幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 27度の空

2008-05-28 00:59:15 | Weblog


 火曜日
 
 火曜日
 
 火曜日
 
 熱かった火のように
 
 まるで熱にうなされているみたいに
 
 今日も終わった
 
 明日は水曜日
 
 きっと水のように涼しいのだろう
 
 ひょっとしたら
 
 27度の空に雪が降るかもしれない 
 
 

 24金を秤に掛けて売る
 
 すぐ横を車が通り過ぎる
 
 轢かれたらどうするんだろう
 
 死んだら換金した金を使えない
 
 永遠に
 
 朽ちることのない24金 

 なんのために金を売るのだろう
 
 
 
 見えない車輪が軋む音が聞こえる
 
 ピアノの雑音のような悲鳴
 
 耳障りな時計の秒針の繰り返し
 
 突然、記憶が消え
 
 想い出も消える
 
 遺した恥さらしの絵が
 
 炎に焼かれる
 
 自分の骨より、それを拾ってくれよ
 
 ヴァギナやペニスの絵
 
 生前そればかり描いていたサイコだったと
 
 思い出してくれよ
 
 
 
 たぶん子供の頃に思ったのだ
 
 性を自由にしなければ
 
 人間は真に幸福にはなれないのだと
 
 だから自分のペニスが愛おしかったし
 
 どうして芸術家はそれを描かないのだろうと思った
 
 ミケランジェロもダビンチも描いていることを知って
 
 幼い6つか7つのぼくもそれを描いてみた
 
 そして引出しに大事にしまった
 
 
 
 自画像はキリストになったり
 
 インディアンになったりした
 
 インディアンが好きだった
 
 裸で頭に羽根飾りを付け
 
 馬に乗って戦うインディアン
 
 ぼくも大きくなったらインディアンになろうと思った
 
 そしてなった
 
 
 
 インディアンは西洋近代文明を知らない
 
 だからぼくもバカにされた
 
 デパートの外商の課長や
 
 商社のお偉いさんたちから
 
 インディアン、インディアンと揶揄され、からかわれた
 
 ぼくはおべっかなど絶対口にしなかったから
 
 
 
 孤独は強いと言われたことがある
 
 三日も徹夜して働いたとき
 
 一番恐い親方がぼくのことをそう言った
 
 汗で濡れたTシャツの着替えを貸してやると言われて
 
 いらないと断ったとき
 
 
 
 よく深夜に牛丼を食べに行ったな
 
 チェーン店の牛丼屋じゃないよ
 
 貸しビルの2Fにあった飲み屋のような定食屋
 
 けっこう、いろいろ注文して腹いっぱい食べた
  
 酒はビールも飲まなかったけど
 
 店のマスターはニコニコしていた
 
 
 
 帰ってきて、しばらく目を覚ましていて
 
 それから死んだように寝た
 
 三日貫徹明けのアパートの部屋
 
 
 
 いつそこから抜け出せるだろうかと思っていた
 
 まるで囚人のようだと自分の境遇を呪った
 
 それでも、ぼくは、一人の人を想っていた
 
 もうとっくに壊れていたのに
 
 もう電話もできないのに
 
 既に他に男がいるのを知っていたのに
 
 女々しく年上の髪の長い女のことを想っていた
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 古里は火星

2008-05-26 23:49:45 | Weblog


 ねえ、もう、臨界点に達して、後戻りできないそうだよ
 
 カエルは茹ってもうすぐ死ぬだろう
 
 まだ気付かない人もいるらしいが
 
 ぼくはこんなにも具合が悪い
 
 それなのに、フォトンの影響だろうか
 
 太陽光線がやたら明るく感じるのはなぜだろうか
 
 
 きみといつか焼き鳥屋でも飲みにいきたいな
 
 そこで故郷の星の話をしようよ
 
 もうわれわれは忘れ去られていて
 
 誰も迎えに来ないかもしれないけど
 
 遠い昔、ぼくは火星にいたような気がするし
 
 たぶんきみもそうにちがいないと思う

 
 この世の母も父も
 
 自分の故郷の本当の母とも父と違うような気がしていた
 
 幼い頃 そんなことを思った
 

 いつか、迎えにくるような気がした
 
 それを待っていたんだけど
 
 なんか忘れられているみたいだ
 
 でもきみと出合えるから嬉しい
 
 きっとこんなぼくの気持をわかってくれるような気がして
 
 
 郷愁は癒されない永遠の片思い
 
 
  

