goo blog サービス終了のお知らせ 

ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

川町の残土埋立に反対する住民集会

2019-08-25 19:06:11 | ホタルに関する話題

 川町の残土埋立に反対する住民集会が、8月25日、高尾の森わくわくビレッジにて開かれ、ホタル保全の立場から特別ゲストとして講演を行ってきた。

 ブログ記事「東京のホタル(源平合戦の危機)」で記したが、東京都八王子市川町にある大沢川源流部の谷戸では、ゲンジボタルとヘイケボタルが同時に飛び交う「源平合戦」が見られるたいへん貴重な場所である。周辺には、食物連鎖の頂点であるオオタカが生息し、毎年その雛が巣立ちをしている。これは、この地域に多種多様な生物が生息し、豊かな生態系が維持されていることを意味し、物理的環境を含むその豊かな生態系に支えられてゲンジボタルとヘイケボタルが生息しているのである。
 しかしながら、民間の事業者が大量の建設残土で埋め立てを行い、スポーツ施設を作ろうとしているのである。谷戸は、すでに事業者が買い取り、大部分が立ち入り禁止になっている。ただし、事業者にはスポーツ施設を作り、運営するだけの資金がない。収支計画(施設管理費-施設利用費)をみても、毎年2千万円以上の赤字になっている。おそらく各地の建設現場で発生する捨て場に困っている建設残土を谷戸に埋める事業で終わるだろうと言われている。
 盛土高38mの残土埋立は、55万立方メートルで1日に130台のダンプカーが4年間も行きかう量に相当するが、それを抑える堰堤は、昨今の大雨に耐えられるだけの設計ではなく、大規模土砂災害の危険性も示唆されている。2年前には、同じような盛土をした戸沢峠が崩壊したが、当地に計画している残土による盛土は、遥かに規模が大きく、崩壊した場合に土砂が襲ってくる場所には宅地が広がっているのである。しかしながら、事業者が行政に提出した図面には誤りが多く、あまりに乱暴な計画だと建設コンサルタントは言う。
 計画が実行されれば、直接的もしくは間接的にホタルの生息する谷戸には影響があり、おそらく壊滅的ダメージを受けるだろう。この谷戸を守ろうと「川町の環境を守る会」が結成され、7年前にはTBSテレビ(噂の!東京マガジン)でも紹介されたが、何の進展もなく、八王子市の開発許可のGoサインがでれば大量の建設残土が持込まれる状況にある。

 そこで今回、川町の残土埋立に反対する住民集会が開催され、市議会議員や弁護士を含め100名を超える住民集会参加者、グリーンタウン高尾自治会、グリーンタウン高尾管理組合法人、川町の環境を守る会によって以下の「行動宣言」がなされた。

  1. 私たちは、誰もが安心して暮らせる生活環境の実現を目指します。
  2. 私たちは、自然を破壊し、災害発生の恐れがある開発に断固反対します。
  3. 私たちは、八王子市に対し住民本位の仕事をするように要求します。
  4. 私たちは、東京都及び八王子市に対し、破綻することが明白な(仮称)八王子スポーツパーク計画を許可しないよう要求します。

 ゲンジボタルとヘイケボタルが同時に飛び交う、東京唯一の貴重な谷戸。これは八王子市だけでなく、東京都の財産であり自然遺産である。今回、講演を行うとともに、東京都及び八王子市に対し、ホタルと環境保全に関する意見書も作成した。是非とも、この事実を多くの皆様に知って頂き、ご意見を頂戴したいと思う。
 以下の写真は、今年の7月5日に撮影したゲンジボタルとヘイケボタルが舞う光景と、そこに計画されているスポーツパークの看板である。

ホームページ:八王子市川町の環境を守る会

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ホタルの写真

ゲンジボタルとヘイケボタルの舞う光景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 320 18分相当多重露光(撮影地:東京都八王子市川町/大沢川源流部の谷戸 2019.7.05)

(仮称)八王子スポーツパークの写真

(仮称)八王子スポーツパーク

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2019 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


東京のホタル(源平合戦の危機)

2019-07-06 21:40:50 | ホタルに関する話題

ゲンジとヘイケが舞う谷戸が埋め立ての危機~東京都八王子市川町/大沢川源流部の谷戸~

 東京のホタルも、そろそろ終わりであるが、今回は、たいへん貴重な観察と撮影ができた。何とゲンジボタルとヘイケボタルが 同時に飛び交う「源平合戦」が小さな谷戸で見られたのである。場所は、東京都八王子市川町にある大沢川源流部の谷戸である。
 東京都内では、ヘイケボタルの自然発生地は極めて少ない。農薬を使わない水田がなくなり、里山の谷戸にある湿地で細々と生きているが、その湿地も里山の放棄・放置で植物が生い茂り植生遷移が進み、また土砂が少しずつ流れ込み、乾燥化・陸地化が進んでいることにより、絶滅が危惧されている。
 東京以外では、ゲンジボタルとヘイケボタルが生息している里山は多いが、ゲンジボタルの方が発生時期が早く、両種が同時に舞うことは多くはない。今回訪れた谷戸の下流域は、2週間ほど前からゲンジボタルの発生が始まっているが、上流域は遅れて発生することにより叶ったと言える。写真では、湿地の上をヘイケボタルが低く飛び、その上をゲンジボタルが飛び交っているのが分かる。
 19時15分。谷戸の最奥の杉の梢で1頭のヘイケボタルが光り始めた。次第に雑木林から湿地に続く斜面でも草むらの中で光り始め、19時半に飛び始めた。すると、向かいの雑木林の中で強い発光が。ゲンジボタルである。幼虫は、湿地と雑木林の間を流れる細流に生息している。この日の天候は曇り。気温23度で無風。ただし空一面を覆う雲に都会の灯りが反射して明るいため、条件は最良ではない。ゲンジボタル20頭、ヘイケボタルは30頭ほどであったが、20時を過ぎる頃からは、見事な「源平合戦」が見られた。

