幻の詩集 『あまたのおろち』 by 紫源二

幻の現在詩人 紫源二 の リアルタイム・ネット・ポエトリー

 誰もいない風呂屋

2012-10-23 03:30:32 | Weblog

 
 
  バルコニーから外に出て、裏通りを挟んだ向かいのマンションを見ていると、
 
  同じ視線の高さの階に、ベランダに出て涼んでいる女がいるのが見える。
 
  相手はこっちに気付いているのかいないのか、気持ち良さそうに髪をなびかせている。
 
  ややこしいことになるのはかったるいが、人生は数学のようには割り切れない。
 
  満天の星空には、無数の星が、数学的規則性にしたがって回転しているのだろうが、
 
  さしずめ、今の僕には、何万光年彼方の星の運行について、考えている暇はない。
 
  本能の命じるまま指笛を吹いてみた。
 
  彼女はそれに気付いた。
 
  反射神経が命じるまま手を大きく左右に3,4回振ってみた。
 
  じっとこっちを見ている。
 
  彼女は僕のアクションに応えもしないが、部屋に戻ろうともしない。
 
  下の通りを走る車の騒音が突然大きくなる。
 
  クラクションを鳴らして誰かが通り過ぎた後の静けさ。
 
  こっちへ来ないかと、身振りでさそってみた。
 
  彼女はそれを無視するようにして、あたかも何も見なかったかのように後ろを向いて
 
  部屋の中に入ってしまった。
 
  近くに銭湯がある。
 
  その煙突が見える。
 
  灰色の煙が上がり始めた。
 
  久しぶりに、銭湯でも行ってみようかと思った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 

 藝術

2012-10-22 02:36:04 | Weblog

 
 
  藝術を売って歩く
 
  誰も買ってくれない藝術を
 
  トラックの荷台に乗せて
 
  助手席にはお腹が大きくなった女
 
  ぼくの子を腹んでいる
 
  なぜなら二人は愛し合ったから
 
  そしてぼくは愛し合う裸の男女を描く
 
  たくさん描く
 
  そして、誰もそれを買わない、称賛もしない
 
  そして、やがて新しい命が生まれる
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 えんきょうてい

2012-10-22 02:31:20 | Weblog

 
 
  ペリドットの黄緑、トルマリンのピンク、アクアマリンの水色
 
  えんきょうていの汚れた壁紙から悪霊が出てきた
 
  怖くて狂っちゃうよ
 
  ううん、ちがう
 
  もうキチガイだから狂いやしない
  ありきたりの、そこら辺にいる、パンピーと同じように、わたし正常
 
  真っ白に輝く幽霊
  まるでそれが、幽霊みたいな
 
  夜中じゅう
  ちょっとチューニングが合っただけ
 
  半月を見上げても、ボヤけて見えないから、もう死のう
 
  ブラーマの降臨したパキスタンの山で凍えじのう!
  ハハハハ!
 
  キャベツ、白菜、バナナ
  食中毒
  栄養なんて僕には必要ない
  牛をして食らうなら
  殺人だってわけなく同罪
  クイーンエリザベスをして食らうか?
  牛丼にして
  280円
 
  夜は、闇の中に、
  あらゆる色を隠している
  僕の意識と同じように
  とてもビューティフル
  死ななきゃ良かったのにね
  天才だって神が言ってたのにね
  でも、僕は、神とは正反対の所に行くから
  もう永遠に会えない
 
  森の奥の
  森の奥の
  森の奥
 
  そこに
  藝術があって
  沈黙している
  星空と同じように
 
  この世が終わったあとの
  星空と同じように
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 言葉はごまかせても行動はごまかせない

2012-10-22 02:26:11 | Weblog

 
 
  スマホであれやこれや見てるのって、ただの逃避でしかない。
  一番大切なことを忘れるための。
  なぜなら、一番大切なことは、もう、どうしようもないから。
  自分では、もう、何もできず、
  ただ、嘘っぱちのいいが掛かりで、非難されるだけだから。
  言葉はいくらでもきれいごとが並べられる。
  でも、行動はごまかせない。
  そして、行動を見ているのは、神しかいない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 柵にひっかかっているシリウス

2012-10-08 01:56:44 | Weblog

 
 
  柵にひっかかっているシリウス
 
  ほんとうに真っ暗で
 
  希望なんかないみたいに
 
  でも、あの
 
  目と目を見つめ合った女の子
 
  僕がきみに興味があること
 
  知ってるかな?
 
  ひっかかっているシリウス
 
  僕が掴みとって
 
  逃がしてやる
 
  いつか寝た
 
  娼婦のように
 
  床に寝かせて
 
  知ってる? 知ってるの?って
 
  誰にも話したことのない秘密
 
  言い当てて
 
  驚かせてあげるよ
 
  柵にひっかかっているシリウスにも
 
  判るように