 亀と月

2008-05-22 00:35:06 | Weblog


 エメラルドの海を泳いでいる亀がいた
 
 ときどき海面に頭を出して広い海原を見つめる
 
 まだ陸も島も見えないから
 
 また黒い水中に潜る
 
 そのうちに雲が赤く染まって
 
 点々と綿のように空を流れているのが見える
 
 亀は空に島ができたのだと思って
 
 首を伸ばして天に昇ろうとする
 
 でもどんなにもがいても体は海水に浸っている
 
 だから、こうすることにした
 
 しばらく夕日に輝く天空の雲を見つめてから
 
 亀はぎゅっと口を閉じて首をできるだけ伸ばし
 
 あの赤く輝く雲の中に入ってしまいたいと思いながら
 
 逆に水中に潜った
 
 どんどんどんどん潜った
 
 真っ暗で光も届かない深い深い海底目指して潜った
 
 そしてとうとう限界に達して
 
 亀は肺に残っていた最後のひと息を吐いた
 
 亀の口から真珠のような泡が一粒、二粒、三粒
 
 海面に向けてゆらゆらと上がっていく
 
 上に上がるにつれて泡は大きく膨らみ
  
 海面に達すると爆発して大きな水しぶきを上げた
 
 哀れ、亀は窒息して海底にひらひら沈んでいった
 
 破裂した泡は誰にも聞かれない音を立てて弾けたが
 
 それが亀の命の最後の息だった
 
 夜空には銀色の泡のような満月が浮かんでいた
 
 

 

 青い鳥

2008-05-08 01:04:22 | Weblog


 ぼくの青い鳥
 
 飛んで行った
 
 明け方のまだ暗い森の中
 
 修道士のチャントも響かない静寂
 
 羽音だけを残して
 
 潔く
 
 後ろも振り向かず
 
 ぼくの手の中から飛んで行った
 
 あんなにきれいに鳴いてくれたのに
 
 ぼくはそれを聞いていたのに
 
 きみが歌う歌
 
 得意そうに歌う歌
 
 ぼくは聞いていたのに
 
 きみは
 
 潔く
 
 後ろも振り返らず
 
 飛んで行った
 
 
 
 人類の叡智とやらで
 
 宇宙に浮かんでいるステーションがあるらしい
 
 そこから発信される電波に乗って
 
 地球にメッセージが届くらしい
 
 宇宙飛行士からのメール
 
 家族や恋人に宛てたメール
 
 でも
 
 小鳥はメールを送信してこない
 
 もう歌声も聞こえない
 
 
 
 でもまだ時間はある
 
 夏がくる前に
 
 青い鳥は
 
 きっと水浴びをしにくる
 
 そのときぼくは
 
 水辺でそっと聞き耳を立てる
 
 もう一度だけでも
 
 得意そうに
 
 あの歌を歌ってくれることを願って
 
 きみが大空に羽ばたいて
 
 行ってしまう前に
 
 一度だけでいい
 
 たった一度だけでいい
 
 ぼくにその歌を聞かせてくれないか
 
 ぼくの肩にとまってくれないか
 
 ぼくの唇をつついてくれないか
 
 そうしたら
 
 きみのことをいつまでも愛おしく想うよ
 
 どこか見えないところへ行ってしまったとしても
 
 きみのことをずっと想ってるよ
 
 
 

  

 詩人の詩

2008-05-03 18:44:51 | Weblog


 詩人が詩を書くという詩をぼくは書いた
 
 でも詩人の書く詩はうそっぱちだから
 
 ぼくは詩人にはならない
 
 詩も書かない
 
 でも
 
 詩人が詩を書かなくなったとき
 
 詩は死ぬから
 
 うそっぱちでもいい
 
 詩人は詩を書け
 
 ぼくはそれを読み
 
 涙を流す
 
 そして書く
 
 詩人の書く詩は
 
 うそっぱちだと
 
 
 
 

 要するに単純

2008-05-03 02:01:33 | Weblog


 忘れちゃった
 
 言うこと
 
 でもすること単純だから
 
 男って
 
 ぼくはとくに直情型だから
 
 言葉にするほど複雑じゃなくて
 
 それなのに
 
 脳内マスターベーションには
 
 レトリック使ったりして
 
 わりと凝ったりして
 
 そうでもしないと時間が
 
 残りの人生終わってしまうから
 
 くだらないことで
 
 そうでもしなければ
 
 あまりにも心臓の鼓動
 
 早すぎるから
 
 ごめんね
 
 いろんな選択肢あるだろうけど
 
 ぼくはそんなに器用じゃなくて
 
 あれこれ選んだりできないから
 
 単純かもしれないけど
 
 要するに単細胞ということで
 
 許してください