 この源平合戦が見られる貴重な谷戸は、無くなる危機にある。実は、民間の事業者が大量の建設残土で埋め立てを行い、スポーツ施設を作ろうとしているのである。谷戸は、すでに事業者が買い取り、大部分が立ち入り禁止になっている。ただし、事業者にはスポーツ施設を作り、運営するだけの資金がなく、おそらく各地の建設現場で発生する捨て場に困っている建設残土を谷戸に埋める事業だけで終わるだろうと言われている。「八王子市川町の環境を守る会」が結成され、7年前にはTBSテレビ(噂の!東京マガジン)でも紹介されたが、何の進展もなく、八王子市の開発許可のGoサインがでれば大量の建設残土が持込まれる状況にある。
 これまで、この谷戸における源平合戦の証拠となる写真がなかったこともあり、「八王子市川町の環境を守る会」に協力する形で訪れて撮影した。今後は、東京都に対しても保全に向けた運動を展開するにあたって、ホタルと環境保全の勉強会等も開催し、協力していきたい思う。また地名は「八王子市川町の環境を守る会」の要望で、あえて記載することにした。

 写真2と映像は、前記事で紹介した東京都内多摩西部の山間部の渓流に再度訪れて撮影したものである。今回は、上流方向にカメラを向けて撮影した。 発生のピークは過ぎ、前回よりも飛翔するオスの数は少なかったが、写真も映像も自己満足できる出来であった。
 ただし、今回も気になったことがある。前回はカメラマンのマナーだったが、この日は車のライトであった。渓流は深い谷の底であるから、道路の街灯や走る車のライトの影響は全くない。では、なぜ「車のライト」が気になったかと言うと、実は渓流のすぐ傍にお寺があり、そこには車が数台止められる駐車スペースがあるのである。私は、わざわざ約1km手前の大きな駐車場から歩くが、お寺の駐車場を知っている方は、そこに車を止める。川までほんの数メートル。数段の階段を降りればホタルを見ることができる。平日でも満車になる。
 問題なのは、車のヘッドライトがホタルが飛び交う川を照らすということである。暗くなってから来る。まだホタルが飛んでいる時間に帰る。狭い駐車場で何度も切り返せば、ヘッドライトが川の広い範囲を照らす。ホタルは発光を止め、暗くなってもしばらくは発光しない。観賞に来られる方の中には、脚の不自由なご老人もいらっしゃるので、その駐車場は便利ではあるが、何か対策を講じないと、いつか影響がでるだろう。

 東京のホタル。残すはヒメボタル。2009年7月11日にツキノワグマに遭遇しながら、命がけでフィルムで撮影した都内の山間部のヒメボタルを今度はデジタルで奇麗に撮影したいが、この週末は雨で気温が低く断念。降雨は問題ないが、気温が15℃では活動が鈍い。次の週末に決死の覚悟で、再挑戦したい。
 またヒメボタルは、昨年、レンズキャップを外し忘れて一枚も撮れていなかった場所においてのリベンジも予定している。この写真と映像を撮り終えたら、今年に撮影した映像を編集してまとめたい。

参照ホームページ:八王子市川町の環境を守る会

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルとヘイケボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 320 18分相当多重露光(撮影地:東京都八王子市川町/大沢川源流部の谷戸 2019.7.05)

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 320 4分相当多重露光(撮影地:東京都 2019.7.02)

ゲンジボタルの飛翔映像
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE (撮影地:東京都 2019.7.02)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2019 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


東京のホタル

2019-06-30 20:05:07 | ホタルに関する話題

 東京のホタルを観察する催しが、この週末に行われた。私も理事の一人である「日本ホタルの会」の恒例行事である。今年は、多摩丘陵の里山で、幼虫の放流などは一切行っていない将に天然の発生地であり、2008年にTBSテレビ「ニュース23」に出演した時にキャスターと訪れた場所でもある。当時は、ゲンジボタルが乱舞していたが、昨今ではかなり荒れた状態になっており、一時期、川の水も枯れたこともあって、発生数は激減していた。
 この日は、全部でおよそ20頭を確認。19時25分に1頭が光始めたが、生憎、飛翔時間に本降りの雨となり、数頭飛んだものの、ほとんどの個体は葉に止まったまま、時折、発光する程度であった。 (写真1)

 東京のホタルは、山間部の渓流にも生息している。こちらは、毎年安定した数のゲンジボタルが発生しており、週末には大勢の観賞者が訪れる。深い谷の底であるため、街灯や車のライトの影響は受けないが、相変わらず観賞者の中には、懐中電灯を照らす方が見受けられる。ただ、今回気になったのは、観賞者ではなくカメラマンである。
 およそ1km手前の駐車場に車を止めて徒歩で現地に向かい、18時から待機していると、30分後に6人ほどの年配のグループがやってきた。写真クラブの講師と生徒なのだろう。講師の指示に従って、 皆、同じ方向にカメラを向けていた。19時半を過ぎると、私がカメラを向けた方向ではゲンジボタルの飛翔が始まったが、グループの方角はまったく光らない。20時を過ぎて飛翔数が増えても、グループの方角は画角には収まらない高い所を飛翔していた。
 彼らにとっては残念な結果であろうが、途中でカメラの設定を変えるために懐中電灯を照らす等の行為にはガッカリした。講師も生徒も、ホタルの飛翔を入れた風景写真を撮りたいなら、ホタルの生態を少しは勉強してから来て頂きたい。

