ぼくの青い鳥
飛んで行った
明け方のまだ暗い森の中
修道士のチャントも響かない静寂
羽音だけを残して
潔く
後ろも振り向かず
ぼくの手の中から飛んで行った
あんなにきれいに鳴いてくれたのに
ぼくはそれを聞いていたのに
きみが歌う歌
得意そうに歌う歌
ぼくは聞いていたのに
きみは
潔く
後ろも振り返らず
飛んで行った
人類の叡智とやらで
宇宙に浮かんでいるステーションがあるらしい
そこから発信される電波に乗って
地球にメッセージが届くらしい
宇宙飛行士からのメール
家族や恋人に宛てたメール
でも
小鳥はメールを送信してこない
もう歌声も聞こえない
でもまだ時間はある
夏がくる前に
青い鳥は
きっと水浴びをしにくる
そのときぼくは
水辺でそっと聞き耳を立てる
もう一度だけでも
得意そうに
あの歌を歌ってくれることを願って
きみが大空に羽ばたいて
行ってしまう前に
一度だけでいい
たった一度だけでいい
ぼくにその歌を聞かせてくれないか
ぼくの肩にとまってくれないか
ぼくの唇をつついてくれないか
そうしたら
きみのことをいつまでも愛おしく想うよ
どこか見えないところへ行ってしまったとしても
きみのことをずっと想ってるよ