県木曽町開田高原/九蔵峠)

天の川のタイムラプス動画(長野県木曽町開田高原/木曽馬の里)

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