 「カメラマンは、マナーを守れ!」先日、新潟日報にはこんな記事が出ていた。
 新潟の十日町には風光明媚な棚田で有名な「星峠」がある。私も何回か訪れているが、昨今、カメラマンの迷惑行為が頻発していると言う。田や畑に、三脚の跡や車のタイヤ跡。ゴミを農地や道路に捨てる、あぜで用を足す、撮影の邪魔だから農作業を止めろというカメラマンもいるらしい。5月の大型連休には、深夜に細い山道をバックで上っていた車が約15m下の棚田に転落。昨年も同じ場所で転落事故が起きているとの事。運転者は死亡。オイル漏れから、「もうここでは米を作れない」と棚田の所有者は、ここでの米作りを諦めたと言う。

 写真を撮るにも、守るべきことがある。良い写真を撮るためなら、何をしても良い訳ではない。自然風景写真だけではなく、ホタルの飛翔風景や様々な昆虫の生態写真でも同じだ。許可なく田んぼや池に入って撮るのは、星峠の悪行と変わらない。入らなければ撮れないなら、諦めるしかない。あるいは、許可をもらうか、自宅で飼育して撮影するしかない。観察だけでも同様。研究だからという言い訳は通用しない。私自身も反省しなければならない。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。ウェブブラウザの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorer等ウェブブラウザの画面サイズを大きくしてご覧ください。また動画においては、Youtubeで表示いただき、HD設定でフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO MC AUTO-MACRO 50mm F3.5 / FUJICHROME Provia400F Professional(自宅室内での撮影)

東京のゲンジボタルの生息地の写真

東京のゲンジボタルの生息地
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / 絞り優先AE F13 10秒 ISO 100(撮影地:東京都 2019.6.29)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 320 4分の多重露光(撮影地:東京都 2019.6.29)

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの飛翔風景
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 ISO 400 3分の多重露光(撮影地:東京都 2019.6.28)

ゲンジボタルの飛翔動画
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE(撮影地:東京都 2019.6.28)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2019 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ホタル大学(6月)

2018-06-17 21:06:14 | ホタルに関する話題

 ホタル大学は、ホタル棲む自然環境の保全と再生を担うリーダー養成講座として、内閣府認証「NPOホタルの会」がホタルの生態や生息環境をはじめ、生態系の保全と維持管理、そして再生の手法等、ノウハウをすべて提供するものだが、私が主任講師を務めている。
 4月に開講し、第三回目になる6月16日は、野外実習として「里山とゲンジボタルの生息地での観察」を行った。里山では、モリアオガエルの卵塊等を観察。ゲンジボタルの生息地では、数頭の発光を観察したが、小雨で気温が14℃。雨は問題ないが、気温が低かったことで飛翔せず、葉上で発光するのみであった。目的は、ホタル観賞ではなく観察。「このような気象条件では、配偶行動ができない。」ということを肌で感じて頂けたと思う。来月は、「ヘイケボタルの観察」を予定している。

参照:ホタル大学一期生募集

 掲載写真は、いずれも過去に撮影したもので本記事とは関係がないが、すべて東京都内で自然発生しているゲンジボタルとヒメボタルの 飛翔する光景であることと、フィルムでの一発露光(長時間露光)であることから掲載した。昨今では、ホタルの写真はデジタルカメラで簡単に撮影できるようになり、私自身もフィルムでは撮影していない。また、デジタルでは何カットも重ねるという手法が用いられ、見栄え重視の写真が溢れているが、かつての一発露光(長時間露光)のフィルム写真を見直すことで、ホタル写真における写真芸術と生態学的価値を考え直したいと思う。ホタルの写真は、ホタルの光がたくさん写っていれば「綺麗」(インスタ映え)というものではない。
 ちなみに、4枚目のヒメボタルの飛翔風景の撮影には、6年を要した。しかも、すぐ背後で野生のツキノワグマがうろつく中での撮影であった。

お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタルの飛翔風景写真

ゲンジボタルの飛翔風景
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:東京都青梅市)

ゲンジボタルの飛翔風景写真

ゲンジボタルの飛翔風景
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:東京都奥多摩町)

ゲンジボタルの飛翔風景写真

ゲンジボタルの飛翔風景
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:東京都奥多摩町)

ヒメボタルの飛翔風景写真

ヒメボタルの飛翔風景
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICOLOR NATURA 1600(撮影地:東京都奥多摩町)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ホタルは灯りが大嫌い

2018-06-10 20:06:17 | ホタルに関する話題

 ホタルは、なぜ光るのか?それは、オスとメスが、交尾のために自らの発光によってコミュニケーションを図るため。しかしながら、ホタルが目的を持って光っていることを多くの方々がご存知ない。

 現在、全国各地で「ホタルまつり」や「ホタル観賞会」が行われており、多くの方々がホタルを見に訪れている。「ホタル」という昆虫ではなく、ホタルが発する光と光景を見に訪れている。ホテルの庭園や公園施設などの安全対策が取られ、安心してホタルを見ることができる所も多い。そのような場所での「ホタル観賞」は、施設内のルールに従えば気軽に楽しめるだろう。
 一方、野山の川で自然発生しているホタルを観賞する場合には、絶対に行ってはならない事がある。それは、「ホタルに灯りを向けてはいけない」ということである。オスは光りながら飛び回ることで存在をアピールし、葉の上ではメスが光って応える。メスを見つけたオスは葉の上に降りて行き、光で会話をするのである。そのためには、お互いの「光」が見える暗がりがなければならない。
 成虫の求愛行動は0.1ルクスの明りで阻害されることが研究で分かっている。満月の夜は発光飛翔がとても少ないのはお気づきだと思うが、満月の光は0.25ルクスもあるから、ホタルたちも求愛行動を控えてしまう。では、観賞者がホタルやホタルが飛び交う方向にライトを向けたらどうなるだろう。一般的な懐中電灯(200ルーメン)が5m先を照らすと1.27ルクス、10m先でも0.32ルクスになる。ホタルにとって影響がないわけがない。

 その場のホタルの発生期間は、2週間くらいはあるだろう。ただし、メスが発生してくるのは少し後になるから、混在するのは10日ほどになる。ただし、月の光が明るい夜や、風の強い夜、気温が低くて寒い夜は、活動が鈍くなるから、交尾の機会は5日くらいかも知れない。しかも、オスとメスが出会える時間は、1日90分だけである。そのわずかなチャンスを人工的な「灯り」で邪魔をしてしまえば、交尾の機会は極端に少なくなり、将来的には発生数は少なくなるだろう。近くに民家や街灯があったり、側を車が通るところに生息している場所もあるが、ホタルは、そんな環境の中でも一番暗い場所を選んでコミュニケーションを図っているのである。
 成虫を放っているだけのところは、その場で繁殖していないから「灯り」に対して気を配らなくても、毎年ホタルが見られるだろうが、本当に自然発生している生息地では、絶対に「ホタルに灯りは禁物」である。スマホはもちろん、懐中電灯を向けたり、カメラのストロボを焚くのもダメである。
  これから、野山の川で自然発生しているホタルを観賞される方々は、是非ともホタルに灯りを向けないでいただきたい。生息地へは、車のヘッドライトも懐中電灯も必要のない明るい時間帯に到着し、岸辺で暗くなるのを待つようにしたい。帰るのは、ホタルが発光する時間帯が終わってからにしたい。もし、灯りを向けている方がいたら、「灯りを向けるとオスとメスが出会えなくなりますよ。」と伝えていただきたい。

 ただし、人々の考え方は様々で、気を悪くしたりするかも知れない。様々なメディアで訴え、SNS等で情報を発信しても「ホタルは灯りが大嫌い」ということは、なかなか浸透しないのが現実である。以下は、あるプロの写真家の意見。(原文そのまま。一部抜粋。個人名は非公開とする)

 「ストロボを使用するホタル撮影は、ホタルの繁殖行動に悪影響を及ぼしてしまいます。」 などという記述も含めて、私には極論に感じられました。
 弱い懐中電灯の明かりやほんの数回のストロボの発光が、ホタルの繁殖行動に目くじらを立てるほどに悪影響を及ぼすのなら、なぜ、町の中の光がたくさん存在しホタルの活動時間帯に車が絶えず通るような場所にも、ホタルが多数生息する場所があるのでしょうか? また古河さんは、ホタルの観察に出かける際に、ヘッドライトをつけた車に乗ることはないのでしょうか?
 そもそもマナーは、人それぞれが自分なりに一生懸命に考えることであり、他人に押し付ける筋合いのものではないと考えます。
 ホタルを大切にしましょうという主張は、ホタルのためではなくて、突き詰めると、ホタルを好きな誰かのためなのです。 もしも人間が存在しないのなら、実はホタルはどうなってもいいのです。
  ホタルに関して言うと、まずは事実が大切です。本当に懐中電灯の光や数回の発光が、目くじらをたてるほどの悪影響があるのか? ホタル愛好家が自分たちが好きなホタルの見方を、自然保護の名目で押しつけようとしていないか?せいぜい自分のホームページ内で主張すべきことだと思うのです。 

 このプロカメラマンは、ホタルの生態を知らない素人であるばかりでなく、自然環境に関して何も考えていないとしか言えない。きっと、こう言うにも違いない。「高山植物を撮るために自分だけほんのちょっと登山道からロープを乗り越えることが、目くじらを立てるほどに悪影響があるのか?」

 次は、ある個人の方の意見。(無記名のコメントから抜粋)

 「ホタルが光らなくなる=繁殖できない」と伝わると思い込んでいるのは知識がある人間のエゴ。光らなくて困るのは貴方自身に他ならない。 ホタルのためにと言いますが、それはその場のホタルを減らしたくないと言う貴方個人の利を守ろうとしているに過ぎない。
  声を代弁するなどと大それたことは、どんなにその動植物のために尽力したとしても人間風情が口にすべきことでは無い。独り言で済んでいるうちは何を言っても構わないと思いますが・・・

 こういった方とは議論にもない。

 掲載写真は、ホタルの生息地における典型的な「光害」の一枚と、灯りが一切ない生息地での飛翔風景の3枚である。いずれも、デジタルカメラがない時代にタングステンタイプのポジフィルムで撮影したものである。

参考文献

  1. 宮下 衛(2009)「ゲンジボタル・ヘイケボタル幼虫に対するLED照明の影響」,土木学会論文集G Vol.65 No.1,1-7
  2. 宮下 衛(2011)「ゲンジボタル・ヘイケボタルの産卵に対するLED照明の影響」,土木学会論文集G(環境) 67(1), 21-29
  3. 遊磨 正秀(2017)「動植物に対する「光害」、特にホタル類への影響」,全国ホタル研究会誌,5

以下の掲載写真は、1024×683ピクセルおよび406×640でピクセル投稿しています。写真をクリックしますと別窓で拡大表示されます。 また動画も 1920×1080ピクセルのフルハイビジョンで投稿しています。設定の画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます。

ゲンジボタルと光害の写真
ゲンジボタルが飛ぶ小川を照らす車のライトと懐中電灯
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:山梨県)
ゲンジボタルの飛翔風景の写真
ゲンジボタルの飛翔風景
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:東京都)
ゲンジボタルの飛翔風景の写真
ゲンジボタルの飛翔風景
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:静岡県)
ゲンジボタルの飛翔風景の写真
ゲンジボタルの飛翔風景
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional(撮影地:東京都)
ホタルを滅ぼすホタル観賞 これが光害だ!!
 (動画の再生ボタンをクリックした後、設定の画質から1080p60 HDをお選び頂きフルスクリーンにしますと高画質でご覧いただけます)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ホタルの季節

2018-05-24 22:01:42 | ホタルに関する話題

ホタルの季節

 今年もホタルの季節がやって来た。とは言っても、私にとっては一年中がホタルの季節だが、やはり、成虫が乱舞する光景は、生態学的にも 大きなイベントであり、人々にとっても平安時代から安らぎを与えてきた文化でもる。
 ホタルは、里山環境の象徴だ。その美しい光は「豊かな自然環境があってこそ」ということをご理解頂き、どうぞ、ホタルの光だけではなく、自然背景と合わせてご覧頂きたい。

 今年は、今週末にYahooの取材、来週末は佐賀大学での講演会、その後は、ホタル大学での観察会や日本ホタルの会の観察会も予定。私的なホタル調査・観察もありますので、新聞・テレビ等の取材・出演の依頼は早めにご連絡頂きますようお願い申し上げます。

掲載写真は過去の撮影したものです。なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ホタルの写真

ゲンジボタル

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタルの発光飛翔風景

ヒメボタルの写真

ヒメボタルの発光飛翔風景

ゲンジボタルの写真

ゲンジボタル

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


ホタル大学一期生募集

2018-02-24 15:28:37 | ホタルに関する話題

ホタル大学一期生募集

~ホタル棲む自然環境の保全と再生を担うリーダー 養成講座~

 内閣府認証「NPOホタルの会」(理事長 友石安彦)では、里山の結晶と言われるホタルを通じて自然環境の保全・再生活動に専念して参りました。 本年、創立15周年を迎え、その集大成として「ホタル大学」を開講いたします。

 現在、日本には500以上の「ホタルの里」があり、ホタル観賞に訪れる人は年間200万人を超えると言われます。しかし「保存会」や「守る会」の方々の高齢化が進み、 自然環境の保全に必要な作業が困難な状況になり、「ホタルの里」が荒廃すると言う深刻な問題が浮上しております。
 そこで「NPOホタルの会」では、若き志ある方々に、ホタルの生態や生息環境をはじめ、生態系の保全と維持管理、そして再生の手法等、ノウハウをすべて提供する「ホタル大学」を開講いたします。 「ホタルを通じて、日本の大切な自然環境を守る」そのための、次代に向けたリーダーを育てるという強い想いを込めた講座です。今回、その第一期生を募集します。

ホタル大学

  • 主催:特定非営利活動法人 内閣府認証 府国生第244号 NPOホタルの会
  • 協力:日本ホタルの会
  • 後援:環境省関東地方環境事務所
  • 協賛:セブンイレブン記念財団
  • 講師:古河 義仁(東京ゲンジボタル研究所 代表/日本ホタルの会 理事/NPOホタルの会 専務理事)
    鈴木 浩文(日本ホタルの会 副会長)
    兵庫 淑子(青葉山ホタルの会 会長)他

<カリキュラム>

  • 4月28日(土)入学式 ホタル基礎知識 他
  • 5月19日(土)ホタルの生態 他
  • 6月16日(土)ホタルと環境(里山での実習)
  • 7月 7日(土)ホタル観察(生息地での実習)
  • 8月 4日(土)陸生ホタル観察(生息地での実習)
  • 9月 8日(土)ホタルの飼育方法、水質検査方法
  • 10月 6日(土)ホタルが棲める自然環境の保全・再生の方法
  • 11月10日(土)卒業式 総論・研究発表

(カリキュラムは、全8回になりますが、個別での受講も可能です。尚、講義内容は変更する場合もあります。)

<募集要項>

  • 参加資格:18~50歳位までの男女(定員30名)
  • 参 加 費:1回 500円
  • 会  場:お茶ノ水 エデュケーションセンター JRお茶ノ水駅から徒歩4分 東京都文京区湯島1-6-1 03-3811-1364
  • 時  間:10時~12時(生息地での実習は別)

お問い合わせ、申し込み

NPOホタルの会 03-5840-7831 mail@npohotaru.com

ホタルの写真

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) 2018 Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


日本ホタルの会シンポジウム 開催のお知らせ

2017-10-28 18:52:08 | ホタルに関する話題

第24回 日本ホタルの会シンポジウム —ホタルを通じて身近な自然環境を考えるー

テーマ:「日本ホタルの会発足25周年を迎えて」

講演:日本ホタルの会名誉会長 矢島 稔 ~『日本ホタルの会のあゆみ・25年』~

 今年度は日本ホタルの会が発足して25周年になります。日本ホタルの会の活動として、「ホタルを通して身近な自然環境を考える」というテーマを掲げて毎年シンポジウムを開催して来ました。その中で、ホタルは自然環境を象徴する生き物の一種であって、ホタルだけではなく身近で多種多様な生き物が生息できる環境の大切さを考えてきました。このような環境を、日本ホタルの会では「人里」と称してきましたが、現在では、生物多様性の認識も広まり、「里山」という言葉で広く理解されるようになりました。
 今回のシンポジウムでは、日本ホタルの会の発足にご尽力され、また日本の昆虫園の開設、動物園の運営、自然環境の保全・教育活動などに指導的な役割を果たしてこられた矢島 稔 名誉会長に、日本ホタルの会発足25周年に当たり、日本ホタルの会のこれまでのあゆみと、皇居でのホタル定着の取り組みについて、ご講演頂きます。

2017年11月26日(日) 13:30開場 14:00〜16:30

会場:工学院大学新宿校舎 高層棟6階 A-0611教室(東京都新宿区西新宿1丁目24−2)

主催:日本ホタルの会

入場無料 / 定員100名(ご自由にご参加いただけます。)

プログラム

13:30  開 場
14:00~14:05 開会の挨拶 / 日本ホタルの会会長 本多 和彦
14:05~14:15 日本ホタルの会について / 日本ホタルの会副会長 鈴木 浩文
14:15~15:15 基調講演 / 『日本ホタルの会のあゆみ・25年』 日本ホタルの会 名誉会長 矢島 稔
15:15~15:30 休 憩
15:30~16:20 質疑応答 / 司会:日本ホタルの会 理事 井上 務
16:20~16:30 閉会の挨拶 / 日本ホタルの会顧問・工学院大学准教授 釜谷 美則

矢島 稔 / 東京生まれ。東京学芸大学卒業。
1961年、東京都多摩動物公園に勤務し「昆虫園」を開設。
1980年、日本博物館協会、棚橋賞受賞。上野動物園水族館長を経て
1987年、多摩動物公園園長となり、翌年「昆虫生態園」をオープン。
1991年文部大臣表彰受賞。東京動物園協会理事長を経て、
1999年より群馬県立「ぐんま昆虫の森」園長。
2013年「公益社団法人日本動物学会」から「平成25年度日本動物学教育賞」受賞。
2017年「第68回(平成28年度)日本放送協会放送文化賞」
現在、「日本ホタルの会」名誉会長、「ぐんま昆虫の森」名誉園長

日本ホタルの会名誉会長の写真  日本ホタルの会名誉会長の写真  ホタルの本の写真

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


高知県でのホタル講演会

2017-10-20 18:40:11 | ホタルに関する話題

 ホタル講演会の講師として、高知県香南市まで行ってきた。
 講演会は15日(日)の午後であったため、前日の7:25羽田発JAL491便で高知へ向かった。約1時間のフライトで高知龍馬空港に到着。心配された天候も、晴れ間が見えてまずまず。予約していたレンタカーですぐさま四万十市の「四万十市トンボ自然公園」へと向かった。およそ130kmの道のり。そのほとんどが山の中。あとで聞いた話であるが、高知県の85%は山だそうだ。ホタルがたくさん生息しているだろう里山や河川が多く見られた。
 「四万十市トンボ自然公園」ではベニトンボコフキヒメイトトンボの観察と撮影をし、その日は、高知市内の日航ホテルで宿泊。翌日は、朝から室戸岬へと向う。目的はチョウであったが、悪天候のため岬のスカイラインを一周しただけで撤収。今回のメインであるホタル講演会の会場へと向かった。

 ホタル講演会では、「ホタルと環境」をテーマに、ホタルの生態と生息できる物理的環境、光害による減少等についてお話をさせていただき、その後、質疑応答に多くの時間を割いた。自然豊かな高知県ではあるが、それなりに問題は抱えており、かつてのような大乱舞が見られる所は少なくなってきているようだ。微力ではあるが、また多くの場所で乱舞する光景が戻るよう協力をしていきたい。また、ホタルが飛び交う時期に、一度は訪れてみたいと思う。
 帰路は、高知龍馬空港19:10発JAL498便で羽田へ向かい、無事、帰宅した。

 今回の遠征では、四万十市においてスクミリンゴガイ(通称:ジャンボタニシ)という貝の卵塊を多く目撃した。南米原産であるが、かつて食用に輸入されたものが今では野生化したと言われている。繁殖力が旺盛で、九州・四国地方を中心にイネに対する食害、特に直播イネへの初期生育期における食害が今日では深刻な問題となっているという。環境省の要注意外来生物リストにも掲載され、世界の侵略的外来種ワースト100、日本の侵略的外来種ワースト100にも選定されている貝である。
 ホタルの餌といえば「貝」が挙げられるが、このスクミリンゴガイの稚貝を食べるかどうかは分からない。

参考:高知県ホタルネットワーク
http://blog.goo.ne.jp/hotarunw
https://www.facebook.com/hotaru.network/posts/1533088520119005

ホタル講演会

ホタル講演会

スクミリンゴガイの卵塊の写真

スクミリンゴガイの卵塊(撮影地:高知県四万十市 2017.10.14)

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.


カワニナ

2016-10-25 20:30:37 | ホタルに関する話題

 カワニナ Semisulcospira libertina (Gould, 1859)は、カワニナ科(Family Pleuroceridae)カワニナ属(Genus Semisulcospira)に分類される巻貝である。ゲンジボタルの幼虫の餌となることで有名である。
 ゲンジボタルの幼虫は、自然界においては、これまでカワニナしか食べないということが定説であったが、富山県在住の中氏によって、自然界においてミミズを食べていることが観察され、その後、ミミズだけで人工飼育した結果、成虫にまでなっており、カワニナしか食べない、カワニナでしか成長しないということは間違いであったことが証明されている。経験からも、他にも様々なものを食べていると思われるが、それらは副食であり、やはりカワニナが多数生息する場所には、ゲンジボタルの発生数も多く、比例関係にあると言える。
 ゲンジボタルの復活を試みる地域は、全国的に多い。まず、生息条件となる物理的環境の整備が必要だが、要はカワニナの繁殖であろう。簡単な方法として、他地域から採取したカワニナを 大量に放流することが行われているが、カワニナは放流する場所と同じような環境で育ったものでなければ、なかなか定着はしない。半年間において親貝1個が生む平均稚貝産出数は一ヵ月あたりおよそ30個で、その稚貝は一年余りで第2世代の稚貝を産出するまでに成長するが、それまでに約90%は死んでしまう。
 「新日本製鐵株式会社 環境報告書 平成11年度」のP19によれば、大分製鉄所でスラグに含まれる酸化カルシウムとケイ酸がカワニナの生育に有効であることを利用して、カワニナの増殖に成功しており、それらの性質を利用してカワニナやそのエサのケイソウが増殖するコンクリート擁壁の特許も公開されている(特開平11-247207、特願平10-48001)が、カワニナ増殖のためには、餌や水質も大切な要素であるが、それ以上に生態系のバランスが重要だ。
 写真は、里山の水田脇を流れる小さな小川で繁殖しているカワニナである。カワニナは、底が礫の渓流にも生息しているが、里山では、こうした底質が泥の細流に生息し、条件が良ければ 大繁殖するのである。この場所はゲンジボタルの生息地でもあり、ゲンジボタルの生態系が整っているが、鑑賞者のマナーが悪く、光害のために発生数は少ない。

参照:カワニナの種類と生態について

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

カワニナ

カワニナ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/160秒 ISO 3200(2016.10.22)

カワニナ

カワニナ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1 / 絞り優先AE F5.6 1/125秒 ISO 1000(2016.10.22)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


日本ホタルの会 ホタル観察会

2016-06-27 23:23:36 | ホタルに関する話題

 日本ホタルの会 ホタル観察会が、さる6月26日に行われ、今回初となる「ホタルの写真撮影講習」も行った。オリエンテーションに始まり、夕食会、そしてゲンジボタルの観察と写真撮影。自生しているホタルも多く飛び、とても良い経験になったのではないだろうか。
 掲載の写真は、「写真撮影講習」の際に実際に撮ったものである。団体行動ゆえに、時間が限られていたので、一番乱舞する時間帯に引き上げなければならなかったのが少々残念であったが、参加された皆様は、これに懲りずに来年もまたご参加いただきたい。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ゲンジボタル

ゲンジボタル
Canon EOS 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 4秒×80 ISO 800(2016.6.26)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


NHK「視点・論点」~ホタルの舞いを求めて~

2016-06-10 20:21:10 | ホタルに関する話題

NHK「視点・論点」

各界の有識者や専門家が、世相や時代の潮流を読むオピニオン番組に出演しました。

~ホタルの舞いを求めて~

NHK G 13日(月)午前4時20分~午前4時30分
Eテレ 13日(月)午後1時50分~午後2時(再)

解説アーカイブス 「ホタルの舞いを求めて」(視点・論点

ゲンジボタルの乱舞

OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / Ektachrome 320T Professional


日本ホタルの会 ホタル観察会のご案内

2016-06-02 22:20:04 | ホタルに関する話題

 日本ホタルの会では、例年ホタルの季節に会員及び一般の方を対象とするホタル観察会を行っています。ホタルを初めてみる人やあまりなじみのない人に夜の水辺に光るホタルの美しさを感じていただくとともに、ホタルの棲む環境の大切さを考えていただこうとするものです。ホタルを観察するときのマナーや自然と付き合うためのルールなどを学んでいただきながら、ホタルの世界をご紹介いたします。

○ 実施日  2016年6月26日(日) 雨天決行(荒天は中止)
○ 場 所  あきる野市養沢 養沢センター
○ 募集人数 20名
○ 応募方法 メールにてお申し込みください(先着順)
  アドレス:mail@nihon-hotaru.com
○ 締め切り 2016年6月15日(定員になり次第締め切ります)
○ 参加費  1,200円(食事代・保険)
○ 集合及び解散

★自動車で参加の方:17時までに養沢センター集合
電車でお越しの方:16時30分武蔵五日市駅集合
(10名以上であれば養沢センターバス、それ以下の場合は乗用車にて送迎いたします)

★17時10分からオリエンテーション(約45分)
  ①養沢について
  ②ゲンジボタルについて
  ③観察のマナーと注意事項

★オリエンテーション後、夕食と自由時間

★19時20頃からホタル観察

★20時20分養沢センターにて解散(電車でお越しの方は、武蔵五日市駅までお送りします。)

特別企画

ホタル写真撮影講習会:ホタルをはじめとする生き物などを上手にカメラに収める手法をご説明します。 募集は若干名で、自由時間を活用して説明します。希望する方は、申込時にその旨メールにお書き下さい。

ゲンジボタルの写真

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


ほたると水辺の環境学習会

2015-11-15 19:54:18 | ホタルに関する話題

北九州市ほたる館~ほたると水辺の環境学習会~

 北九州市建設局河川部水環境課から依頼があり、北九州市ほたる館で定期的に行われている「ほたると水辺の環境学習会」の 講師として、11月14日に現地を訪れた。

 14日(土)羽田9:10発 スター・フライヤー75便で北九州空港へ向かう。天候は小雨。離陸後、高度10,000nまで上昇すると、 そこは雲の上で快適な空の旅。しかし、向かう先の天候も雨。着陸のために高度を下げ始める。窓から見える厚い雲に時速900kmで突入である。これでもかと機体が揺れ、 時折り急に落ちる。アナウンスで「機体の安全性には問題ございません。ご安心ください。」と流れるが、やはり恐怖を感じる。
 雲を抜けると安定し、無事に北九州空港へ着陸。そこからエアポート・バスで小倉駅へ。そこで昼食。ご当地のものを食べようと思ったが、どこも混雑。並んでも食べる気はないため、迷わず牛丼屋でさっと済ませた。
 13時半。小倉駅からタクシーに乗り、目的地である「北九州市ほたる館」へ。到着後は、ほたる館の館長、新海 正信 氏、北九州ほたるの会の会長、中村 光男 氏、北九州市建設局河川部水環境課ほたる係長の梅田 和宏 氏と歓談。15時から「ゲンジボタルの野外保全のための具体的ノウハウ」と題して講演と行った。
 1時間40分の講演は無事に終了し、ご参加いただいた方々には、喜んで頂けた様子でほっとする。その後は、小倉駅近くのホテルに移動し、宿泊。特に親睦会等の予定はなかったので、ホテルのレストランでフレンチのフルコースにワイン飲み放題をプラスして頂くことにした。庭の綺麗なイルミネーションを見ながら、一人寂しく、いや、紳士的に上品にフレンチを頂く。
 かなり飲んだが、まだ物足りず、コンビニでワインのボトルを買ってきて、部屋でテレビを見ながら飲み干すと、いつの間にか寝ていた。目覚めると午前2時半。その後は1時間毎に時計を見る始末。講演会の緊張感が抜けないのか、寝た気がしない。7時に起床し、レストランで朝食をとり、早めに空港に向かうことにした。
 北九州11:45発 スター・フライヤー80便で東京に戻る。帰りは天候も良く、少し揺れただけで羽田に到着。パーキングに止めてあった愛車で自宅へと向かい、無事に帰宅した。

 今回の講演会では、私も得るものがあった。「北九州市ほたる館」では、ゲンジボタルの飼育を行っているが、「夏に孵化して10月頃までに大きく育った幼虫は死亡率が非常に高い」というのである。次から次と死んでしまうので、なるべく大きく育たないように餌を控え、10月頃までに放流するといった現状。私の経験では、「大きく育った幼虫は死亡率が非常に高い」というのは初めて聞く話であり、経験もない。原因は不明で、今後、詳しく調べたいと思う。
 以下の写真は、「北九州市ほたる館」の様子を許可を得て携帯電話で撮影したのもである。詳しくは、ホームページをご覧いただきたい。尚、今回の講演会では、市から業務委託された株式会社コムディア 田中 いずみ 氏にお世話いただいた。

北九州市ほたる館

ホタルの幼虫の飼育装置

ホタルの幼虫の上陸用装置

ホタルの生態水槽

北九州市ほたる館の展示

スター・フライヤー80便から見た富士山

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------


日本ホタルの会シンポジウム 開催のお知らせ

2015-10-11 21:58:41 | ホタルに関する話題

日本ホタルの会シンポジウム 開催のお知らせ

第22回 日本ホタルの会シンポジウム -ホタルを通じて身近な自然環境を考える-

 「ホタルはどこで入手できますか?」という問い合わせがよく届きます。最近ではインターネットを通して容易にホタルを購入することができますので、 飼育方法や再生する野外の環境特性の理解が不十分なままにホタルの再生活動を始めてしまうと、飼育もうまくいかず、環境も整っていないのに、安易に購入したホタルを放し続けている という事態になりかねません。
 一方では、最近の生物多様性・地域固有性の認識の高まりから、購入したホタルの放流についての懸念が指摘されています。 しかし、あまりにも厳密なことを言い過ぎると、ホタルがいなくなってしまったところでは、何の活動もできないことになってしまいます。

 そこで、22回を迎える今回の「日本ホタルの会シンポジウム」では、ホタルの入手先を探しているような場面を想定して、 室内飼育から野外での再生までの具体的なノウハウを解説します。
 そして、その後の討論では、飼育技術の質疑を交えながら、環境のもつ生態的な許容量や、ホタルだけではなくホタルも棲めるような 環境づくりを考え、日本国内のホタルを守ろうと活動する多くの団体が抱える事情に合わせたホタルとの関わり方を検討していきたいと思います。

共催:日本ホタルの会・東京ホタル会議

日時:2015年11月28日(土)13:30~16:30

場所:工学院大学 新宿校舎 中層棟5階 B-0563教室
東京都新宿区西新宿1-24-2

シンポジウムのテーマ:ホタルの室内飼育から野外再生まで

定員:100名,事前申し込み不要

参加費:無料

13:00 開場
13:30 開会の挨拶
日本ホタルの会会長 本多和彦
東京ホタル会議顧問 柴 俊男
13:40 シンポジウムの趣旨説明
日本ホタルの会副会長・東京ホタル会議議長 鈴木浩文
13:50 基調講演
『ゲンジボタルの室内養殖と野外再生の具体的ノウハウ』
日本ホタルの会理事 古河義仁
14:50 休憩
15:00 討論・質疑応答
パネリスト
日本ホタルの会理事 古河義仁
多摩動物公園 教育普及課昆虫飼育展示係 杉田 務
東京ホタル会議副議長・日本ホタルの会理事 井上 務
司会
日本ホタルの会副会長・東京ホタル会議議長 鈴木浩文
16:30 閉会の挨拶
日本ホタルの会顧問・工学院大学准教授 釜谷美則

 このシンポジウムは、ホタルに関心のある方は勿論、自然環境に興味のある方、マスコミの方々等、どなたでもご自由に参加できます。
 どうぞ、お気軽にお立ち寄り下さい。

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------